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HRカンファレンストップ > イベントレポート一覧 > 2015年-春-  > 特大会場[D] 企業のさらなる進化を促す“組織開発”について考える ~強い組織が実践する効果的手法とは~

企業のさらなる進化を促す“組織開発”について考える
~強い組織が実践する効果的手法とは~

2015.7.1 掲載
小杉氏・本間氏・有沢氏・曽山氏 Photo

さまざまな人事課題を解決するための手法として、いま「組織開発」が注目されている。組織のパフォーマンス向上は人事にとって重要課題の一つだが、その実現のためには、どのような取り組みが必要なのだろうか。ヤフー、カゴメ、サイバーエージェントの人事責任者が一堂に会し、徹底的に「組織開発」について考えた。

プロフィール
本間浩輔氏(ヤフー株式会社 執行役員 ピープル・デベロップメント統括本部長)
本間浩輔氏 プロフィール写真

(ほんま こうすけ)1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。コンサルタントを経て、後にヤフーに買収されることになる株式会社スポーツ・ナビ ゲーション(サイト名:スポーツ・ナビ、現ワイズ・スポーツ)の創業に参画する。2002年同社が傘下入りした後は、ヤフー・スポーツのプロデューサー、 ピープル・デベロップメント本部長などを経て、2014年より現職。


有沢正人氏(カゴメ株式会社 執行役員経営企画本部人事部長)
有沢正人氏 プロフィール写真

(ありさわ まさと)1984年に協和銀行(現りそな銀行)に入行。 銀行派遣により米国でMBAを取得後、主に人事、経営企画に携わる。2004年にHOYA株式会社に入社。人事担当ディレクターとして全世界のHOYAグループの人事を統括。全世界共通の職務等級制度や評価制度の導入を行う。また委員会設置会社として指名委員会、報酬委員会の事務局長も兼任 グローバルサクセッションプランの導入等を通じて事業部の枠を超えたグローバルな人事制度を構築する。2009年にAIU保険会社に人事担当執行役員として入社。ニューヨークの本社とともに日本独自のジョブグレーディング制度や評価体系を構築する。2012年1月にカゴメ株式会社に特別顧問として入社。 カゴメ株式会社の人事面でのグローバル化の統括責任者となり、全世界共通の人事制度の構築を行っている。2012年10月より現職となり国内だけでなく全世界のカゴメの人事最高責任者となる。


曽山哲人氏(株式会社サイバーエージェント 執行役員 人材開発本部長)
有沢正人氏 プロフィール写真

(そやま てつひと)1974年生まれ。上智大学卒業。1999年サイバーエージェントに入社し、2005年の人事本部設立とともに人事本部長に就任。2008年取締役就任。取締役を6年務め、2014年より執行役員制度「CA18」に選任され現職。著書に『クリエイティブ人事』、『最強のNo.2』など。


小杉俊哉氏(慶應義塾大学SFC 研究所 上席所員/立命館大学大学院テクノロジーマネジメント研究科 客員教授)
小杉俊哉氏 プロフィール写真

(こすぎ としや)早稲田大学法学部卒業。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院修士課程修了。日本電気株式会社、マッキンゼー・アンド・カンパニー インク、ユニデン株式会社人事総務部長、アップルコンピュータ株式会社人事総務本部長を経て独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授を経て現職。2015年4月より、立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科客員教授を兼任。専門は、人事・組織、キャリア・リーダーシップ開発。組織が活性化し、個人が元気によりよく生きるために、組織と個人の両面から支援している。著書に 『起業家のように企業で働く』(クロスメディア・パブリッシング)、『リーダーシップ3.0―カリスマから支援者へ』(祥伝社新書)など。


ヤフー、カゴメ、サイバーエージェントの
人事責任者が考える“組織開発”

小杉 まずは組織開発に関して、皆さん自身のお考えや実践されていることをお聞きしたいと思います。

本間 3年前に人事担当になってすぐに、組織開発専門の部署をつくりました。関係性の質を上げていくためには組織開発が必要だと考えたからです。組織開発は、〈開発〉というよりも、〈発達〉に近いのではないかと考えています。組織も人も、本来は成長したいと思っていて、その前提で介入する。それが私の組織開発の基本です。

