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プロフェッショナルコラム

人を変えるために理解すべき「人の根源的仕組み」③

前回のコラムでは、人間が変われない(変わりづらい)原因として、脳の3層構造の説明をした。人は、原始的な脳(第1階層・第2階層)の力に引っ張られて、本来の人間的脳(未来志向・目的思考等)が上手く使えておらず、変化しようという気持ちが押さえられてしまう、ということを説明した。

今回は、それらの理解をもとに、企業の人材開発として実施すべき、一つの変革手法を説明していく。

まずここで考えるべきは、人間的な脳を使うために、どのように原始的な脳(第1階層・第2階層)の力を押さえるか、ということが必要である。

いくつかポイントがあるが、ここでは2つ紹介する。

1つ目は、「肯定的感情を持つこと」
人は、恐怖や否定の感情を持つと自身を守るための原始的脳は活発に働く。そのため、出来事に対しての肯定的意識をすることで、人間脳が使われやすくなる。

2つ目は、「自己肯定感(自らの価値を積極的に評価できる感情)を高める」
自己肯定感を高め、自分に自信が持てるようになると、原始的な脳が安心し、人間的な脳の思考を使うことが出来る。

このように、自分に対しての内面を見直していくことで、人間脳を使うことができ、人は変わっていくことが出来る。

これらの観点から、人や組織の変革を目指す企業が取り組むべき一つの解は、「人の内面的改善(人間的発達)を促すための人材開発システムの設計」である。

これまでの企業研修や教育は、業務を上手くこなすための技術を提供する、いわばアプリケーションの提供であった。しかし、人が本質的に変化し、人間的発達を目指すのであれば、従来型のアプリケーション型の教育では無く、その人の持つOS(ものの見方や考え方・取組み姿勢・マインドセット等)を成長させるアプローチが必要である。

アプローチの手法としては多数あるが、軸として大切なことは、人材開発システムとして「本人が自身の弱みや欠点を自覚し、改善させるプロセス」を設計することにある。

それは、教育的な要素だけでなく、会議体の仕組みや、評価の際のフィードバックであってもよいが、「本人が自分の至らなさに気づき、それを乗り越える支援を会社が提供できるかどうか」ということが大切である。

まとめると、人が本質的に変わるには、各個人が変革の妨げになっている固定観念と自己防衛反応(第2・第3の脳に引っ張られて行動していること)を理解し、それと向き合い乗り越える必要がある。そして、そのことが個人の人間的発達に繋がるため、企業はその発達を支援するシステムを社内に構築することが必要である、ということである。


最後に、そういった組織体をつくるうえで必要な要素を2つ提示する。
それは、「社員の自己認識力の向上」「心理的安全性の高い職場の実現」である。

「社員の自己認識力」は、グーグルのSIY(Search Inside Yourself:己の内を探れ)の学習プログラムによって有名になった、マインドフルネスなどを活用した「自己内省型の研修」によって向上させることが出来る。

「心理的安全性の高い職場の実現」に関しては、単純な手法で実現できるものではないが、即効性の高いものとしては、「1on1ミーティング」のようなコミュニケーション機会を増やすことである。ただ、そのコミュニケーションは業績や業務態度などのことではなく、個人の目標や目的に応じた、成長のためのコミュニケーションでなければならない。

これらは、知識のインプットのようなわかりやすいものではなく、人間の心理的状態をどのように変えていくかといった非常に難しいアプローチである。

世の中が複雑化すればするほど、人材開発の考え方はより人間の根源的方面へと進んでいき、それらを理解した人事・人材開発担当者が必要になってくる。

私自身は、人材開発を研究する身として常に考えていることがある。それは、『組織はいかにして、人の感情と行動のつながりをマネジメントできるか』ということである。

昨今、働き方改革・ダイバーシティ・高齢者活用など様々な人に関わる課題があるが、多くの人事・人材開発担当者が表面的な施策に終始しているように思う。

もちろん様々な人事施策の取組みは必要であるが、感情を無くした人事に、企業の変革はできないであろう。

これまで全3回にわたって「人は本質的に変われるか」を考察してきたが、結論として「人は変わることが出来るが、本能的仕組みによって変わりづらい。そして、変わるためには従来のアプリケーション型アプローチではなく、人間の根源的な部分へのOS型アプローチをする必要がある」ということである。

デジタル化の流れから様々な人事・人材データを集約できるツールなどが登場してきているが、あくまでツールであり目的ではない。データだけに偏ることなく、データや数字を活用できる「高い知性」と自己や他者の感情を知覚することの出来る「高い感性」を併せ持った、『Ⅰ&E(Intelligence&Emotion)の人事』を目指していただきたい。


次回は、11月19日(火)にコラム投稿いたします。
以上


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コラム執筆者
新島 泰久也
新島 泰久也(ニイジマ タクヤ)
株式会社タナベ経営 戦略総合研究所 人材開発
学習体系構築・人事制度構築・職場環境改善・意識変革など、あらゆる人づくり・組織づくりの課題のためのソリューションを提供します。
人材開発コンサルタントとして、学習体系構築・働き方改革・人事制度構築等に従事した後、戦略総合研究所 研究員として『人と企業の成長を科学する』をテーマに、人材・組織開発分野における研究やコンサルティングメニューの開発・実践をしている。
得意分野 モチベーション・組織活性化、人材採用、キャリア開発、リーダーシップ、コーチング・ファシリテーション
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所在地 大阪市淀川区

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