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HRカンファレンストップ > イベントレポート一覧 > 2015年-春-  > 特大会場[G] 日本の働き方を変える ~介護時代に即した日本マイクロソフトの取組みと日本企業のこれからの課題~

日本の働き方を変える ~介護時代に即した日本マイクロソフトの
取組みと日本企業のこれからの課題~

<協賛:日本マイクロソフト株式会社>
2015.6.23 掲載
越川慎司氏 小室淑恵氏 Photo

「労働人口の減少」と「介護人口の増加」という問題に直面している日本。今後は、多くの人が仕事と介護の両立を求められることは間違いない。企業にとっては社員の多様な働き方への対応が重要になるが、具体的にはどのように社員の働き方をデザインしていけばいいのだろうか。ワーク・ライフバランス代表取締役社長である小室淑恵氏が「企業にとっての介護の問題の背景と考え方」を、日本マイクロソフト業務執行役員の越川慎司氏が「日本マイクロソフトの具体的な取り組み」について語った。

プロフィール
小室淑恵氏(株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長)
小室淑恵氏 プロフィール写真

(こむろ よしえ)残業を減らして業績を上げる「働き方見直しコンサルティング」に定評がある。これまで900社以上に導入。2児の母として子育てをしながら効率の良い働き方を実践。『6時に帰るチーム術』など著書多数。産業競争力会議、中央教育審議会、内閣府「子ども・子育て会議」他複数公務を兼務。金沢工業大学客員教授。


越川慎司氏(日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員)
越川慎司氏 プロフィール写真

(こしかわ しんじ)国内通信会社、米系通信会社を経て、ITベンチャーを起業した後、米・マイクロソフトに入社。年間に地球を5,6周回るほどの海外渡航をこなしながら、プライベートでは母親の介護を抱える日々。時間と場所に制約されない働き方を実践し、ビジネスの成果を挙げながら仕事とプライベートとの両立を実現。


介護により「労働時間が制約される」という実態

最初に小室淑恵氏が登壇し、介護問題の現状を紹介した。「世界の高齢化率推移のグラフを見ると、ある時点から日本が勢いを増してナンバーワンになっています。この数字は、簡単に修正できるものではありません。企業にとって、高齢化による介護の増加は福利厚生だけではカバーできないもの。今後は、介護をしながら働いている人たちにはどんなライフスタイルが必要なのか、という発想が企業に求められます」

2007年に団塊世代の定年退職が始まり、労働人口は減少。残された社員の残業が激増した。定年退職によって3年後は社員数が3分の1に減るという会社や、5年後に社員数が半分になるという会社もある。労働力人口の減少による影響は、生産性低下だけではない。残業を含む過酷労働は、うつ病や過労死増加の懸念をはらんでいるからだ。また、2017年には団塊世代が70代に突入し、介護を必要とする人の割合が跳ね上がることも予想される。多くの人が、仕事と介護の両立を求められる状況になるのだ。

「介護施設が不足しているので、家庭介護の必要性がどんどん高まっていくと思われます。ある大手自動車メーカーの試算では、5年後に社員の5分の1が親の介護を始めるようになるそうです。介護期間は平均10年ですから、その後も累積していきます。別の大手企業では、ある年の介護休業を取った社員の7割が40代、50代の男性だったというデータもあります。介護による時間の制約がある社員が増えていく状況下でも、利益が出せる体制を作っていかなければ、企業が成長し続けていくことはできません。介護と仕事を両立でき、キャリアをあきらめずに働ける仕組みづくりは、企業にとって喫緊の課題と言えるでしょう」

小室淑恵氏 Photo

介護に対して社員が抱くイメージは「4タイプ」

介護に対するイメージを社員に聞くと、四つのタイプに分かれるという。一つ目は「自分の親だけは要介護にならないと思う人」。二つ目は「親が『施設に入る』と言うので、自分に介護問題は影響ないと認識している人」。三つ目は「妻や姉妹が親の介護してくれるので、自分は大丈夫だと考える人」。四つ目は「デイサービスを利用すれば、介護に支障はないと考える人」。どのタイプにも問題があると、小室氏は言う。

