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裁量労働制適用拡大の議論に企業の人事担当者が思うこと

裁量労働制をめぐり、厚生労働省の有識者検討会で対象業務拡大や運用改善の議論が始まっている。

裁量労働制、雇用の論点を凝縮 法制改革の好機にhttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD313TT0R30C21A7000000/

どれだけ働いても一定の時間働いたことと「みなす」裁量労働制は、自由な働き方を実現するための制度として注目されている。

以前から、たびたび議論のテーブルにあがる裁量労働制だが、企業の実務担当者からすると、正直、使いづらいと思う部分も少なくない。というわけで、今回は「裁量労働制」の適用拡大について思うことを書いてみたい。

目次

  1. 裁量労働制とは
  2. 「自由」と「健康」の狭間で
  3. 正直、裁量労働制は使いにくい
  4. 本当の問題が何かを見極めた上での議論を

 

裁量労働制とは

裁量労働制とは「実際の労働時間数にかかわらず一定の労働時間数だけ労働したものとみなす」という、いわゆる「みなし制」の一種である。

たとえば、「1日9時間」のみなし労働時間を設定すると、その日に2時間しか働かなかったとしても、あるいは、16時間働いたとしても、9時間働いたとみなして労働時間を計算する。

つまり、何時間働こうが労働時間を一定と「みなし」て計算するため、労働者は(比較的)時間を気にすることなく自由に働くことができる、というのがこの制度のポイントである。

裁量労働制の歴史を遡ると、1987年の労基法改正時に、技術革新、サービス経済化、情報化などのなか、業務遂行の仕方について労働者の裁量の幅(自由度)が大きい専門的な労働者が増えてきたことを背景に導入された。

その後1990年代半ばに、成果主義賃金への動きのなか、企業界で裁量労働制への関心が高まり、対象業務拡大の要請が増大したため、1998年には、企業の本社等の中枢部門で企画、立案等の業務を自らの裁量で遂行する労働者についても裁量労働制を適用できるようにした。

従来の裁量労働制は「専門業務型裁量労働制」、新設された裁量労働制は「企画業務型裁量労働制」と称され、現在に至っている。ちなみに今回、再び議論の俎上にあがっているのは、この「企画業務型裁量労働制」について、対象業務をさらに拡大できないか、というものである。

制度導入の背景からも改めて分かるとおり、裁量労働制の目的は自律的で自由度の高いフレキシブルな働き方を実現し、高度に専門的な業務、あるいは事業活動の中枢にある労働者が創造的な能力を十分に発揮することにある。

 

「自由」と「健康」の狭間で

「自由」な働き方によって、自律的な能力発揮を期待する裁量労働制だが、制度開始以来、ずっとついて回っている大きな問題がある。

そう、長時間労働である。

労働時間を「みなし」て計算するということは、見方を変えれば、どれだけ長い時間働かせても合法になってしまう、ということだ。

使用者からすれば、残業させやすい状況が生まれるし、労働者からしても、労働時間を気にすることなく働けることから、長時間労働につながりやすい。実際、裁量労働制を適用した労働者が過労死したケースも少なくない。

厚生労働省も先日、裁量労働制が適用されている人の方が、そうでない人よりも労働時間が長いというデータを報告している。

裁量労働制の適用者、働く時間 1日20分長く https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73297840V20C21A6CT0000/

こうした事情があるため、「自由」がウリであるはずの裁量労働制にも、労働者の「健康」を守るために、さまざまなルールが設けられている。

まず大前提として、裁量労働制は導入のハードルが非常に高い。

「専門型」「企画型」の両方とも、対象業務が厳しく限定されている(だからこそ、今回、その厳しすぎる対象業務を拡大しよう、という議論になっている)。

そして、無事に裁量労働制を導入できたとしても、案外、裁量労働制はそこまで「自由」ではなかったりする。

そもそも、裁量労働制は「労働時間の計算方法」に関して「みなし制」というしくみを適用できるだけであって、それ以外の労働時間に関する規制については原則通り適用される。

