日本的なキャリアマネジメントを考える(3)
(続き)
Well-beingという考えが人事の世界でも注目されています。「日本の人事部」のサイトでも、取り上げられ、「身体的、精神的、社会的に良好な状態にある」と定義づけられています。アメリカ心理学会発行の心理学辞典でもa state of happinessという言葉が使われています。ここでは、well-beingを、私たちにとってなじみのある「幸福」という言葉で考えてみましょう。
ダニエル・カーネマンは世界でただ一人、ノーベル賞を取った心理学者として有名ですが、彼が編纂した“Well-being The Foundations of Hedonic Psychology”には、様々な幸福についての研究が掲載されています。所得が高い人たちは低い人たちに比べて、幸福を感じる人は多いかとか、職場では、年齢とか、人種、パフォーマンスなどが幸福とどのように関係しているかなど、様々な研究がされています。共通していることは、「人間の主体的なあり方」に焦点を合わせた研究であることです。言葉を変えれば、「あなたが幸福なのか、何が原因なのか」ということが研究の関心事になっています。正しい英語表現ではないかもしれませんが、well-being for selfの研究だということです。
私は、あくまで個人的な意見ですが、日本人にとってはwell-being for othersのほうが、なじみやすいのではないかと考えています。すなわち、ほかのひとにとってよき存在であることを追求したほうが、自分自身も幸福になりやすいのではないでしょうか。ゲシュタルト療法を創始した心理学者のフレドリック・パールズは「わたしはあなたの期待に応えるために生きているのではない」という有名な言葉を残しています。しかし、それは西欧的な考え方であって、「わたしはあなたの期待に応えるために生きている」と、あえて考えたほうが、よい時があると思います。部下にとってよい上司であること、配偶者にとってよい夫であり、妻であること。子どもにとってよい親であること。そのようなあり方を求めて、キャリアを考えたほうが、結果的には,「身体的にも、精神的にも、社会的にも良好な状態」を実現できると、私は自分の人生を振り返って、実感しています。
自分自身のモチベーション低下に悩む上司がいたら、私は「部下のモチベーションをあげる工夫をしてください」、とアドバイスをしています。私はたくさんのエグゼクティブのコーチングをしてきましたが、モチベーションの高い部下に囲まれたエグゼクティブが、自分のモチベーションの低下に悩んでいる事例に出会ったことがありません。その反対の事例は山のようにあります。
(続く)
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日本のエグゼクティブ・コーチング創生期から活躍し続ける、人材育成のスペシャリスト
現在も月10名程度のエグゼクティブ・コーチングを継続中。
メンタルコーチとしては、オリンピック選手のメダル獲得にも貢献。
心理学をベースとした人材育成のアドバイスや心理アセスメント作成でも好評を博している。
松下 信武(マツシタ ノブタケ) わたし・みらい・創造センター(企業教育総合研究所) 上席研究員 / ゾム 代表
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