「一つ目のタイプには、親がまだ60代だという方が多いようです。しかし、身体の不調は70代になると増えてきます。75歳以上の三人に一人が要介護状態になるというデータを考えると、夫婦二人でその親が四人いる場合は、必ず誰かの介護に直面することになると言っていいでしょう。二つ目のタイプの方に伝えたいのは、特別養護老人ホームへの入所を待つ人が全国で42万人もいるという事実です。施設に入れるのは、だいたい「要介護4」以上の方ですから、3までは居宅介護で、介護の初期段階は家族の手が必要になるのです。三つ目のタイプの方には、共働き家庭が増えている実態と、介護の専門家による『一人の介護に四人体制が理想』という言葉を知ってほしいと思います。介護は長期化するため、専業主婦一人に頼ると『うつ』や『虐待』が生じる心配があります。四つ目のタイプが利用するデイサービスは平均して午後4時半に終わりますが、親が家に帰ってくる時間を考えれば、5時半には帰宅しなければならない。その後を自費ヘルパーで補うには、経済的負担がかなり大きくなります」

どのタイプにも対応できる、前向きに介護に備えるためのポイントがあると、小室氏は言う。「事前準備と情報収集」、そして「親とのコミュニケーション」だ。どういう介護を望んでいるのか、費用をどこから出すのかを、共有しておくのだ。そして、家族と協力しつつ外部サービスを活用するための経済基盤を維持する――つまり「仕事との両立」だ。そのためにも働き方を見直すことが重要だと、小室氏は強調した。

どのようにして「テレワーク」を推進させたのか

次に越川氏は、日本マイクロソフトで取り組んでいる「働き方変革」について解説した。「弊社では、在宅勤務も含めた『テレワーク』を導入しています。時間と場所にとらわれずに働くことができる『働き方変革』は、実際に効果を上げているのはもちろん、社員にも大変好評です。私も家族を介護しながら、年間の約3分の1は海外を飛び回るという働き方を実現できています」

越川氏は、「働き方変革」をどのように推進してきたのか。四つのフレームワークである「ビジョン・企業文化」「オフィス・環境」「制度・ポリシー」「人財雇用・情報共有」と共に、具体的な行動が語られた。

「まず重要なのは経営者のリーダーシップです。経営者を変革者の象徴として社員に根付かせるのです。その際、一番効果的なのは言葉です。対面型の会議や集会のほか、メールやソーシャルネットワークでもしっかり伝えます。それから、環境に慣れさせることです。実際に、全社員がテレワークする期間を設け、その環境を実現するITも整備しました。制度ポリシーは重要ですが、どう活用され結果に出ているのか、ビジネスに貢献しているのかなど、検証が必要です。そこで、数値を使った定量的な成果を経営会議で共有しています」

日本マイクロソフトの本社オフィスでは、社員の席位置が決まっていない。個人PCの持ち込みが可能で、社内PCの持ち出しも許可されている。社内情報へは安全な方法でアクセスができ、どこからでもコミュニケーションが取れる。社内のフリースペースには、ファミレスルームという気軽に社員同士が話し合える場が設けられ、予約なしに使える。また、プライバシーや静かさに考慮された電話会議室は、在宅勤務者とやりとりや本社との会議に活用されているそうだ。

越川慎司氏 Photo

「Skype for Business (スカイプフォービジネス)」により
いかに連携するのか

次に、越川氏自身のデバイスを使ったデモンストレーションが会場で披露された。「部下やメンバーといつでも対面できるわけではなく、またメールだけでは、微妙なニュアンスを伝えたり、迅速な情報共有や意思決定ができないケースがあります。そこで、電話、ビデオ、インスタントメッセージなどが可能なSkype for Businessを積極的に利用しています。全社員10万人以上が統一されたディレクトリ(社内連絡帳、社員録)と連携しているため、検索するとメールや電話などの情報が全部分かります。やり取りの記録が残るので、コンプライアンス面でも安心です」