有沢 これまでの組織開発は、組織論の中で語られていたように思います。しかし今では、組織開発は人材開発と同義ではないでしょうか。「働く場所が人をつくる」という形にすること。これは研修を行うことやOJTとは違います。組織自体が人材開発をサポートするイメージです。いまカゴメでは、リエンジニアリング、業務改革を大胆に行おうとしていますが、これをきっかけにして組織開発を行おうと考えています。そのため、いろんな知見やスキル、技術を掛け合わせて推進する仕組みを組織開発に入れるよう、活動しています。もう一つ行おうとしているのは、マーケットイン型のソリューション。柔軟かつスピーディーに商品開発を推進する仕組みをつくりたいと思っています。プロダクトアウトがすべて悪だというわけではなく、それをイノベーションに掛け合わせてみようという試みです。両方の視点から見ることができる組織にしていきたい。また、それを人材開発のエンジンにしていきたいと考えています。

曽山 組織開発を「継続的に」「成果が出る」「チームをつくる」という三つのワードにひもづいて実践しています。一番忘れがちなのは継続性ですが、実はこれがもっとも大切です。また私は、組織開発の〈組織〉という言葉よりも〈チーム〉のほうがわかりやすいと思っています。現場に五人程度のいいチームがつくれているかを自問すると、良い組織開発が行えているかどうかがよくわかります。また、米国の人材マネジメントコミュニティーであるSHRMで最近発表された、課題に関するキーワードのトップ3に、組織開発のヒントがあると思っています。1位は〈リーダーシップの開発〉、2位は〈タレントディベロップメント〉。そして3位は初めてトップ3に入った言葉で〈ビヘイビア・アンド・カルチャー〉。これは社員の行動や態度、およびカルチャーを指します。いま組織をつくっていく上で、カルチャーという言葉は欠かせないと思います。

組織開発の成否は「介入のタイミングが8割」

小杉 ヤフーの組織開発グループでは、具体的にどんなことを行っているのですか。

本間浩輔氏 Photo

本間 私は、制度も人材育成も「組織開発」の領域に含まれると考えることができるように思います。それらの活性化を行う部署として、たとえば、組織が労務の担当を置くように、ごく自然に組織開発の部署をつくりました。メンバーには最低限の介入型の組織開発スキルを学んでもらい、困りごとがある組織にメンバーを送り込んでいます。

社内にOD(Organization Development:組織開発)の事例を見ていて感じるのは、組織開発はタイミングが8割ですから、ベストのタイミングで介入し影響を与えることです。現場が困っているとき、私はよく「乾ききったタイミング」と呼びますが、そのタイミングでサポートが入ることで効果的なODができると思います。

そのため、ヤフーでは社外のコンサルタントと協力関係を築くことが難しいかもしれません。なぜなら、適切なタイミングで適切に介入することは、社外からでは難しいからです。外部のコンサルタントと調整している間にタイミングを逃してしまうので、内部に組織開発のグループを作りました。メンバーも半年ほど活動すると成果を上げ、社内からどんどんお呼びがかかりようになりました。将来的には社員の誰もが、組織開発のスキルを持つことが理想です。

小杉 カゴメとサイバーエージェントの組織開発に関する取り組みについても、具体的に教えていただけますか。

有沢 カゴメは日本人の従業員数は1600人で、組織は決して大きいほうではありません。その中で大企業的なしっかりとした組織をつくることに、私は反対でした。カゴメは当然のことながら、消費者にどう受け入れてもらえるかを考えなければいけない。すると、マーケティング的な要素を組織に入れないといけないわけです。しかし、事業部別とか機能別という組織では、どうしても入りにくいんですね。それで当社は機能別の組織なのです。

有沢正人氏 Photo

曽山さんが「継続的に成果を上げる」と言われましたが、これはコンピテンシーのことですね。それには私も大賛成で、組織のコンピテンシーを作りたいと思って活動しています。今もコンサルタントと一緒に取り組んでいますが、いつも話すのはこれまでの組織論から脱却することです。例えば、営業しかできないという人ではなくて、顧客がある以上は、マーケティング的な要素も持っていてほしい。組織横断的な動きができる人を育てようとすれば、任せるばかりではダメです。そのためにも、マーケティングという知識を身につけさせることは重要です。我々が今やりたいのは、メーカーという枠を超えて、ソリューションを顧客に提供できる企業体にすることです。そして、ここで重要なのは、トップにその思いがなければ前に進まないことです。

