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ワーク・ライフ・バランス推進のポイント

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次に、ワーク・ライフ・バランスを推進していく上で、ポイントとなる事項を紹介する。

(1)現場「管理職」の持つ役割の重要性

●現場の管理職の意識改革、行動改革が不可欠

ワーク・ライフ・バランス推進のポイント

ワーク・ライフ・バランスを推進し、従業員のモチベーションや組織への帰属意識を高め、業績・生産性向上に結びつけていくためには、ワーク・ライフ・バランスを経営全体の課題として位置づけ、積極的に推進体制の整備を行う必要がある。その際にカギを握るのが、現場の管理職の存在だ。

ところが、時間や勤務場所に柔軟な制度が取り入れられると、現場のマネジメントはより複雑・煩雑となる。「職場全体の成果や生産性向上には直結しないのではないか」と考える管理職も多く、ワーク・ライフ・バランスに対する理解はなかなか深まらない。

職場で業務を管理し、マネジメントを行うのは管理職である。当然、ワーク・ライフ・バランスを実現するうえで果たす役割は非常に大きい。管理職がその重要性を理解し、積極的に取り組まなければ、組織全体でワーク・ライフ・バランスを実現させることは難しい。

そのためには、部下のみならず、管理職自身のワーク・ライフ・バランスを考えることが重要だが、現場の管理・監督にあたる管理職は、労働時間・休憩・休日などに関する「労働基準法」の適用から除外されるため、自身が過重な労働環境下に置かれることが多い。まずはプレイングマネジャーからの脱却を図り、部下に任せることと自分でやるべきことを明確にして業務を効率化し、自ら率先してワーク・ライフ・バランスを推進していく姿勢と行動を示す必要がある。

(2)「労働時間削減」への取り組み

●「職場の生産性の維持・向上」の視点を持ち、実態に合わせて対応する

ワーク・ライフ・バランスを進めていく上で、常に問題となるのが「長時間労働」だ。長時間労働が起こる背景には、所定の労働時間内では処理できない仕事量や、仕事の性格上、所定外でなければできない仕事、人員削減による人手不足など、さまざまな要因が絡み合っている。また、業種・業態によって理由が異なることも多く、長時間労働削減への取り組みは一様ではない。各々の組織・職場が、実態に合わせて対応していくことがポイントになるのだ。よく見られる取り組みとしては、「無駄な仕事の排除・付帯業務の削減」「36協定などルールの徹底・遵守」「管理職に対する時間管理意識の啓発」「管理職の評価基準の変更(例:残業の多い部署の管理職は評価を低くする)」「柔軟な労働時間制度の導入」などがある。

一方で、問題も起きている。時間外労働を削減したことにより生じる、「管理職の仕事の負荷が高まる」「人手不足なのに、多くの人員が必要になる」「納期の遅れなど、仕事の進捗に支障が出る」「自宅に仕事を持ち帰るケースが増える」「仕事の品質(完成度など)に支障が出る」といったケースである。そのためにも、労働時間削減に向けた取り組みは、「業務配分の見直し」「仕事量の平準化」「仕事の進め方の見直し」といった「職場の生産性の維持・向上」の視点を持った上で、進めていくことが重要だ。

(3)多様性を活かす「ダイバーシティ・マネジメント」

●多様性を活かすために、ワーク・ライフ・バランスの視点が不可欠

ユーザーの志向やライフスタイルの多様化にともない、商品開発やサービス形態も多様化が進んでいる。多様化する顧客ニーズに対応していくためには、多様な価値観を持った人々の発想を活かすことのできる組織が不可欠。そのため、近年は多様性を活かす「ダイバーシティ・マネジメント」が注目を集めている。

ダイバーシティ・マネジメントとは、従業員一人ひとりの多様性を活かし、創造性やモチベーションを高めつつ、マーケットの変化に対して柔軟に対応できる組織への変革を目指し、組織全体のパフォーマンス向上へとつなげていくもの。その根底には、個人のみならず、組織にとっても「多様性の受容は大きなプラスになる」という考え方が存在する。既存の価値観だけではなく、多様な視点が加わることによって、長期的に企業競争力を支える組織力が向上していくのだ。

このような背景から、多様性を尊重する職場環境を促進し、チームワークを高めることでプラス効果を作り出していくために、仕事と生活の調和の実現を目指したワーク・ライフ・バランスの視点が必要となってきたのである。