このシステムはモバイルとも連携されているので、個人所有のスマートフォンで電話を受けることもできる。社内外への発信も可能で、社員は電話代を負担せずに済みます。

「ここで、ビデオ会議をお見せします。相手がオンライン(連絡可能状態)であれば確実に連絡が取れ、緊急会議を行う事もできます。対応OKの返答が来ましたので始めましょう。私が今、マウスをクリックした数はたった3回。ビデオ会議を簡単に開催することができるのです」

会議では、遠方の在住者の採用面接がスムーズになったことや、介護や育児中の社員が10名以上、週に1、2回在宅勤務を行っている人事部内の状況が語られた。

「ビデオ会議でも記録が残りますし、PowerPointやExcel のデータの共有も可能です。全て暗号化されたデバイスの中で、人事評価や異動申請、勤怠などのやりとりが可能です。セキュリティーは万全で、もし紛失しても情報がもれることはありません。情報システムで重要なのは、社員の生産性を高める環境を提供することを前提に、デバイスの紛失や盗難があっても、サイバー攻撃を受けても企業の情報が漏えいしない仕組みをつくることが重要です」

介護と仕事を両立できる環境づくりに、数字や外部を活用

最後に二人によるディスカッションを実施。さらに興味深いテーマが取り上げられた。

小室:働き方を変革する上で、一番のポイントとなることは何でしょうか。

越川:プロジェクトの目標を、会社の成長やビジネスに直結したものにすることです。そうでなければ、プロジェクトは頓挫してしまいがちです。また、活動がブロックされてしまう圧力がないとは限りませんから、経営者自らのリーダーシップも大事です。弊社も、社長が率先してテレワークを推進しています。

小室:トップには「これはビジネスにつながります」など、数字を用いて伝えることが重要ですね。売上の数字ではなく、離職や転職がこれだけ起きる、採用コストがいくら必要になる、といった悪いシナリオの数値化でも構いません。将来介護に携わるはずの人数はすぐに収集できるデータです。そこから介護離職リスク数値を算出して、他企業と比較することや、離職人数とそれを補う採用コストもトップに示しやすい数字だと思います。私がコンサルティングした企業の中にも、トップの旗振りで成功した事例がいくつかあります。

越川:弊社の場合、社長にビデオ会議や外出先からの会議参加を体験してもらい、そのメリットを実感してもらうことから始めました。小室さんのコンサルティングのような、第三者からの権威付けも効果的だと思います。弊社でもテレワーク協会のデータを使いましたし、総務省との話し合いの場も設けました。

小室:内部からの働きかけがうまくいかなかった時に、トップとの対談という形から説得していくお手伝いをしたことがあります。組織に変革を起こす時には、根付いている企業文化を変えていく必要もありますね。

越川:そのためには、慣れさせることが重要だと思います。弊社では全社員一斉に、出社せずにテレワークだけで仕事を行う期間を設け、『テレワークウィーク』として実施しました。最初は不安を感じる声もありましたが、テレワークを体験したことにより、台風の予報が出ると在宅勤務にしたり、交通機関の乱れによる無理な出社をやめたりというケースでの効果も生まれました。

小室:私は仕事の仕方が在宅勤務できるやり方になっていない企業にはまず、「朝夜メール」を提案しています。朝は、自分の仕事内容を15分から30分単位にブレイクダウンし、夜はその振り返りを、それぞれまとめて上司や同僚全員にメールするというものです。仕事の進め方や生産性の見直しができますし、在宅勤務のトライアルにも使えます。

越川:最後に、人事担当の皆さんにとって、テレワークは情報システムの使い方や、トップへの働きかけを考える大変いい機会であることをお伝えしたいと思います。私自身、このような働き方ができるからこそ介護と仕事を両立でき、仕事のやりがいにもなっていると実感しています。社員が安心して親の介護に向き合える労働環境を作っておくことは、会社へのロイヤリティーにつながります。また、介護経験者は時間あたりの生産性が高く、社員にとっては自分のスキルを磨くことにもなります。そのような効果も期待しながら、日本経済全体の活性化につなげていけるよう、今後も活動を続けていきたいと思います。

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