自動車メーカーや食品メーカーでの取り組み事例から考える
~従来型パワハラ予防研修の5つの盲点と対策
- 伊藤 智惠子氏(本田技研工業株式会社 人事統括部 人事部 キャリア・多様性推進室長)
- 平井 俊宏氏(有限会社グローイング 代表取締役社長/Web適性検査「パワハラ傾向振り返りシート」共同開発者)

人的資本経営やDX、働き方改革が経営の重要課題となる中、阻害要因となるパワーハラスメントの予防は、企業にとって喫緊の課題である。多くの企業が対策を講じているが、「研修を実施しても行動が変わらない」「環境が変わると再発する」などの悩みが尽きないのが実情だ。本講演では、5万人以上の役員や管理職に適性検査や研修を実施してきた有限会社グローイング代表の平井俊宏氏と、本田技研工業株式会社(以下、Honda)でキャリア・多様性推進室長を務める伊藤智惠子氏が登壇。「従来型パワハラ予防研修の5つの盲点」をテーマに、なぜ従来の施策が機能しづらいのか、また、どんな対策が有効なのかが語られた。

(いとう ちえこ)鈴鹿製作所で25年以上の事業所総務を経験。2015年に本社 多様性推進室(現キャリア・多様性推進室)へ異動。女性活躍・ベテラン活躍に取り組み4年後に当時はまだHondaで2.9%であった女性管理職へ。その後、ホンダアクセスと朝霞事業所にて計5年の事業所総務課長の経験を経て、2025年4月より現職。

(ひらい としひろ)Web適性検査「パワハラ傾向振り返りシート」を共同開発。230社50,000名以上(半数は上場・上場関連会社)の役員・管理職が受検する。検査提供と合わせてマネジメント力強化の文脈でパワハラ予防意識を醸成する「自分理解研修」やエグゼクティブコーチングを提供。研修効果によるリピートクライアントも多数。
経営課題としてのパワハラ予防と、Hondaにおける「人間尊重」
有限会社グローイングは、「一体感のある組織づくりで組織と個人の成長に貢献する」をミッションに掲げ、今年で創業19年目を迎える。同社が提供する管理職教育用Web適性検査「パワハラ傾向振り返りシート」は、パワハラ行為者に共通して現れがちな特性を6つのリスクとして可視化するものだ。
これまでに上場・非上場を問わず、採用や最適配置を含めて15万人以上、パワハラ予防の文脈では5万人以上の役員・管理職が受検している。本検査は、単にリスクを判定するだけでなく、自身の特性が「長所」として発揮されているか、あるいは「リスク(短所)」として表出しているかを客観的に振り返るためのツールとして設計されている。本ツールを用いることで、パワハラ予防を自分ごと化し、組織全体でリスクを可視化して、適切な教育施策や定点観測が可能となる。
講演の冒頭、平井氏は日本企業におけるパワハラ予防の取り組みについて触れた。同社の約270社への調査によると、従業員数300名以上の企業の約8割(従業員数1,000名以上でも同割合)が「パワハラ予防に既に取り組んでいて、今後も継続・強化する」と回答している。DXや働き方改革、エンゲージメント向上といった経営課題を実現するためには、上司と部下の信頼関係が土台となるからだ。
続いて、Hondaで長年現場の総務課長を務め、現在は全社のダイバーシティ推進を担う伊藤氏が、同社の風土とハラスメントリスクについて語った。
「私が以前在籍していた朝霞の事業所は、バイクが好きで入社した『やんちゃ』で熱量の高い従業員が多い職場でした。彼らが『お客さまの期待を超える製品を届けたい』という熱い想いをぶつけ合いながらモノづくりをする過程には、パワハラのリスクをはらんでいました。もしハラスメントが起きれば、被害者はもちろん、職場や行為者本人の人生にも大きな影響を与えてしまいます」
(期間限定:2026/2/22まで) 「HRカンファレンス2025秋」の講演レポート
[A-2]その課長、部長になれますか? データで語る「管理職」としての成長分岐点
[A]企業が選ばれる時代の「人的資本経営」
[C-6]ミドル・シニア人材の活躍を促すには Will-Can-「Must」に代わる「Offer」という考え方
[C]人財ポートフォリオを起点とした事業変革 ―「”社員が主役“のカルチャー改革」と「人的資本経営の実践」
[D-1]実態把握から始める「仕事と介護の両立支援」 ~制度づくりで終わらせない効果的な両立施策とは~
[D]データで支える、キャリア自律と組織の成長 ~NTTデータ(法人部門)の組織ぐるみの実践と変革への挑戦~
[E]社員の主体的な学びを促す「ラーニングコミュニティ」の作り方
[F-2]経営戦略と連動する「真の戦略人事」の実現に向けた4つの視点
[F]住友生命が語る、10年後の「あるべき姿」を見据えた 若手・中堅を次世代リーダーに育てていくためには
[G]戦略転換を加速させる人事戦略の要諦 ~ 一貫性・連動性ある人事戦略の再構築と実装 ~
[H]ミドル・シニアがいきいきと働ける組織をどうつくるか――制度改定と実践の観点から考える
[I-4]管理職層の行動変容を後押し! 360度フィードバックのポジティブなループで組織風土を育む実践プロセス
[I]CHROの哲学~人事リーダーに学ぶ、人事キャリアの歩み方
[J]強い組織に必要な感情設計 ~人事・リーダーに求められる、従業員の感情との向き合い方~
[K]次世代経営者育成とタレントマネジメントの実践 ~ブラザー工業に学ぶ 人財開発グランドデザインの手法~
[L]「AIネイティブ組織」はいかにして創られるか? 〜AI時代の企業文化と戦略人事の新たな役割〜
[M]熱量高く、創造的な組織へ -Human Capitalを高めるためのアプローチ-
[N-8]300社との対話から紐解く! 「プレコンセプションケア」の理解促進と「不妊治療」支援の課題と実践事例
[N]いま、おさえるべき「人事ポリシー」の重要性 戦略や環境の変化に振り回されない軸をつくるには?
[O-5]競争力のある人事・報酬制度を目指して – 最新の報酬トレンドにおいて優秀な人材をいかに処遇すべきか
[P]人事院総裁と組織論の第一人者が語り合う「人事制度改革を実現するリーダーシップ」
[Q]日本を代表する二人のCHROが語り合う、「新天地での人事戦略」と「私の人事観」
[R]日清食品HD 成田CIOと語る──AI時代の組織変革とリーダー育成のリアル
[S]早期リーダー育成と抜擢によるサクセッションプラン 「マネジャーの枯渇問題」を乗り越えるためのヒント
[T]人的資本経営を加速するエーザイの戦略 ー情報開示と社内浸透の実践ー
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[V]“日本的雇用慣行”が崩れつつある中、日本の採用はどう変わるのか
[W]調査結果から検証する、人事実務家の経験・関心・学びとその効果
[X]なぜ管理職は変化を拒むのか? 〜令和時代に求められるマネジメント変革とは〜

