ーー「HRアワード2019」企業人事部門 個人の部 最優秀賞 受賞、おめでとうございます。受賞されたご感想をお聞かせください。 受賞の一報をいただいたときには、心底驚きました。今回は個人の部で受賞しましたが、私一人ではなく、ソフトバンクの人事チーム全員でいただいた賞だと認識しています。受賞にあたって評価いただいたのは、ソフトバンクグループの後継者育成機関「ソフトバンクアカデミア」の立ち上げや、新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」の企画推進、HRテクノロジーを活用した採用など、ソフトバンクの人事として取り組んだ事例がメインです。私が行ったのは、人事部門がアグレッシブに取り組んできたさまざまなケーススタディを社内にとどめることなく、社外に発信したこと。ソフトバンクの人事チーム全員で取り組んだからこその結果だと思っています。ーーあらためて、源田さんのこれまでのキャリアについてお聞かせいただけますか。 私はもともと人事畑ではなく、営業畑にいた人間なんです。1998年、営業としてソフトバンクに入社しました。10年ほど経ったある日、「営業の人材育成を担う部門に異動してみないか」と打診されたのですが、まさに青天の霹靂(へきれき)でしたね。正直、営業が好きで結果も出しているのになぜ異動しなければならないのかと思い、「営業を続けたい」と主張したのですが、「このまま営業に残ったら、今の10倍の業績をあげられるか」と問われました。「営業として今の10倍稼ぐことは無理でも、自分より優秀な営業を10人以上育てたら、そのほうが会社への貢献になるのではないか」と言われました。その言葉で、人事の仕事にチャレンジすることを決意しました。ーー人事部門へ実際に異動してみて、いかがでしたか。 人事には、営業とはまた別の面白さがあると感じました。営業の仕事は、自分自身がどの程度会社に貢献できているかが明確です。どれだけのコストがかかって、どれだけの利益を生んでいるのかが数字でわかるわけですから。一方、人事の仕事は成果を定量化しにくい。ただ、定量的にあらわせないもののなかにこそ仕事の醍醐味(だいごみ)がありますし、成果や貢献度をいかにして測るのかという面白さもあります。研修や面談をきっかけに、仕事の楽しさに気づく人がどんどん増えていったり、キャリアの考え方が大きく変わって飛躍していく人が出てきたり、プロジェクトのキーポジションに適切な人材をアサインしたことで事業も人も大きく成長したり。採用や教育、異動、制度づくりなどを担う人事は、社員の人生に与える影響が大きいですよね。営業のときよりも、もっと“個人”に向き合う機会が増え、一人ひとりのキャリア開発や自己実現を応援していく楽しさを知りました。 また、「人事の仕事は事業戦略と密接につながっている」と気づいたことも大きかったと思います。ソフトバンクの人事のトップである青野は、「人事の仕事とは、人と事業をつなぐこと」だと常々言っていますが、経営理念や事業戦略を実現させるために、人と組織をどうつなぎ、どう支援できるかが私たちの腕のみせどころです。会社の事業戦略へのインパクトがとても大きなポジションだと思います。ーーこれまでの人事としてのキャリアのなかで、ご自身のターニングポイントとなった出来事はありますか。 たくさんあるのですが、まず思い浮かぶのは、「ソフトバンクユニバーシティ認定講師制度」の立ち上げです。ソフトバンクユニバーシティとは、ソフトバンクグループの社員向けに研修を提供する人材育成機関。私が人事に異動してきたタイミングでは、研修のほとんどを外部講師が担っていたのですが、実際の研修を見学してみて、疑問を感じたんです。優秀な講師ではあるが、机上の話がメイン。これでは研修で学んだことが十分に身につかないだろうと、講師の人選を見直すことにしました。 ふと社内を見わたすと、ソフトバンクの社員のなかに、すばらしいリーダーシップを持つ人がたくさんいます。それなら社員に講師をやってもらおう、ということになり、社内認定講師の制度をつくって、研修の内製化にかじをきりました。部署や職種、役職の垣根を越えて、これまでの知見や経験、強みを生かして社員自ら登壇する講義のスタイルは、非常に独自性が高いものだと思います。制度発足から11年目となる今年度の認定講師は130人を超え、人事の仕事は事業戦略と密接につながっている人事の常識や社内の慣行、従来の手法にとらわれない人事施策65
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