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脳科学は人事にどう活かせるか
~モチベーション、アンガーマネジメント、身体感覚~

早稲田大学研究戦略センター 教授 枝川義邦さん

脳の可視化により、モチベーションアップのスイッチを特定する

早稲田大学研究戦略センター 枝川 義邦さん

マーケティングにおいてはニューロマーケティングなどの活用方法が思い浮かびますが、人事の場合、脳科学はどのように活かせるのでしょうか。

いくつか考えられますが、今後の可能性も含めてであれば、1.モチベーション、2.アンガーマネジメント、3.身体感覚の三つを挙げたいと思います。

まず一つ目の「モチベーション」について。脳内には内側前頭前野、側坐核、黒質・腹側被蓋野、脚橋被蓋核などから構成される「報酬系」と呼ばれる神経回路があります。この中で、「意欲」「動機づけ」「価値判断」」「報酬性の予測学習」といった一連の活動が行われており、これらがいわゆる「モチベーション」というかたちで表れます。

もちろん、脳の中身は個人ごとに差があり、モチベーションがUp/Downする要素も個人ごとに異なるのですが、肝心な脳の中身を見ることはできません。ブラックボックスです。そのため、どのようにすればモチベーションが上がるのか、人事や上司の方の多くは明確に把握することができず、手探り状態になっているかと思います。

ところが、fMRI (functional magnetic resonance imaging)やNIRS (Near-infrared Spectroscopy)といった機器を使えば、個人ごとに脳の活動のクセを測ることができるようになります。これにより個々人のスイッチが入りやすい最適なはたらきかけ(コミュニケーション、任せる業務、インセンティブ設計など)を知ることができますので、結果としてモチベーション向上をサポートできるようになるのではないでしょうか。

もちろん、実用に向けての課題は多いです。技術的には可能となってきていますが、現時点では脳の測定ができる施設も限られており、また、計測器の小型化も必要です。また脳内の情報はいわば「究極の個人情報」であるため、法整備や倫理面への配慮なども必要となるでしょう。


2017/01/24枝川義邦早稲田大学脳科学

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