ここでは、働き方改革をどのように進めていけばいいのか、そのポイントを解説する。
一般的に「働き方改革」を行う際のテーマは、「働く環境・ツール」「働く制度・ルール」そして「働く意識・風土」の三つが想定される。また、働き方改革は何のために進めるのか、企業経営のビジョン・ミッションとどう関連するのかなど、その目的を明確にし、最終的なゴールを強く意識しながら、活動を展開していくことが重要である。
【働き方改革の三つのテーマ】
働く環境・ツール | オフィスのあり方をどうするのかという、働く環境に関する領域。例えば、テレワークを進めて、自宅や社外で働くことを可能にするのか。オフィスで働くのであれば、人員をどういう配置とするのか。執務スペースの使い方をするのか。どういうICTツールを用意するのかなど、これからのオフィス環境創造の視点から、設計上・運用上の課題を検討し、実現する。 |
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働く制度・ルール | 働く環境が変わることにより、人事制度など、就労する上でのルールから、職場で発生する仕事の進め方に関するルールなど、あらゆる働き方のルールについて、設計上・運用上の課題を検討し、実現する。 |
働く意識・風土 | 働く環境・ツール、働く制度・ルールの変革を有効に活かすため、社員の意識のベクトル・レベルを統一する視点から、組織風土的な課題を検討し、意識改革を実現する。 |
では、「働き方改革」をどのように進めていけばいいのか。働き方を見直し、成果に結び付けていくために、以下の5点がポイントとなる。
【働き方改革への考え方・ポイント】
トップの明確な方針(指針) | まず、トップが「働き方改革」という抽象的な達成目標に対する明確な方針(指針)を示すこと。その際、自社特有の課題を組み込み、会社・社員にどのようになってほしいのか、最終的のどのような競争力に結びつけるかなど、具体的に表現に落とし込み、全社員が共感できる方針(指針)を明示することが大切だ。 |
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働き方実態の見える化 | 基本方針(指針)を実現するために、長時間労働や年休取得など、自社の働き方の実態を具体的な数字として把握し、見える化することによって、組織内で共有・評価を行う。そこから、さまざまな問題点・課題をあきらかにしていく。 |
施策検討 | 働き方の見直し施策を、各職場で検討する。例えば、長時間労働の削減を考えた場合、職場内コミュニケーション(報連相)の方法から人事労務制度の改定まで、さまざまな対応が考えられる。これら施策を、各職場に埋没させず、全社的に共有・展開していく。 |
体制づくり | 基本方針(指針)やノウハウ・ツールに関して、職場の垣根を越えて浸透させる機能・役割を担う体制を作る。また、浸透させるだけにとどまらず、各職場の改善支援や指導などに踏み込んで、活動する。 |
意識改革 | 職場に新しい働き方を理解・浸透させ、意識改革をうながす。あわせて、改革活動のプロセスと結果を、働き方改革担当部門(人事部門、経営企画部門、専門プロジェクトなど)が適正に評価、フィードバックする。これによって、現場管理職の自律的な改革活動の促進と定着を図る。 |
実際の働き方改革は、先に示した五つの考え方・ポイントの下、次のようなステップを踏んで行うのうが効率的である。
【ステップ1:働き方改革のグランドデザイン(方向性)】
全社の取り組み施策や課題などのヒアリング、実態把握 |
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目指したい働き方の設定、グランドデザイン、テーマ設定 | |
テーマの詳細検討に向けての役割設定(職制テーマ、共通テーマ) |
【ステップ2:テーマの詳細検討】
テーマ別の詳細検討 |
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テスト・検証 | |
テーマ確定、実行計画作り、推進体制の検討 |
【ステップ3:社内での活動推進】
社内での各テーマ推進 |
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効果測定、活動状況の評価 | |
定期的な情報発信 |
積極的に「働き方改革」に取り組んでいる企業では、トップ自らが育児や介護などに直面した実体験がきっかけとなったというケースや、当初は働き方改革に疑念を持っていたトップが、人事や実務担当者からの粘り強い説得や、モデル部門での成果を目のあたりにして、自らリーダーシップを発揮し、推進に注力している例もある。働き方改革を強力に推進していくには、トップ以下、改革推進部門の意識改革と覚悟が問われるのだ。
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