日本の人事部 LEADERS vol.13
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「不安」も自分が選択した感情 まず宮城氏が紹介したのは、「全ては自らの選択の連続である」との言葉。アメリカの精神科医ウィリアム・グラッサー氏が提唱した、「選択理論」の考え方だ。 従来の心理学では、人間の行動は外部からの刺激に対する反応であると捉えられてきた。一方選択理論では、「行動、思考、感情は自らの選択である」と考える。たとえ何かを選択したとしても、必ずうまくいくとは限らない。しかしそのことで落ち込んだり不安になったりすることも自分が選択したことであり、決してその出来事や他人が自分を不安にしているわけではない、とするものだ。「キャリア選択の場面においても、私たちは自ら選択しながら生きています。自分で選択できる以上、自分の人生を他人任せ、会社任せ、運命任せにせず、『これからは自分でキャリアを形成していこう』と考えてほしいと思います」 自分でキャリアを切り開いていくには、「積極的に自分を変えること」が効果的だと宮城氏は言う。 自分の思い通りにならないとき、相手や環境のせいにしたり、相手を責めたりすることがある。しかし考えるべきは「自分がどんな態度や行動、言葉を選択しているのか」であり、ほかに選択できる行動を模索することである。 では、自分の気分や感情を変えるにはどうしたらいいのか。宮城氏は「自分が求めているものを変える」「自分の具体的な行動を変える」「相手をコントロールしようとしない」の三点を挙げる。これはつまり、コントロールできるのは自分だけであり、環境や他人を変えようとするのは難しいとの自覚が重要であることを意味する。「部下との関係に悩んでいたとしても、部下を変えることは難しいですよね。そんなときは、自分のマネジメントスタイルを変えたり、1 on 1の仕方を変えたりしてみましょう。他人を変えるよりも自分自身を変えるほうが、ずっと簡単なのです」行動を変えることで捉え方を変える 次に宮城氏が紹介したのは、「捉え方が心と行動を規定している」と考え、認知のゆがみを修正して動機付けることで、前向きに行動することを支援する「認知行動療法」だ。基調講演「意味づけ」と「自己変革」の心理学PROFILEキャリア心理学研究所 代表/臨床心理士宮城まり子氏みやぎ・まりこ/臨床心理士として病院臨床などを経て、産能大学助教授となる。1997年よりカリフォルニア州立大学大学院キャリアカウンセリングコースに研究留学。立正大学教授、法政大学教授を経て、2018年4月から現職。専門は臨床心理学(産業臨床、メンタルヘルス)、生涯発達心理学、キャリア開発・キャリアカウンセリング。20

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