【組織マネジメントの視点から、ダイバーシティとして考えられる要因】

「属性」の違い
  • ジェンダー(性別)の違い ~ 男性 ⇔ 女性
  • 身体状況の違い ~ 健常者 ⇔ 障がい者
  • 人種、国籍、民族、宗教の違い
  • 世代の違い ~ 高齢者 ⇔ 若者
  • 学歴の違い ~ 高卒 ⇔ 大卒 など
「働く条件」の多様性
  • 働き方の多様性 ~ 短時間勤務、在宅勤務、フレックスタイム、育児休業・介護休業の取得 など
  • 雇用形態の多様性 ~ 正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト・パート社員、再雇用制度 など
  • 働く場所の多様性 ~ 在宅勤務、テレワーク、サテライトオフィス、地域限定社員 など
  • その他 ~ 副業・兼業、ボランティア・地域活動 など

(4)長期的視点からの「キャリア支援」

●ワークとライフのバランスは、仕事上の立場、年齢・家族構成、ライフステージによって異なる

一般的に、従業員の「ワーク」と「ライフ」は、以下のような要素で構成される。

【「ライフ」「ワーク」を構成する要素(例)】

ワーク 職場、仕事(職務)、立場(役割)、専門性、働き方、実績、能力開発、収入、人脈(ネットワーク) など
ライフ 家族、住居、子ども(子育て・教育)、介護、健康、趣味、友人・知人、社会・地域活動、自己啓発 など

また、従業員一人ひとりのワーク・ライフ・バランスを考えたとき、例えば以下に示したような課題が想定される。

【従業員の抱える課題(例)】

  • 制度があっても、使いづらい。マネジメントにうまく生かされていない
  • 従業員の事情(年齢・家族構成・価値観など)が多様なため、組織として、一人ひとりが満足いくように対応してもらえない
  • 介護など、従業員が抱える問題は増えている一方、上司・同僚に相談しづらく、悩みを一人で抱えがちになる
  • 女性の場合、産休などでキャリアの中断があるため、長期的なキャリア形成を考えるのが難しい

このような課題を抱えたまま仕事を続けると、ワーク・ライフ・バランスに関する希望と現実の間に、徐々に「ギャップ」が生じてくる。

【ワーク・ライフ・バランスの希望と現実の「ギャップ」(例)】

  • 仕事に忙殺され、プライベートにかかわる時間がない
  • 家庭を持つと、仕事と生活のバランスが変わる
  • キャリアを積み重ね、役割や立場が変わってくると、仕事の比重が高くなる
  • 介護をしなくてはならなくなったが、仕事上の責任や周囲への迷惑を考えると、現実的にはできない
  • キャリアとライフの両方がうまくいかないと、満足感が得られない

ポイントは、一人ひとりの「ワーク」と「ライフ」の構成要素が、社内におけるポジション(仕事上の立場)、年齢や家族構成、ライフステージなどによって異なること。短期におけるギャップ(問題)があっても、長期的な視点で対応を講じることによって、解決されること(納得のいくこと)も少なくない。このような長期的視点からのキャリア支援を考えた場合、個々人の「ワーク」と「ライフ」の満足度を高めるために、会社(人事)として必要なサポートと従業員側の対応には、以下のような事項が想定される。

【会社として必要なサポートと従業員の対応(例)】

従業員の現状・ニーズ(希望)の把握
  • 従業員の意識調査、満足度調査、労働実態調査などを行って、現状(問題・課題、ニーズ)の把握を行う。その結果を踏まえて、経営層やマネジメント層への理解促進、意識改革をうながす
  • 従業員のニーズ(希望)を把握するために、ヒアリング(面談)の機会を設ける
  • 現在行っている制度・施策の利用状況をチェックし、合わせて職場風土の課題をあきらかにする
従業員に向けての対応(支援)
  • ワーク・ライフ・バランス関連制度・施策の理解と利用推進を深める啓蒙(教育)を行う
  • 制度・施策の詳細、利用方法、運営方法などについて、管理職・従業員に周知徹底する
  • 現時点で不足している制度・施策を整備する
  • 「キャリア研修」を節目に実施し、若年時からのキャリア意識を醸成する
  • 長時間労働の健康への影響などの意識づけを、定期的に実施する
従業員みずからの対応
  • 長期的視野で、キャリアビジョンをえがく
  • 仕事を属人化させないで、共有できるよう心がける
  • 長時間労働の削減のため、業務の効率化を図る

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