増える「精神障害者」の求職申込み。事業への活かし方。

前回の記事でも触れた「法定雇用率の上昇」だけでなく、ここ数年障害者採用の現場で変わってきていることがあります。新規の採用募集をかけると、「精神障害者保健福祉手帳」を持った方の応募が多くなっているという実態です。
ただ会社によっては周りを見渡すと、身体障害者手帳・療育手帳(愛の手帳)を持った人ばかり。「うちの会社では、精神の方は採ってないんです」なんて話も耳にしたことがありますが…(実績がないという意図の発言とおもいますが)。長く障害者雇用に携わっていても、多くなってきた”精神障害者保健福祉手帳を持った方”の採用・雇用について、しっくり来ていない人事担当者も多いようです。
本日はこの”増える「精神障害者」の求職申込みを採用・事業にどう活かすか”について、 Kaien ブリッジコンサルタント(”就労希望者と採用したい企業の懸け橋になる ”という職種)の角田が背景も含めて解説します。
出遅れた精神障害者の「障害者雇用カウント」
障害者雇用には法定雇用率のルールがあり、民間企業については現在従業員の2.3%は障害者を雇用しましょうと言われています(雇用率については前回の記事でも触れています→https://jinjibu.jp/spcl/sp0009260/cl/detl/4301/)。
一方で、そもそも日本で「精神障害者保健福祉手帳」をもつ精神障害者・発達障害者が障害者雇用義務の雇用数にカウント出来るようになったのは、ごく最近の話です。最初に障害者雇用の対象となったのは身体障害者で、戦争での負傷者や傷痍軍人の就職を進めるための目的があったと言われることもあります。1998年に障害者雇用義務の対象に知的障害が加わり、そうして発達障害(神経発達症とも言われる)を含む精神障害者が対象となったのは2018年から。本当に最近ですね。
さて、精神障害の話だったのに、急に文中に発達障害が登場したことに関して違和感はありましたか?
そもそも「精神の方」と表現された、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方とは。
障害種別が同じだからと言って同じ配慮を設ければよい というわけではないですが(皆さん配慮が欲しいことは個人差があるので)、採用準備をしていく上で手帳の種別は理解しておいた方が良いでしょう。
精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方は一般的に、「精神障害」「発達障害」のふたつの障害種別の方がいらっしゃいます。「精神障害」は気分障害や統合失調症など、「発達障害」というと自閉症スペクトラム症(ASD)やADHD、限局性学習症(SLD)などを指します。個人に対して統計的なラベリングはしませんが、採用ターゲットを決めるときには「精神障害」「発達障害」の傾向・特徴、診断機会などを知っていると、採用活動だけではなくご入社後も活躍いただける環境を築きやすいでしょう。
ただ、障害種別から踏み込み診断名となると、さらに種別が増えるために理解しきっている採用担当の方は全国を見渡しても本当にひとつまみというのが私の肌感覚です。険しい道かもしれませんが、採用で成功している会社は「最低限の知識は…」と謙遜しながらも、何かをきっかけに障害福祉の勉強に励まれている企業・担当者の方が多いです。
学んでいくと(当然個人差はありますが)、精神障害の方であれば一般枠での就労経験を活かすことができたり、発達障害の方であればITや専門スキルを持っている方がいらっしゃったり、勤怠も安定しやすいので責任ある仕事を任せていくことが出来たりすることもイメージ出来てきます。
結果的に障害福祉について学ぶことは、我々Kaienが掲げている”本業に貢献する障害者雇用を実現する”というのを、我々ではなく読者の皆さん主役になってが実現できるということだろうと思います。
もう少し踏み込んで、どんな経緯で精神障害者保健福祉手帳の取得に至るのか述べてみます。

