「日本の人事部 LEADERS」vol.5
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ーー「HRアワード」企業人事部門 個人の部 最優秀賞 受賞、おめでとうございます。あらためてご感想をお聞かせください。 本当にありがとうございます。表彰式でも申し上げましたが、私はつねづね、人事というこの素晴らしい仕事を通じて世界をもっとよくしていきたい、みんながもっと元気でイキイキ、ワクワクしながら働ける社会を創っていきたいと、本気で考えています。私がこのような賞をいただくことができたのも、そのことに共感し、応援してくださる方がたくさんいらっしゃるからかな、と。そう考えると、ただうれしいだけではなく、ものすごく心強いですね。ーー島田さんは受賞のコメントで「人事は世の中でもっとも面白い仕事」だとおっしゃいました。多くの人事パーソンがこの言葉に励まされたと思います。 私の言葉が皆さんの心に響いて、何かしら励みになったのならこれほどうれしいことはありません。ただ、私の言葉よりも、それを前向きに受け止めて、「そうだ!」と共感してくださる思いのほうが素晴らしい。『日本の人事部』を通じて出会った方々となら、そういう思いを一つにしていけると確信できたことが今回の受賞の一番のご褒美だと、私は思っています。 人事は世の中でもっとも面白い仕事です。そう断言することに、私自身は何の迷いも疑いもありません。でも日本では残念ながら、一般的にまだそういう風潮になっていないのが現実ですよね。人事というと、何か暗くて、堅くて、近寄りがたいイメージがあります。評価に関与しているだけに、現場からは警戒されているというか、はっきり言って、よく思われていない。制度やルールにやたらとうるさくて、人事に呼ばれたらたいてい悪い話だろう、などと思われているように感じます。ーーたしかに、人事が社内でそう見られているケースは少なくありません。 「見られている」というよりも、自分たちでそういうふうに「見せてしまっている」ところもあるのではないでしょうか。私には、日本の企業社会の中で人事という仕事を一番過小評価し、ネガティブに捉えているのは、ほかならぬ人事自身であるように思えてなりません。もちろん、誇りをもって前向きに活躍されている人事リーダーや人事パーソンの方も、最近は着実に増えていますが。 本来、会社という組織の中で、私たち人事は社員に、そして経営陣に一番近い存在です。その人事のあり方や言動が、現場とマネジメント、双方に大きな影響力をもたないはずがありません。例えば、人事施策について社員から質問やクレームを受けたとき、あるいは経営陣から提言を求められたとき、人事が最初にどんなひと言をどんなあり方で発するかによって、相手の印象は変わり、ひいてはマインドセットも変わります。社員や経営陣のマインドセットが変われば会社が変わり、会社が変われば社会が変わる。世界を人事から変えられるとしたら、こんなに面白くてやりがいのある仕事はないでしょう。ーー人事は人に働きかける仕事ですから、たしかに「言葉の力」は大切ですね。 本当にそうなんです。例えば、誰かに会社の制度について質問されたら、人事としてはその問いに的確かつ丁寧に答えることが求められますが、それだけではいけないと私はチームのみんなに言い続けています。相手はなぜ、それを知ろうとしているのか。本当は別の問題や悩みを抱えているのかもしれないし、もしかしたらその制度に疑問や不満を感じているのかもしれません。質問の背景にある相手のニーズを考え、そこまでくみ取れるような問いかけや応対をすることで、私たちにも貴重な気づきが得られるのです。人事に限らず、人に働きかける組織のリーダーにとって「言葉の力」は本当に大切だと思いますね。ーーユニリーバ・ジャパンでは2016年7月から新人事制度「WAA」を導入しています。あらためて制度の概要をご紹介いただけますか。 「WAA」は、いつでもどこでも、働く時間と場所を社員自ら自由に選択できる制度です。上司に申請すれば、理由は問わず、自宅やカフェ、図書館といったオフィス以外の場所でも勤務することができます。勤務時間や休憩時間も、平日の6時~21時の間で、自由に決められます。対象は全社員におよび、制度の利用に期間や日数の制限もありません。“いつでもどこでも”、そして“誰でも”OKというわけです。これを適切に機能させることで、働き方の多様性を高め、社員一人ひとりが自分らしく、持てる能力を最大限発揮できるように支援していきたいと考えています。ーー島田さんが「WAA」を発案し、立ち上げられた背景には、どのような思いや経緯があったのでしょうか。人事の発する「言葉の力」が社員や経営層のマインドセットを変えるWAA導入の背景にあるのは組織に根付く「人を大切にする」思想51

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