50代社員を活躍させるために! 人事が知るべきアンコンシャスバイアス攻略とは
- 得丸 英司氏((一社)定年後研究所 所長/(株)星和ビジネスリンク 取締役専務執行役員/日本FP協会 特別顧問)
- 小島 貴子氏(東洋大学理工学部生体医工学科 准教授/埼玉県人事委員会 委員/(一社)定年後研究所 顧問)
定年延長でシニアが65歳、70歳まで働く時代がすぐそこまで来ている。そこで問題となっているのが、役職定年を迎えた50代の働くモチベーションの低下である。背景にあるのは「もう自分は成長できない」と思い込んでしまう「アンコンシャスバイアス=先入観や固定観念」だ。どうすればアンコンシャスバイアスを攻略できるのだろうか。
(とくまる えいじ)大手生命保険会社で25年にわたり、法人・個人分野のFPコンサルティング部門に従事。日本FP協会常務理事、慶應義塾大学大学院講師などを歴任。現在は、一般社団法人定年後研究所所長、株式会社星和ビジネスリンク取締役常務執行役員、特定非営利活動法人日本FP協会特別顧問を務める。
(こじま たかこ)三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)勤務。出産退職後、7年間の専業主婦を経て91年に埼玉県庁に職業訓練指導員として入庁。キャリアカウンセリングを学び、職業訓練生の就職を支援。7年連続で就職率 100%を達成する。埼玉県庁を退職後、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科 特任准教授を経て現職。
得丸氏によるプレゼンテーション:定年後研究所でいま取り組んでいること
2018年7月に活動を開始した定年後研究所は、50代以上の会社員に特化したセカンドライフの準備支援機関だ。「自走人生」の提唱により50代シンドロームを解決し、定年3.0という次世代シニア像を実現することをミッションとしている。
まず得丸氏は、50代社員のモチベーション低下がもたらす経済損失について語った。
「50代社員の役職定年で、モチベーションダウンやあきらめの気持ちが起こっています。それが生産性の低下を招いていて、経済損失は約1.5兆円ともいわれています」
今、50代社員に見られるのは、年齢的に遅いと思ってしまう「もう症候群」。これにはアンコンシャスバイアスが影響している。アンコンシャスバイアスとは、一般的には人が無意識に持つ偏見や固定観念、思い込みを指す。
「そのため私たちは、50代社員に人生『ふた山づくり』を提唱しています。『もう』ではなく『まだ』と思ってもらうのです。自発的に『まだ時間はある、まだ成長できる、まだ期待されている』と気付いてほしい。これは会社人生のあとに、自走人生というふた山目をつくる生き方です。50代を自走の準備期間とし、ふた山目を通じて生涯現役を目指します」
人生「ふた山づくり」は、企業にとっても意義のある活動だ。50代シンドロームによるモチベーションダウンを軽減し、元気に「会社人生」を全うすることで、職場の若手への悪影響を排除できる。また、リタイア後も世の中とのつながりを維持しつつ、社会貢献できるシニアを輩出できる。
「自立シニアを育成し、世の中に輩出することを通じて、社会に貢献する。これは国民的課題である社会保障費負担の軽減にもつながります。これをシニア社員の意識改革と会社の支援によって実現していきます」
同研究所では、「雇用延長についてどう思うか」というシニアアンケートを行っている。結果は「歓迎」が約4割で、「歓迎しない」は6割。また、「今の会社で70歳まで働くことに不安はあるか」という質問では「不安あり」が96%だった。不安に思う理由には「体力が続くか不安」「50代と同様のパフォーマンスが提供できるか不安」「意欲が保てるかわからない」などがあった。
こうしたシニアの声に応えるために定年後研究所では、シニア人生の準備期間から実践期間までをサポートする「自走人倶楽部」というサービスを開発した。自身の経験と思考を通じて自らの「能力と職務」を拡張するシニア層に最適化したeラーニング方式の「Career Learning System」も、その一つだ。
「『Career Learning System』は、自己発見を目的とした“ビッグファイブ診断”と職務能力を開発する“8コンテンツ”で構成され、シニア社員の自律的・積極的な行動への行動変容を促すことができます。企画・監修として、東洋大学准教授の小島貴子先生に加わっていただいています」
最後に得丸氏は、企業の人事にありがちなアンコンシャスバイアスの声を紹介した。
- 今さら新たな職務を付与してもうまくいかないのではないか
- 当該層のモチベーションアップのためとはいえ、給与などの処遇改善は難しく、打つ手はないのではないか
- 個人差が大きく、個々の社員の考え方が全く異なるため制度などの一律運営では対応できないのではないか
「このような考えを持つ人事の方は多いかもしれませんが、これも思い込みの一つ。シニアの皆さんのふた山目『自走人生』は、シニア社員の自助努力だけでなく、企業からのふた山づくりの支援があって実現可能になります。ぜひ二人三脚でのご支援をお願いします」
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