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プロフェッショナルコラム

どうしたら組織と人をイノベーティブに変えられるか

どうしたら組織と人をイノベーティブに変えられるか

ジェイフィール コンサルタント

高橋 克徳

 

1.なぜ、再びイノベーションなのか?

今、イノベーションという言葉が再び注目されています。

オープン・イノベーション、ビジネスモデル・イノベーション、ユーザー・イノベーション、デザイン・イノベーション、ソーシャル・イノベーション、リバース・イノベーション・・・。

多くの概念が登場し、イノベーションというものがさまざまな角度から議論されてきています。なぜ、ここまで急激に注目されてきたのか。大きく3つの理由があります。

第一の理由は、グローバル市場での競争原理の変化です。このままコスト競争を続けていても、誰も生き残れないというところまで来てしまったということです。コストをめぐる激しい消耗戦は、社員の給与や雇用に影響を与え、社員の活力を奪っていく。徹底したコストダウンを追及しても、アジア諸外国には勝てない。しかも気づくと、すでに一定以上の品質レベルはある。特殊性の高い分野でなければ、品質の違いが差別化にはならない。今のままの延長線上では、消耗戦から抜け出せない。こうした危機感です。

第二の理由は、 成熟社会の中での企業のあり方が問われているということです。確かに海外にはまだまだ成長する市場もある。でも、物質社会が単に拡大することは、地球環境の破壊を加速させることにもなりかねない。同時に、今の先進国も今までと同じ生活を続けることが、果たして許されてよいのか。付加価値をつけ、ただバリエーションを増やすだけの拡大では、無駄になるもの、受け入れられないものを増やしてしまいます。本当に必要なものをつくる、世の中の多くの人の問題を解決していくものをつくることが、求められる時代になってきたということです。

第三の理由は、そうした本質的な価値あるものをつくろうとしたときに、その方法の革新が起きてきたということです。世界中の人たちがインターネットを介してつながれる時代。夢や思いのある人たちが自分の思いを発信することもできる。普通では出会えない人と出会い、ともに新たな価値を生み出すこともできる。大企業という枠組みがなくとも、自分で部品を調達し、海外に生産を委託し、ネットを介して世界に販売できる。本当にアイデアのある人、社会的なニーズをつかむことができる人が、世界を相手に大きな取り組みを仕掛けていける。

時代はすでに大きく変化しています。後進国や新興国は人口も拡大し、急激に豊かな社会づくりに向かおうとしています。でも、先進国の富裕層向けに開発してきたものを単にスペックダウン、コストダウンすれば売れるという考え方では、市場から受け入れられないばかりか、彼らの本質的なニーズを見誤ってしまう。先進国の富裕層も、豊かさの意味を考え始めている。そんな時代の中で何を生み出していけばよいのか。

世の中にはすでに多くの商品がある。世の中にないものを生み出すというだけでなく、今あるものも原点価値に立ち戻り、問い直す。生み出すべきものを再発明し、既存の枠組みを超えた新たな生み出し方をつくりだす。これが今起きている変化なのです。

 

2.なぜ、この変化についていけなくなったのか

ところが多くの企業、特に大企業では、こうした変化についていけない、イノベーティブな動きが生み出せなくなっています。

大きな理由は、クリステンセンのいう「イノベーションのジレンマ」に陥ってしまったということです。売上規模の大きな既存商品にとらわれ、目の前の顧客への品質、サービスを追求するあまりに、コストや効率を優先し、コンプライアンスを強化し、リスクを軽減することばかりを考える。新しいことをやろうとしても、それがどれだけの市場性があるか、投資に見合うのか、検討に時間がかかり、なかなか許可が出ない。まずやってみる、市場に問うということができない。まだ世の中に受け入れられるかわからないものをゼロから生み出すよりも、100億、1000億のビジネスを守る、拡大することを優先する。気づくと、小さな革新を生み出すことができない企業になり、破壊的なイノベーションが起きた時に対処することができない企業になっている。

