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日本の人事部 LEADERS(リーダーズ)

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「人・組織・経営」研究の第一人者に聞く

「キャリアの成功」を個人が定義していく時代社員の自律性を高めるキーワードは「自分で選ぶ仕組み」と「上司と部下のコミュニケーション」

法政大学 キャリアデザイン学部 教授 武石恵美子さん

かつての日本企業においてキャリアの成功とは、組織の中で昇進を重ねていくことでした。しかし時代の変化とともに、キャリアのあり方も大きく変化。現在は働く人それぞれが、自律的にキャリアについて考えることが求められています。しかし、いまだに多くの人が自身のキャリアを組織に委ねてしまっているのが実情。同質性が重視されがちな日本の組織文化を変えて、「個人がそれぞれの『キャリアの成功』を定義し、自律的にキャリアを開発していかなければならない」と一石を投じるのは、個人の自律性と組織の多様性について研究を続けてきた、法政大学キャリアデザイン学部教授の武石恵美子先生です。変化の渦中にある今、組織と個人が考えるべき「キャリア開発」とは何なのか、武石先生にお話をうかがいました。

法政大学 キャリアデザイン学部 教授 武石恵美子さん

Profile

たけいし・えみこ/専門は、人的資源管理論、女性労働論。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程修了。博士(社会科学)。労働省(現 厚生労働省)、ニッセイ基礎研究所、東京大学社会科学研究所助教授などを経て、2006年4月より法政大学。著書に、『雇用システムと女性のキャリア』(勁草書房)、『国際比較の視点から日本のワーク・ライフ・バランスを考える』(編著、ミネルヴァ書房)、『ダイバーシティ経営と人材活用』(共編著、東京大学出版会)、『キャリア開発論』(中央経済社)など多数。厚生労働省「中央最低賃金審議会」「労働政策審議会 障害者雇用分科会」「労働政策審議会 雇用均等分科会」などの公職や民間企業の社外役員を務める。

「キャリアの完成形」が見えない時代へ

――「キャリア開発」とは何なのか、改めてお聞かせください。

「キャリア開発」に近い意味で、「人材開発」という言葉がありますね。「人材開発」は研修やトレーニングを通して企業が個人の能力を伸ばしていく、企業主体の意味合いが強いものですが、「キャリア開発」は個人が主体となった概念といえます。これまでの日本企業を取り巻く状況下では、企業が責任を持って社員のキャリアを育てる人材開発が効率的でしたし、合理性もありました。しかし現在は、個人が主体的に自分のキャリアを考えなければならない時代に突入しています。そういう意味でも「キャリア開発」という言葉が持つ「個人主体」の概念は、これからの時代、さらに重要になっていくでしょう。

――なぜ今、個人主体の「キャリア開発」が重視されているのでしょうか。

キャリアの「完成形」が見えないからだと思います。近年は社会の構造が大きく変化しており、これまで正解とされてきた方法が通用しなくなってきています。今後はさらにその変化が激しくなると考えられるため、企業は社員個人の人生に責任を負えなくなってきているのです。

その要因の一つは、グローバル化です。海外企業との競争や人材や情報の流動化など、現在は他国との境界線が曖昧になっていますね。もはや日本企業は、国内だけを見ながら経営していくことはできなくなりました。もう一つの要因はAIなど、技術の急速な変化です。今の子どもたちが大人になる頃には、既存の仕事の何割かは無くなっているなどと言われますが、これからの社会がどのように変わっていくのかは、誰にも予測ができません。

「人材」の完成形が明確にあれば、そこに最短で効率よくたどり着く方法を考えればよいのですが、完成形が見えない状況では、個人を育成するためにどうゴールを設定すればいいのかが分からない。これらの変化により、個人主体の「キャリア開発」の必要性が重視されるようになっているのです。

この続きは「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ) Vol.6」でご覧になれます。

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