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HR領域の“傾向と対策”

企業・人事部がいま学ぶべき、効果的なミドルマネジャー育成方法とは

松尾 睦さん(北海道大学大学院経済学研究科 教授)

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授 松尾睦さん
Profile

まつお・まこと/1964年東京都生まれ。88年小樽商科大学商学部卒業、塩野義製薬入社。92年北海道大学大学院文学研究科行動科学専攻修士課程修了。東急総合研究所勤務を経て、99年東京工業大学大学院社会理工学研究科・人間行動システム専攻・博士課程修了(博士[学術])、小樽商科大学商学部准教授に就任。2004年英国ランカスター大学にてPh.D.取得。神戸大学大学院経営学研究科教授を経て、2013年より現職。主な著書は『経験からの学習――プロフェッショナルへの成長プロセス』(同文舘出版)、『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』(ダイヤモンド社)、The Role ofInternal Competition in Knowledge Creation(Peter Lang)など。

求められる「仕事経験ベースの育成」

組織の屋台骨であるミドルマネジャーの育成は、企業を悩ませている課題である。現在の管理者教育は、研修やセミナーなどのOFF-JTを中心に行われているようだが、それだけでは不十分だろう。なぜなら、管理職の成長の7割は仕事経験によって決まると言われているからである。つまり、マネジャー育成は、仕事経験をベースにした方法に転換すべきである。

ただし、やみくもに「経験から学べ」「挑戦しろ」と叱咤するだけでは効果は望めない。マネジャーがどのように成長しているかを科学的にとらえた上で、経験からの学びを促す必要がある。そこで筆者は、管理職の成長プロセスを解明するために、日本の中堅・大企業12社の課長・部長524名を調査した。その内容は拙著『成長する管理職:優れたマネジャーはいかに経験から学んでいるのか?』(東洋経済新報社)にまとめたが、本稿では、この研究結果を中心にミドルマネジャーの育成方法を提言したい。

調査の結果、優れたミドルマネジャーは、「連携」「変革」「育成」という3タイプの経験を積むことで成長していた。具体的には、他部門や外部組織と連携しながら仕事をし、商品・制度・組織などを変革する活動に参加し、部下や後輩を育てたことがある人ほど、マネジャーとして成長する傾向にあった。

ここで注目したいのは、会社ごとに三つの経験スコアが大きく異なっていた点である。つまり、成長につながる経験を積める会社とそうでない会社の違いが大きいのである。特に、「変革の経験」においてその傾向が見られた。関心のある方は、拙著に掲載されている質問票を用いて、自社のマネジャーの経験を測定し、12社のデータと比較してほしい。自社が良質な経験を提供できているかどうかを数値でとらえることが、マネジャー育成の第一歩である。

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