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「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ)」TOP  >  2015 Vol.3  >  花田光世さんインタビュー
「人・組織・経営」研究の大家に聞く

人事本部から独立した“キャリア開発本部”を設置する意義とは
──「個の視点」に立ったキャリア支援が企業と人材を成長させる

花田 光世さん(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス一般財団法人SFCフォーラム代表理事/慶應義塾大学キャリアリソースラボ/慶應義塾大学名誉教授)

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス一般財団法人SFCフォーラム代表理事/慶應義塾大学キャリアリソースラボ/慶應義塾大学名誉教授 花田光世さん

業績を伸ばし、経営効率を上げるために、人事制度の改革や組織のあり方について模索している企業は少なくありませんが、働く人々の気持ちや思いをくみ取るための仕組みまで考えられている企業は、果たしてどのくらいあるでしょうか。「キャリア自律」研究の第一人者である花田光世先生は、「個の視点」に立ったキャリア支援の仕組みづくりが企業成長には欠かせないとの考えから、人事本部から独立し、新たに「キャリア開発本部」を設置することが重要だとおっしゃいます。その考えの背景には、一体何があるのでしょうか。花田先生に詳しいお話を伺いました。

Profile

はなだ・みつよ/南カリフォルニア大学Ph.D.-Distinction(組織社会学)。企業組織、とりわけ人事・教育・キャリア問題研究の第一人者。産業組織心理学会理事、人材育成学会副会長をはじめとする公的な活動に加えて、民間企業の社外取締役、報酬委員会などの活動にも従事。経済産業省、厚生労働省の人材開発・キャリアの領域の研究会などに座長・委員として幅広く従事。「人事制度における競争原理の実態」で、第一回組織学会論文賞を受賞。主な著書に「働く居場所の作り方」(日本経済新聞出版社)「新ヒューマンキャピタル経営」(日経BP社)、主な論文に「人事制度における競争原理の実態」(組織科学)、「グローバル戦略を支える人事システムの展開法(上・下)」「コア人材の機能と条件」(以上「ダイヤモンド ハーバード・ビジネス」)などがある。American Sociological Review,Administrative Science Quarterlyといった海外の学術誌や国内の学会誌、人事分野の専門誌などに300本を越す論文があり、最近は、キャリア自律の推進、キャリアアドバイザーの育成などの活動に精力的に取り組んでいる。

「組織の視点」から、「個の視点」に立った支援へ

花田先生はこれまで一貫して、組織の中での「個の自律」や「キャリア自律」を提唱されてきました。これまでのキャリア自律に関する流れを、改めて伺えますか。

1985年頃に、企業への帰属意識に関する研究をまとめたのですが、人は、自分にとって本当に大切な仕事にチャレンジできたり、担当できたりする機会を組織が提供してくれると、組織に対する帰属意識が高まります。いわゆる組織に依存するという忠誠心だけが帰属意識ではなく、自分が主体的にかかわる場が組織から提供されることで帰属意識が芽生えることを提起した一連の研究でした。そんな自己主体型の帰属意識の大切さを今から30年ほど前に提唱しました。世の中はまさに、バブルに向けて上り調子。日本経済が非常に強かった時期と重なり、個が主体的に働くとはどういうことなのか、人事としても大切にしなければいけないという機運は高まっていました。

その後バブルが崩壊し、1994~1995年頃に、米国を中心に「組織内キャリア自律」という考え方が登場しました。また、日本の企業でも、組織視点から個の視点へと意識が向けられ始めるようになりました。そういう流れの中で、当時として企業では、まだまだ個の自律を正面から制度として展開することが難しかったこともあり、「生き方研究所」で個の自律をもっと考えようであるとか、組織の中での一生と個人の自律をベースとした生き方を対比する意味で、組織の中に「ライフキャリア・サポートセンター」を設け、個人の主体的なキャリア形成を支援するメカニズムをどのように企業内で構築したらいいかなどの一連の研究や実践に向けた活動を行ってきました。

それらの活動の中で常につきまとっていたのが、「総論賛成、各論反対」という意識です。しかし近年では、「総論賛成、各論も賛成」という動きが組織の中に広がってきています。若者も管理職も、ミドルやシニアの人たちも、自分で自分のキャリアに自律的に取り組むことが必要だという認識が定着してきたのだと思います。

これからは組織の中で、従来の人事と少し離れ、個のキャリア自律をもっと前面に出して支援していくフォーマルな制度や仕組みが必要になってくると思います。さらにその支援として、キャリアコンサルタントやキャリアアドバイザーの育成・活用も重要な課題になっていくと考えられます。

この続きは「日本の人事部 LEADERS(リーダーズ) Vol.3」でご覧になれます。

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