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「働き方改革」推進に向けての実務(6)育児・介護と仕事の両立

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(1)育児と仕事の両立~目的と課題

●「働き方改革」における育児と仕事の両立の位置づけ

ワーク・ライフ・バランスとは何か?

将来に向けての労働力確保が大きな課題となる中、女性の労働参加が重要視され、家事や育児の負担を軽減するために男性の育児参画に関する施策が検討されている。「働き方改革」の中でも「育児」が一つのキーワードとなっており、女性の活躍推進や育児の分野では、以下のような法律が施行された。


【女性活躍推進法の新設】

2016年4月1日、10年間の時限立法として施行された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」は、女性の職業生活における活躍を推進するため、常時雇用する労働者が301人以上の企業に、右記のような内容を義務付けた(300人以下の事業主については努力義務)。
  1. 自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
  2. 状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定、社内周知、公表
  3. 行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
  4. 女性の活躍に関する情報の公表

「女性活躍推進法」では、2で策定した行動計画の目標の一つ以上を数値目標とした上で、2年から5年の範囲以内で実施する。また、4の情報公開については、年1回以上その数値を検証し、更新する必要があるので、注意が必要だ。

【育児介護休業法の改正】

2017年1月1日に施行された「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)」では、育児に関して主に、右記のような改正を行った。
  1. 有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和
    正社員と比べると、パート・派遣など非正規雇用者の育児休業の取得率が低い現状から、有期契約のパートなどもほとんどの場合で、育児休業を取得できるなどの改正が行われた。
  2. 子の看護休暇の取得単位の柔軟化
    従来、一日単位で取得させればよかった子の看護休暇を半日単位で取得させることとし、より柔軟に利用しやすくする改正が行われた。
  3. マタハラ・パワハラなどの防止措置義務の新設
    上司・同僚からの妊娠・出産、育児休業などを理由とする嫌がらせなど(マタハラ・パワハラ)を防止する措置を講ずることが義務付けされた。

なお、今回の改正に際して、2017年1月20日現在、現行の育児休業は原則1歳まで(特例で1歳6ヵ月まで)という内容について、原則は変えず、特例で2歳までとする改正案が示されるなど、今後の改正の動向も注目していく必要がある。

(2)具体的な実務の考え方

●育児を支援するための具体的な取り組み

育児を支援するための制度は、法律で定められているもの以外にも、以下に示したような企業独自のものまで、さまざまなバリエーションがある。

【育児を支援するための取り組み(例)】

事業所内保育所の設置 事業所内に保育所があれば、育児休業を早めに切り上げて復職する従業員を増やすことができる。
経済的支援 保育料の高さがネックとなって、職場に復帰するよりも自分で子供の面倒をみることを選択する女性が少なくない。保育料、延長保育料、ベビーシッター代の補助などの経済的なサポートがあれば、早期に復職できる可能性が高まる。
復職支援 産休・育休期間中に職場から離れることで、復職の際に不安を感じる従業員は少なくない。そのため、スムーズな復職支援は重要な課題となっている。社内報、社内イントラネット、社内SNSなどを通じて、在宅環境であっても職場の情報に接することができるよう工夫するケースが多い。
在宅勤務制度 IT技術の進展により、在宅勤務が可能な業務が増えている。在宅勤務制度を整備することによって、従業員が早期に復職したり、育休終了後も無理なく働いたりすることが可能になる。
サテライトオフィス 居住地や保育所の近くにオフィスを設けることで、遠距離通勤や保育所の送り迎えなどによる負担を減らすことができる。
時差出勤・フレックスタイム制 育休明けの大きな負担となるのが、保育所への送り迎えや子どもの急病など。時差出勤・フレックスタイム制などで、勤務時間を柔軟に設定すれば、無理なく復職することができる。
短時間勤務 3歳までの子どもを養育する労働者は、「育児・介護休業法」の下、短時間勤務(1日原則6時間)を選択することができる。