だったら、大企業は自ら生み出すことよりも、資本力のない小さな企業が生み出した革新を取り込めばよい。そういう論理も成り立ちます。ところが、こうした小さな輝く企業は、もう世界を相手に、自分たちの思いを形にすることができるようになってきた。企画・デザインができれば、アジア諸外国の工場に委託すれば、小ロットでもスピーディに製造してくれる。インターネットを通じて、本当のその魅力を感じてくれる人に販売できる。いきなり大規模な投資を募らなくても、ニーズが集まった段階で必要な量だけ生産することができる。大企業の助けは必要ない。むしろ、小回りが利き、スピーディに動ける企業の優位性が新たな市場を創造しています。

そんな中で、大企業はどうなっていくのか。いい知恵を取り込むこともできず、社員は新たなものを生み出す経験のない人ばかりが増えていく。気づくと、思いや知恵のある人たちが外に出て、自分の思いを実現する小さな企業を立ち上げていく。彼らの方がよほど魅力的な商品を生み出していく。

特に家電業界で起きている変化は、こうした変化です。家電メーカーを飛び出した人たちが集まり、個性的で世の中のニーズを新たに生み出す、より本質的な価値に絞り込んだ商品を次々に生み出していく企業が生まれているのです。

そうした先輩たちを見ながら、自分たちにはできない、スピードも自由度もないと不満ばかりを強め、自らはどうしていいのかわからない若手社員。これでは、組織全体の停滞感は広がるばかりです。

 

3.組織と人をイノベーティブに変えるキードライバーとは

どうしたら組織と人をイノベーティブに変えることができるのか。その変革の鍵は何か。

まずは不機嫌な職場から脱すること、これは必須です。お互いにやっていることが見えない、自分ばかりが仕事を抱えている、誰も助けてくれない。こんな状況の中で知恵を出せ、新しいことをやろうといっても誰もついてこない。

そのためには、互いの取り組み、苦労、感情を共有し、その中でお互いのがんばりと良さを認め合い、必要なときに協力しあえる関係をつくる。マイナス状態を少なくともゼロに戻す取り組みが必要です。

ただ、それだけでイノベーティブになれるわけではありません。ゼロをプラス方向に大きく踏み出していくための取り組みが必要になります。

そのカギになるものが3つあります。

一つ目は、顧客、社会、世界、未来への感度を高め、目線を組織全体で引き上げていくことです。多くの人たちが目の前の業務に埋没し、気づくと目の前の世界がすべてになっている。世の中で起きている変化を聞いても、自分の仕事にどう影響するか見えない、結び付けることができない。感度を高め、上を向き、さらに自分事に変えていく。そうした取り組みがなければ、「思い」が出てきません。

二つ目は、イノベーションに関する概念転換を図ることが必要です。世の中にないものを生み出せ、すごいものを作れといっても、それは特別な人たち、突出したクリエイティブな人たちの役割だと思ってしまう。自分たちにはできないと尻込みしてしまう。でも、今求められているイノベーションはもっと多様であり、身近なものです。

自分の中にある思いが起点のイノベーションではなくとも、誰かのために、社会のために真剣に向き合う中から生まれるイノベーションがもう一つの大きな潮流になってきている。ゴビンダラジャンの「リバース・イノベーション」の中で紹介されている、GEヘルスケアの携帯型超音波診断機器の開発のように、新興国のニーズ起点でものづくりをし、それを先進国に還流させることで、よりシンプルで利便性の高い新たな製品軸を生み出すことができる。

あるいは、既存の商品やサービスであっても、デザイン起点、ビジネスモデル視点で考え直していく、より本質的価値を掘り下げていくと、既存製品分野であってもダイソンの羽のない扇風機のように、まったく新たな概念の製品を生み出すことができる。

イノベーションという言葉のハードルを下げる、面白さと多様性を共有していく中で、目の前の仕事自体への向き合い方を大きく変えていく。そんな転換が必要です。

三つ目は、そうした機運と連鎖を生み出す仕掛けです。仕掛けというとすぐに、チャレンジ制度や事業開発の仕組みなどをイメージすると思います。でも、カチッとした仕組みを作ってそこに乗れというのが、本当に全体の機運を作り出すことになるのか考える必要があります。