手帳の取得に至るまでのよくあるパターンの理解と、採用・人事への活かし方
手帳の取得に当たっては、人それぞれの取得のタイミングときっかけがあります。タイミングでわけてみると
①発達障害や精神疾患の診断を受けたとき
②就労に当たって配慮を受けながら働きたいと考えたとき
の2パターンが多いと感じています。
①については、発達障害や精神疾患の診断を受けたからと言って必ずしも取得しなければいけないわけではなく、公的な支援を受けるためや、病院・学校でご自身の生活状況等を説明する際に便利だと感じられた方が取得されています。尚、精神疾患は先天性のものではないので、幼少期から取得されている方は発達障害で取得に至っていることが多いように思います。ちなみに、知的発達遅滞が医学的に認められたり、一部自治体によっては発達障害の診断があったりした場合は療育手帳(愛の手帳)の取得に至られることもあります。
一方②においては、障害者雇用枠で働くためには手帳の保有が条件になることから、これまで診断のみで手帳を取得していなかった方も就職転職で取られるというケースです。ここには、もともと発達障害の診断があった方や、一般雇用等で就労されている際に(大人になってから)診断を受けられた方、生活環境や就業環境による生きづらさなどから精神疾患の診断を受けられた方などがいらっしゃいます。
それぞれの方の診断や手帳取得のバックグラウンドと、現在の勤務状況や学校・就労移行支援等での職業準備状況を確認することで、ご自身の受容(障害受容とも言われますが、”自分が自分らしくあるためにはどういう環境が良いのか”という”自己理解”と私は考えています)がどの程度進んでいるのか、ご自身が前向きに仕事に取り組めるための「環境」「求める配慮」の具体的な労使双方のイメージが持てるのではないかと思います。
こういった求職者のバックグラウンドの理解で、気持ちよく働ける環境を企業側も整えることが出来るのか(合理的配慮)を入社時から双方が理解しあえると、安心かつ事業の戦力となっていただける障害者採用に一歩近づきます。
前例がないことは難しい。でも、身体と知的の方にこだわるほうがもっと難しい。
これは先日お話した、民間企業の人事担当者が仰っていたコメントです。これまで支援学校から人を採用するのがメインになっていて、従業員数増加と事業内容の変化に合わせて追加募集をしたい、でも企業の求めるスキル感の方がいらっしゃらないとのこと。
それもそのはずです。法定雇用率は上がっていますが、労働生産年齢にあたる身体障害者の人数はここ数年減ってきていますので、企業の採用力が問われるようになっています。職場環境はどうか、給与福利厚生はどうか、事業内容・ネームバリューはあるか、キャリアの成長の見通しは持てるのか。もちろん、身体障害者の採用だけでなく、障害者雇用そのものが、一般雇用と同様に採用活動が難しくなってきているのです。
その中で精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方からの応募はあったり、まだ応募がなくとも採用市場にはたくさんいらっしゃるという事実があります。こうやって1つずつ学んでいくと、みなさんのお勤め先の障害者雇用も、より事業に生きる形で成功していくことでしょう。
こちらの企業では、現状の採用マーケットの理解や障害福祉への知識を増やして、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方へも対応できるようなダイバーシティーな職場環境整備に取り組まれています。前例はなかったものの、障害者雇用の配慮事例をきっかけに、全社員の働きやすさ向上も実感できているようです(フリーアドレスと囲いのある集中スペースの整備、休憩室の利用促進、フレックスタイム制の全社的な導入、一部総合職からジョブ型雇用への切り替えスタートなど)
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増える「精神障害者」の求職申込み。事業への活かし方。
➡まず知ってみる。そこからは企業ごとに求人の出し方や、社内体制・風土、面接などについて何が必要か整理する。そうすると、障害者雇用の仕組みをきちんと事業にプラスの方向で活用できるようになる。
我々も企業向けに無料のセミナーを開催して情報提供に努めたり、個別でのご相談・コンサルティングも受けさせていただいたりしています。
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角田 直樹(カクタ ナオキ) 株式会社Kaien ブリッジコンサルタント

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