(3)介護と仕事の両立

●「働き方改革」における介護と仕事の両立の位置づけ

高齢化の進行とともに、介護が必要な人が増えているが、介護する側の家族は、少子化の進行や単身者の増加によって減少している。今後の労働力確保にあたっては、現在の働き手に仕事と介護を両立してもらうことが重要であり、2020年には介護離職ゼロを目指すという方針も打ち出されている。

そのような中、働き方改革に向けて、2017年1月の「改正育児・介護休業法」でも、介護に関する改正が施行された。前回の改正では育児が中心だったのに対し、今回は介護が中心で、育児と足並みを揃えるように「働きながら介護を行う」という内容を目指した制度上の改正が行われた。また、育児で述べた「マタハラ・パワハラなどの防止措置義務」も育児と同様、介護休業などの制度利用に関するハラスメント防止措置義務の対応が必要となっている。そのほか、介護される高齢者などが利用する介護保険は財政がひっ迫してきていることから、所得に応じた負担という考え方にもとづく高所得者の自己負担割合の引き上げや、低所得者の保険料の負担軽減などが行われた。また、介護施設への入所基準の引き上げなど、地域での在宅介護を中心とした「社会全体で介護を支え合う」という方向で改正が行われた。

(4)具体的な実務の考え方

●介護を支援するための具体的な取り組み

「育児・介護休業法」では、要介護状態にある対象家族一人につき、最大93日まで介護休業を取得できると定めている。ただ各種統計によると、平均的な介護期間は「4年半」と言われており、あきらかに日数が足りない。つまり、この93日は介護問題の解決を求めているのではなく、仕事と介護を両立させるための“準備期間”と想定していると考えられる。そのため、介護休業期間の延長は企業次第であり、「最大1年間」「要介護者一人につき183日」などと定めている企業もある。

いずれにしても、介護に関しては、支援制度の整備が進んでいる企業がまだ少ないのが実状。 まずは、両立できる職場の風土作り、企業として支援を行っていくというメッセージの発信、両立のためのセミナーの実施など、土台作りから始め、制度や規定を整備していく必要がある。

【介護を支援するための取り組み(例)】

情報提供 企業は、社員が自分自身も介護にかかわる可能性があると認識できるよう、情報を提供する必要がある。介護は長期化する、男性も直面するといった基本的な考え方のほか、介護にかかる費用や、自治体で受けられるサービスや行政による助成、入居施設の探し方など、介護を行っていく上で必要な情報を伝えていくことが大切だ。
支援制度の整備 介護に関する制度が社員に知られていない可能性もあるため、その内容を的確に伝える。そのためには、介護に関する制度がきちんと利用されているか、誰もが使いやすい状況にあるかなどをまず、確認しなければならない。さらに自宅での介護や遠距離介護、介護施設の利用など、社員によって介護のスタイルは多様であるため、形態に合わせた柔軟な制度設計が重要だ。
利用条件の緩和 介護を行っていると、急遽病院へ付き添うなど、仕事を休まざるを得ない状態になることがある。そのため、ある程度まとまって介護休業を取得するよりも、仕事とバランスを取りながら、必要なタイミングで休みを取得したいと希望する人が少なくない。「半日や時間単位での利用も可能とする」「法定以上の日数を付与する」「無給ではなく、有給とする」「対象家族の『2週間以上の要介護状態』の要件を外す」など、法定条件を上回る(緩和する)ルールを設けることが有効だ。
短時間勤務制度 現状の法律では、介護休業と短時間勤務制度の期間を合わせて93日と定めているが、2017年1月から施行される改正法では、介護休業とは別に、短時間勤務制度を利用開始から3年の間で2回以上利用することが可能になった。これを踏まえ、それぞれ93日とすることや、あるいはそれ以上に定めることも有効だ。一般的に、従業員から申し出のあった期間を短時間勤務とするケースが多いが、1週間のうち特定の曜日にだけ短時間勤務を利用できることが可能であれば、家族で介護の当番制を取っている従業員も利用しやすく、週間のケアプランを立てる際にも大変便利である。

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