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4. 具体的なワーク・ライフ・バランス支援の取り組み

具体的なワーク・ライフ・バランス支援の取り組み

育児とワーク・ライフ・バランス

ワーク・ライフ・バランスという考え方は、女性の子育てと仕事の両立支援策として生まれた。まずは、代表的な事例として「育児とワーク・ライフ・バランス支援」の具体策を見ていこう。育児を支援するための制度は、法律(育児・介護休業法)で定められているものから企業独自のものまで、さまざまなバリエーションがある。

1)育児休業制度

家族で子育て

法定では、子供が1歳に達するまでの1年間休業することができる。一定の条件を満たせば1歳6ヵ月まで延長することも可能だ。たとえば、保育所に入所を希望しているが入所できない場合などがこれにあたる。 父母ともに育児休業を取得する場合は、子供が1歳2ヵ月に達するまで取得することができる「パパ・ママ育休プラス」という制度もある。これは母親が職場に復帰するタイミングで、父親が育休を取得して育児を分担し、母親の負担を減らすことができるようにするという配慮から生まれた制度だ。

2)事業所内保育所の設置

事業所内に保育所があれば、育児休業を早めに切り上げて復職する従業員を増やすことができる。

3)保育料、延長保育料、ベビーシッター代の補助など(経済的支援)

日本では保育料の高さがネックとなって、職場に復帰するよりも自分で子供の面倒をみることを選択する女性が少なくない。経済的な補助があれば、早期に復職できる可能性が高まるため、企業が独自に行っている場合もある。

4)復職支援の取り組み

産休・育休期間中に職場から離れることで、復職の際に不安を感じる従業員は少なくない。そのため、スムーズな復職支援はワーク・ライフ・バランス支援における重要な課題となっている。具体的には、社内報、社内イントラネット、社内SNSなどを通じて、在宅環境であっても職場の情報に接することができるように工夫するケースが多い。

5)在宅勤務制度

IT技術の進展により、在宅勤務が可能な業務が増えている。在宅勤務制度を整備することで、従業員が早期に復職したり、育休終了後も無理なく働いたりすることが可能になる。

6)サテライトオフィスの設置

ある程度の規模の企業にしかできないが、居住地や保育所の近くにオフィスを設けることで、遠距離通勤や保育所の送り迎えなどによる負担を減らすことができる。

7)時差出勤・フレックスタイム制度

育休明けの大きな負担となるのが、保育所への送り迎えや子どもの急病などだ。勤務時間を柔軟に設定すれば、無理なく復職することができる。

8)短時間勤務

法律では、3歳までの子どもを養育する労働者は、短時間勤務(1日原則6時間)を選択することができると定められている。勤務形態には、さまざまなパターンがある。また、企業には、時間外労働や所定外労働の制限、転勤への配慮なども義務づけられている。

介護とワーク・ライフ・バランス

車いす

「育児・介護休業法」という法律があるように、ワーク・ライフ・バランス支援の対象として、育児とともに重視されているのが「介護」だ。

2005年には、世帯主が75歳以上の世帯は全体の約11%だったが、2020年には18%以上、2030年には22%以上に達すると予測されている。このように介護を必要とする親の世代が急速に増えているのに対して、介護する側の家族は、少子化の進行や単身者の増加によって減少している。今後は、ほとんどの労働者世帯に介護を必要とする親がいるという状況になることも、十分に考えられるのだ。

しかし、多くの人は「介護」と聞いても、「自分の親は要介護状態にはならない」「自分が介護することはない」などと考えてしまう傾向にある。だが、「75歳以上の高齢者の約3割は、要介護状態にある」(※1)、「介護施設への入所を待っている人が全国に42万人もいる」(※2)などのデータもある。団塊世代が一斉に70歳になる2017年には、さらに介護施設が不足し、その子供たちの多くが家庭内で介護を行なう可能性も出てくるだろう。企業は、社員が介護の重要性を認識し、もしもの時のために備えができているよう、積極的に情報を提供していかなければならない。

※1=厚生労働省「介護保険事業状況報告」(平成22年7月暫定版)より
※2=厚生労働省 平成22年1月15日発表「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(都道府県別の状況)より

介護には、育児とは異なる、三つのポイントがある。

【介護のポイント】
  1. 企業の中核人材である、管理職層が介護を行うことが多い。
  2. 育児は子供の成長によって手がかからなくなる時期がくるが、介護は終わりが見えない。
  3. 終わりが見えないために「休業」ではなく、「両立」を前提とした支援が必要になる。

親の介護に従事する年代には管理職を含めた中核人材が多く、もし退職となれば企業にとって大きな問題。また、社員自身も退職すれば所得が減少するほか、介護の必要がなくなった場合には再就職が難しいなど、さまざまな問題が考えられる。

また、介護期間は平均45.5ヵ月(3年10ヵ月)で、さらに長期化が進んでいる (※3)。期間を予測できないため、育児のようにある程度の期間仕事を休業して専念するというものではなく、仕事と介護を両立していくことがカギになる。企業には、社員が仕事と介護を両立するためのサポート体制を整えていかなければならない。

※3=(財)生命保険文化センター「生活保障に関する調査」より

介護を支援するさまざまな取り組み・制度

介護イメージ

団塊世代の一斉退職による「2007年問題」の影響などもあって、ここ数年、企業は労働力の確保などを目的に、女性が育児と仕事を両立できるための制度改革を続けてきた。しかし、介護に関しては、支援制度の整備が進んでいる企業がまだ少ないのが実状だ。 まずは、両立できる職場の風土づくり、企業として支援を行っていくというメッセージの発信、両立のためのセミナーの実施などの土台づくりからはじめ、制度や規定を整備していく必要があるだろう。

1)情報の提供

社員が自分自身も介護に関わる可能性があると認識できるように、情報を提供していく必要がある。介護は長期化することや、男性も直面することといった基本的な考え方のほか、介護にかかる費用や、自治体で受けられるサービスや行政による助成、入居施設の探し方など、介護を行っていく上で必要な情報を伝えていく。

2)支援制度の整備

介護に関する制度自体が、社員に知られていない可能性もあるので、それを伝えていくことが重要である。そのためには、介護に関する制度がきちんと利用されているか、誰もが使いやすい状況にあるかなどを確認しなければならない。また、自宅での介護や遠距離介護、介護施設の利用など、社員によって介護のスタイルは多様であり、形態に合わせた柔軟な制度設計が重要である。

●介護休業制度
法定では、対象家族一人につき、常時介護を必要とする状態になるごとに1回、通算で93日までの休業が保証されている。

●介護休暇制度
法定では、要介護の対象家族一人につき年5日、二人以上の場合は年10日を上限として介護休暇の付与が企業に義務づけられている。

その他にも、育児休業と同様、以下の制度の導入が考えられる。

●復職支援
●在宅勤務
●勤務地の限定
●サテライトオフィス設置
●時差出勤・フレックスタイム制度・短時間勤務
●介護費用の援助措置

上記のようなさまざまな施策によって、社員が前向きに介護と向き合い、いざという時も一人で抱え込むことのないようにすること、また、介護によって時間制約が生じても、仕事で成果を上げられるようにすることが重要である。


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