地道に個人事例を増やし、企業風土へと育てる

曽山 私が人事に異動して最初に行ったのは、「言行一致」を徹底することでした。経営でバリューや理念などを掲げていますが、その一つひとつができているのか、私は社員にアンケートを取りました。例えば社是に「挑戦した結果の敗者には、セカンドチャンスを提供する」とありましたが、できていると答えた人は20%でした。組織開発では、経営陣の考えていることができているかどうかをチェックすることが、もっとも大切だと思います。経営陣がチェックしていなければ、人事がそれをサポートするのです。

当時はたくさん新規事業を立ち上げ、たくさん失敗し、たくさん人が辞めるという会社でした。そこで私は撤退しそうだと感じた部署があったら、すぐにそのメンバーとの個別面談を行いました。転職しそうな雰囲気の人がいれば「次はこの部署があるよ」と説得し、退職させませんでした。異動後も月1回は会って、フォローしました。すると、そのうち成功する人や業績を上げる人が出てくるようになりました。失敗した人の成功事例は、イントラネットやブログで紹介。事例がどんどん増えていくようになり、これが企業カルチャーづくりの第一歩となりました。

曽山哲人氏 Photo

小杉 価値観の共有はつい押しつけがちになりますから、意識調査から言行一致させるのはすごくいい方法ですね。しかし、なぜそこから始めようと思ったのですか。

曽山 私は営業の責任者から人事部長に異動しましたが、そのとき人事には不満を持っていました。経営へのインパクトをつくれていなかったんです。そこで自分はインパクトのある仕事がしたいと思い、経営陣の「やりたい」という言葉をそのまま実現することにしました。新規事業の失敗で仲間が大量に辞めることには、自分でもフラストレーションを感じていましたので、まずはそこに手を付けました。

小杉 本間さんは人事を担当されて3年だそうですが、それまでは人事をどのように見ていましたか。

本間 人事に異動する前は関連会社の社長をしていたので、人事での仕事はそのときの経験がベースになっています。私は人事歴が長い人は、制度づくりにこだわり過ぎてしまう傾向があると感じていました。社長だった頃は「人事とは手段」と見ていましたし、正直、今の企業の目標のために組織をどう変えるのかを人事に考えてほしい、と思っていました。

小杉 私も人事責任者の経験がありますが、アップル社にいたときは日本法人の社長と横並びのポジションで、いつも「どうしたらこの会社をよくできるか」と重い責任を感じていました。結果、二人の社長に辞めてもらったという経験もしています。

小杉俊哉氏 Photo

有沢 社長と人事が近いという会社も多いですが、近ければ近いほど問題が生じることもあります。そこでは、人事としての覚悟を社長に示すことが大事だと思います。行動で示すことが大切ですね。

組織開発の最終目標は「経営人材」をつくること

小杉 最後に、会場の人事の皆さんにアドバイスをお願いします。

曽山 組織開発の最初のステップは個別事例をつくることです。次は制度。その制度が回り出すとそれが風土になる。私も社内で制度をつくるときは「どんな風土を作りたいんだっけ」と確認するようにしています。

有沢 組織開発の最終目標は、経営人材をつくることではないかと思います。ただし社内にそのような人材は少ない。だからこそ、企業のトップとどんな人材がほしいのかを話しておくべきだと思います。それによって人事の方向性も決まります。

本間 組織開発ではありとあらゆる手段を用いて、組織をよくすることに尽力する。そして手段を目的化させずに、組織として成果を出すことが重要になります。

小杉 今日お話をうかがって、組織開発は決まった定義がなく、その会社ごとにつくっていくものと改めて思いました。そして、その中での課題は、コミュニケーションに尽きると感じています。皆さん、貴重なお話をありがとうございました。

パネルセッションの様子 Photo
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