つまり、休憩時間はしっかり取得してもらう必要があるし、休日・深夜に働く場合も、当然、割増賃金を支払う必要がある

また「みなし労働時間数」が法定労働時間数を超えている場合には、その分の割増賃金も支払わなければならない(実際の労働時間がみなし労働時間を超えている分は、先述のとおり、追加で残業代を支給する必要はない)。

さらに、裁量労働制を導入する企業は「健康・福祉確保措置」を実施しなければならないとされている。

これは労働者の勤務状況に応じて、過労の防止や特別休暇の付与、健康診断など、労働者が健康を害さないようにするためのものだが、興味深いのは、対応の前提となる「勤務状況の把握」である。

裁量労働制は基本的に「労働時間をみなしで算定する」「業務の遂行の手段及び時間配分の決定に関し具体的な指示をしない」という性質から、労働時間の把握算定義務は免除されている。

しかし先述したとおり、裁量労働制を適用した場合は、「労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を使用者が講ずること」とされており、労働時間の状況を把握しなければ労働者の健康・福祉対策を講じられない、という構成になっている。

これは明らかな矛盾にも思えるが、この点について、厚労省労基局長は過去に国会で以下のような答弁をしている。少し長いが、この矛盾に対する葛藤が垣間見えるので引用したい。

=========================================裁量労働制という制度を運用するにあたって、御本人に実際の労働時間の配分でありますとか時間の長さ、そういったものを任せながら、それを枠として、労働者の方の健康・福祉措置、特に健康に問題が及ばないようにといった観点から把握すべきものをぎりぎりのところで決めておるものでございますから、出退勤時刻という、その枠を把握するということ。そうしないで、実際の労働時間を管理するということになりますと、これは実質的に裁量制ではなくなるということになりますので、そこのところはこの制度の趣旨からいって、枠を、労働し得る時間帯、そういったものを把握しろということをお願いしたわけでございます。=========================================

また、企画業務型裁量労働制を適用している場合、企業側は定期的に対象労働者の労働時間の状況と、それに対する健康・福祉確保措置の実施状況について労基署に報告することになっているため、実質的に、企業側は労働者の労働時間の把握をせざるを得ない状況になっている。

「自由」に働いてもらうことで最大限能力を発揮してほしい、という制度本来の趣旨と、とはいえ「健康」を害さない範囲で働いてほしい、という2つの理想の狭間で、何とか妥協点を見出そうとしているのがよく分かる。

 

正直、裁量労働制は使いにくい

さて、ここまで「自由」がウリの「裁量労働制」が、「健康」に配慮するがゆえに、実はそこまで「自由」ではない、ということを見てきたが、そもそも「自由」な働き方に対応できる労働時間制度は裁量労働制だけではない。

たとえば、フレックスタイム制の場合、労働者は日々の始業・終業の時間を自由に決めることができる*。また、日や週単位ではなく、1ヶ月単位(労使の合意があれば3か月まで延長可能)で労働時間を算定するため、日によって労働時間の量を柔軟に配分することも可能だ

*フレックスタイム制の場合、企業はコアタイムと呼ばれる「この時間帯は必ず働いてくださいね」という時間を設定できるが、設定しなくても問題ない

フレックスタイム制が裁量労働制と大きく違うのは、実際の労働時間に応じて給料が支払われる、という部分である。

そのため、働く時間が短ければ給料が減ってしまったり、逆に所定労働時間より長く働いた時に追加で残業代が支払われ、「成果」に対して処遇することができないのではないか、という意見もあると思うが、それは企業側がどう制度を設計するかで、ある程度カバーすることができる。

たとえば、「労働時間が所定労働時間より短くなっても給与控除しない」というルールにすれば、働く時間が短い場合の懸念はなくなるし、逆に所定労働時間より長く働いてしまうケースについては、その分の固定残業を事前に合意して支払ってしまう、というやり方もある。

