4.研修の準備と段取り

研修の実施に当たり、事前準備や研修当日の運営において行うべきことは多い。これら研修の準備と段取りについて、ポイントを整理してみたい。
研修の準備に当たって
社内で研修を行う場合、人事部門などの「研修事務局」は、以下のような事前準備と確認を行う。
- 研修プログラムの作成、内容チェック
- 研修会場の予約
- 講師の依頼
- 研修対象者への案内、参加予定の取りまとめ
- 研修テキスト・資料の作成手配、内容チェック
- 会場設営、使用機材・備品の準備
- 社外業者への発注業務
- 他部門との関連業務(共催等)
研修実施に向けての段取り
1)研修プログラムの作成

当日の研修プログラムを作成するに際して、まず研修は何のために行うのかという、共通となる考え方を明確にすることが必要である。何より、目的についてしっかりと押さえていなければ、手段や手順などを考えることはできないからだ。
次に、研修を通じて、どのレベルにまで持っていくのかということがある。それには「3.研修計画の作り方」にも記したように、目標と現状のギャップを把握しておくことである。そして、目標と現状のギャップから、それを埋めるためにはどういうことが必要かを考えていく。これが、伝えるべき内容である。その際、押さえておかなくてはならないのが、「使える時間はどのくらい」「受講者のレベルはどのくらいなのか」である。このように伝えるべき内容が明確になれば、あとはそれに相応しい手段を選択していけばいい話である。
このようにして、研修プログラムを一目見ただけで、目的と、どういう対象者に対して、どのようなことを行うかを読み取れるものとしていく。
2)研修プログラムのチェック
出来上がった研修プログラムは、必ずチェックを行う。研修の狙いに合っているか、受講者のレベルと合っているかなどを確認するとともに、全体的なバランスのチェックを行う。例えば、全体的なバランスを見る際、一つのセッションが他のセッションより極端に長すぎるような場合、その理由は何なのか、プログラム全体の流れに無理を感じさせるところはないか、といった視点でチェックをしていく。
- □ 研修で何を伝えるか、その目的と内容がはっきりとしているか
- □ 研修の狙いとスケジュールに齟齬はないか
- □ 受講者のレベルとプログラム内容がマッチしたものになっているか
- □ 設定したタイムスケジュールに無理はないか(ある程度の余裕はあるか)
- □ 研修全体の流れに、変化・メリハリは付いているか
- □ 研修中における受講者の変化(態度変容)を想定しているか
- □ 突発事項や研修のスケジュール変更に、対応できるようになっているか
- □ 研修のアウトプット、成果が何であるかを想定しているか
- □ 研修テキストの目的(何のため)・範囲(どこまで使う)を的確に押さているか
- □ 研修テキストの内容が、研修のテーマと合っているかどうか確認したか
- □ 講師への原稿依頼は済んだか、修正等の確認をしたか
- □ 誤字・脱字のチェックはしたか、不適切な用語等はチェックしたか
- □ 文字・図表は見やすく、読みやすい内容となっているか
- □ 表現(ですます調、である調)は統一されているか
- □ 必要な部分に、記入欄を設けてあるか
- □ 印刷(コピー)する部数のチェックはしたか
事前準備のポイント
1)マニュアルの作成
前準備のポイントとして、会場をどうするかがある。その際、研修の狙い、進め方に合った会場を見つけることが大切である。また、事前資料を受講者に配布する、参加案内を通知する、研修会場の案内を送付する、などについても忘れないようにする。そして、当日までに研修事務局用のマニュアルを作成しておく。
マニュアルは、その研修独自のものを前もって作成しておき、当日の進行によって、修正を加えていくのがよい。マニュアルの軸となるのは「時間」であり、これを補足するのが「研修の項目」である。この時間と研修の項目を軸としながら、研修事務局としてどのような対応を取るかを検討し、その際に用意しなければならないものについて確認しておくようにしていく。
2)参加意欲を高める工夫

研修に主体的・能動的に関わってもらうために、参加意欲を高める工夫が必要である。参加者の中には、「なぜ、こんなことをやらなくてはいけないのか」と不満を抱いている人もいる。これらを払拭するために、例えば、「今回の研修では、さまざまな体験や話し合いを通して、自分自身の経験を整理したり、新しい発見ができたりするような研修にしていきたいと考えています。講師からの話を一方的に聞くのではなく、皆さんに実際に参加してもらい、積極的に対話をしていくような研修となります」といったように、研修の特徴と開催目的の説明を行い、参加への動機づけを図るようにする。
研修というのは、従業員にとって会社から押し付けられたような印象を持たれがちである。従業員に自ら学ぶという姿勢を持ち続けてもらうためにも、研修プログラムを従業員にとって魅力的なもの、そして自分のためのもとして認識してもらう必要がある。そのためにも、参加前の告知の持つ意味は大きい。内容を理解してもらうためのメッセージを事前に用意して、臨むことが大切である。そうすることで、従業員が自分自身にとって価値を見いだせるものとなっていくだろう。