日本の人事部
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若者に思わせるような教育や人材育成が行われているということです。ここが日本の一番の問題だと思います。自分で考えて自分で決めるなんて、求められたこともなければ、トレーニングした経験もない。だから判断を迷ったり、先延ばししたりしてしまうのは当然なんです。 迷うと、まだ学びが足りないんじゃないか、もっと学ばなきゃいけないんじゃないかと思ってしまいます。あれこれと学んでさえいれば、いつかその先に自分の将来が開けてくるような気がして、安心できるわけです。でも、それはまったくの誤解です。会社帰りに英会話学校に通っていれば、海外で働くチャンスがめぐってくるわけではありませんよね。まず自分で自分の仕事を創り出し、その上で必要に迫られたら、語学でも何でも学べばいいと思います。ーー川口先生ご自身は、「はやぶさ」が世界で初めて成し遂げた、小惑星のサンプルリターン(宇宙から試料を採取し持ち帰ること)の研究に30年近く前から関わっていらっしゃいます。そうした研究テーマも、ご自分で決められたのですか。 ええ。研究のテーマというのは本来「関わる」というより、私たちが自ら新しく「創り出す」ものなんです。誰かに与えられたり、そのへんに転がっていたりするわけではありません。研究機関では一人ひとりがそうしたオリジナリティーをもって仕事をしていますし、少なくともJAXAという組織はそうあるべきだと私は思っています。 一般の会社も、基本的に同じではないでしょうか。職場には行き詰まって悩んでいる人がよくいますよね。真面目な人ほど、「学生の頃からいろいろ学んできたのに、自分は会社で仕事に恵まれない」と考えてしまいます。でも、そう思っていること自体が問題なんです。仕事は恵まれるものじゃなくて、自分で創るものだから。 とはいえ、そのことに気づかないから本人は悩んでいるわけだし、やはり適材適所というのもあります。そこは人事部の方が見てあげないと、本人も会社も不幸でしょう。私は、人材を採用する際にもっとインターンシップを活用すべきだと思います。研究者の採用も同じですが、試験や面接だけでは何もわからない。インターンとして1ヵ月一緒に働けば、その人がどんな特性をもっているか、かなり見えてきます。るップとは117

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