こうした対応の例として、以下のトヨタ自動車の制度などが挙げられる(ちなみに、サイボウズもこれに近い方法を採用している)。

トヨタ、裁量労働 実質拡大 一定の「残業代」保証https://www.nikkei.com/article/DGXKASDZ01I3O_R00C17A8MM8000/

上記の方法であれば、固定残業を超えた分の残業代は当然支給されるため、健康を害する時間まで長時間労働することは防ぎやすくなるし、またその時間までの範囲であれば、時間を気にせず働くこともできる。

もちろん、固定残業時間の上限キャップすら気にせず働けるようにしたい、という声もあるのかもしれないが、働く人の「命」よりも、会社の「利益」の方が大切だ、という反社会的な組織は論外として、多くの企業は社員の「健康」を守りたいと思っている

労働者の健康を守ろうとすれば、法律に関係なく、良識ある企業は社員の労働時間を可能な限り把握し、業務災害に結びつくとされている時間(すなわち、労基法の上限時間)以上には働かせないように努力をするだろう*。

*健康を確保するにあたって労働時間に代わる新たな指標が発明される、あるいは、労働時間と一切関係なく、業務上の健康被害を未然に防いでくれる方法が見つかれば話は別かもしれないが……

つまり、労基法の上限を超えて無尽蔵に働かせたい、という期待でもない限り、裁量労働制と(コアタイムを設けない)フレックスタイム制は、働く時間の自由度という点において、殆ど遜色ないのである。

また、フレックスタイム制の場合、適用業務が厳しく限定されているわけでもなく、そもそも適切な給与計算のために労働時間を適正に把握する必要があるため、裁量労働制のように労基署に対する定期的な報告義務もない。

もうお気づきだと思うが、企業の労務担当者からすれば、裁量労働制を無理に選ぶ意義は薄くなっている。導入・維持にコストがかかる裁量労働制を選択しなくても、既存の制度で十分「自由」な働き方は実現できるからだ。

 

本当の問題が何かを見極めた上での議論を

サイボウズで人事担当者をしていると、社員から「自分は自由な働き方がしたいから、裁量労働制を適用できないか」という質問を受けることがある。

そこで「なぜ裁量労働制を適用したいのか」と訊くと、「働く時間が短くても成果だけで評価してほしい」とか、「残業時間のちょっとのブレで給与が増えるせいで、都度、上司と業務調整するのが大変」とか「深夜・休日も時間を気にせず働きたい」などという答えが返ってくることが多い。

ここまで読んでくれた方はお分かりだと思うが、上記の質問はすべて、裁量労働制じゃなくても実現することができるし、あるいは、裁量労働制にしたところで実現できないものである。

大切なのは「規制を緩和すること」ではなく、「どんな理想を実現したいのか」だとぼくは思う。

もちろん、裁量労働制の適用範囲を拡大することによって、健康を確保した上で、これまで以上に能力を発揮できる、という人が実際にいるのなら、時流に沿った改革として進めるべきだと思う。

一方で、「安い給料で長時間働かせたい」という、まったく別の理想を持った人たちに悪用されることは絶対に避けなければならないし、そもそも、裁量労働制を使わなくても、自由に働いてもらう方法は存在する。

制度とは、あくまで、誰かの困りごとを解決する(あるいは組織上の問題を解決する)ためのツールにすぎない、とぼくは思っている。

「自由」「裁量」「規制緩和」といった、一見解放感のある、耳障りの良い言葉に踊らされることなく、どんな問題を解決したいのかに焦点を当てた議論がなされることを、自戒も込めつつ、期待したい。

参考文献:
菅野 和夫『法律学講座双書 労働法 (第12版)』
安西 愈『新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務』

※本コラムはアドバイザー高木が、日経COMEMOにて連載している記事を転載したものです。
https://comemo.nikkei.com/n/nee0b8408ae7d

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