日本の人事部 LEADERS vol.13
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変化に対応する「戦略人事」のアップデート従業員体験の充実から、組織力の強化へ企業の持続的な成長に向けて「戦略人事」が欠かせないことは論をまちません。昨今ではビジネス環境の変化を受け、戦略人事のアップデートが求められています。人事部門は今、どのような課題と向き合い、手を打っていくべきなのでしょうか。中央大学大学院の島貫智行教授は「ポジションマネジメントとタレントマネジメントの両輪駆動」「人事原則・方針に基づいた制度や施策の設計」「イノベーションを創出するための組織力強化」を提言します。「ポジションマネジメント」への関与が求められる―戦略人事の取り組みとして、昨今ではタレントマネジメントを強化する企業が増えています。 良い人材を確保し、成長を後押しして人材プールを作っていく。こうしたタレントマネジメントはもちろん重要ですが、私は「ポジションマネジメント」と両輪で取り組んでいくべきだと考えています。 ポジションマネジメントとは、組織と仕事をマネジメントすること。人事部門は「そもそも自社にはどんな仕事やポジションを作るべきか」を考えなければなりません。 たとえば、五つの事業を展開している企業が、事業を三つに再編するか七つに分割するかによって、組織図は変わりますよね。こうした経営戦略と組織構造の変化によって必要な事業部長の数が変われば、各々の仕事の中身も変わります。戦略に基づいて組織をデザインし、ポジションに落とし込んではじめて、事業部長には何の能力が必要で、どんな職務価値があり、どれくらいの報酬を設定するのかを検討すべきなのです。―ポジションマネジメントに人事部門が関与できないと、どうなるのでしょうか。 ポジションが決まった後でようやく人事部門が関与する後手後手の対応を繰り返していては、どれだけタレントマネジメントを頑張っても、そのポジションにふさわしい従業員を配置できません。人事部門は組織デザインの決定フェーズに関与し、経営層に対してポジションの要件を満たす候補者がどの程度いるのかを説明することや、時に人材プールをふまえた組織再編のタイミングを助言することも必要です。ただし、タレントマネジメントの都合だけでは経営戦略を実現できないため、人事部門が両輪で回すことが肝心です。中央大学大学院 戦略経営研究科 教授島貫智行さんしまぬき・ともゆき/慶應義塾大学法学部卒業。総合商社人事部門を経て、一橋大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。一橋大学大学院経営管理研究科教授などを経て現職。主な著書に『グラフィック ヒューマン・リソース・マネジメント』(新世社、共編著)など。「戦略人事の考え方」を『一橋ビジネスレビュー』に連載中。80

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