内側にあるマインドに気づく、それを形に変える楽しさを実感する、お互いの取り組みが連鎖反応を起こす、最後はみんなが知恵をだし、ともに連携し、社会に貢献している喜びと誇りを共有できるようにする。そんな仕掛けが、特に日本人の心の奥底に閉じ込めてしまった、社会性、貢献意欲、思いやり、勤勉性、あきらめない粘り強さ、高い精神性を呼び覚ますことができるのではないか。わたしはそう思っています。

 

4.イノベーティブな組織づくりに向けて

 

こうした思いで動き出した企業が増えてきました。

特に研究開発部門から、改めて未来への思いを持てる集団に変えていこう。そのために、世界や未来への感度をあげ、ともに議論する場をつくる。そんな動きも出てきています。

フューチャーセンターという形で、外部の人たちも呼んで、新たな知恵の融合が起きる場をつくる、社会問題を持ち寄ってもらい社員と外部の人たちが一緒にその解決策を考えていく。そうした中で、知恵とつながりの連鎖をつくり出し、互いが培ってきた力を重ね合わせ、新たな展開を生み出そうとしている企業もあります。

研修の中でも未来志向、世界目線を持つというテーマも増えてきました。単に環境変化を予測するのではなく、可能性を探る。ポジティブ・アプローチで、良い面に焦点を当てながら、起こりうる未来を自分たちの可能性に引き寄せる。その中で、理想像をイメージし、究極の世界を描いてみる。そんなアプローチもあります。

こうした場や機会をつくり、視点を変えていくアプローチは重要です。

ただ、こうした場に若い人を巻き込んでも、現場に戻ればいつもと同じ業務に向き合い、効率とリスクをコントロールする仕事ばかりに閉じ込めてしまっては、何も変わりません。

大切なのは、現場、職場を変えること、マネジメントを変えることです。

自分たちの既存の仕事、既存のマネジメントを問い直してみる。本当に今のままが一番良いものを生み出すやり方なのか、他にやり方はないのか。改善ではなく、本質を探る。自分たちの日常のコミュニケーションの中で、イノベーティブな志向になるための対話のルール、メカニズムを自分たちでつくっていく。

さらに、オフィスの中に、ネット上に、知恵を持ち寄り、重ね合う場をつくる、自然な出会いと交流が生まれやすい仕掛けをつくる。創造性と思いを触発する日常の場づくりを行う。そんな日常の中で交わされる言葉を楽しく、愉快なものに変えていく仕掛け、プロセスをつくり出す中で、イノベーティブに考えていくことにわくわくする関係性をつくりだす。

最終的には足かせになっている人事制度や経営管理の仕組みを見直していくことも必要だとは思います。前向きな活動、チャレンジが当たり前になり、みんながそうした行動をとりたくなる、人をイキイキさせる仕組みに変えていくことが必要です。確かに強烈な仕組みがある場合は制度からの見直しも必要ですが、でも仕組みを変えれば行動が変わるわけでもない。日常のコミュニケーション、対話の基軸、場のあり方、現場での育成のあり方を変えていくことから始めていくことが必要だと思います。

 

各社のイノベーションへの取り組みについて、事前アンケートをとってみました。その結果は別途整理・ご報告したいと思いますが、明らかに新たな模索が始まっている。具体的な方法への知恵だしも始まったばかりです。

どうしたら組織と人をイノベーティブに変えられるか。ここまで述べてきたような視点で、何を具体的にしていったらよいか。ぜひ、一緒に考えてみてほしいと思います。


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コラム執筆者
高橋 克徳
高橋 克徳(タカハシ カツノリ)
株式会社ジェイフィール代表取締役  武蔵野大学経営学部 特任教授
ベストセラー「不機嫌な職場」の著者
リレーションシップを基軸にした新たなマネジメント論を提唱
「つながり力」の再生が、個を活かし、組織を強くする。
「組織感情」「リレーションシップ」など、組織力を高めるための方法論を数多く提案。
個々人が働く喜びを取り戻し、組織がイキイキと動き出す支援をしています。
得意分野 経営戦略・経営管理、モチベーション・組織活性化、リーダーシップ、マネジメント、チームビルディング
対応エリア 全国
所在地 渋谷区

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