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社員研修・人材育成の実務(4)教育研修の計画・準備・段取り

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(1)教育担当者の基本機能

●「人材開発のプランニング」「教育コース・施策の企画立案」「運営・実施」としての機能

企業内の教育担当者に求められる機能は、大きく「人材開発のプランニング」「教育コース・施策の企画立案」「運営・実施」の三つがある。大企業では、その機能を本社人材開発部、事業所、部門の教育研修課、研修センターなどに業務を分けて実施しているケースがあるが、一般的には何人かのスタッフでそれらすべてを行うことが多い。

【教育担当者に求められる機能】

人材開発のプランニング 会社全体として、人材開発が円滑に行われるような企業風土づくり、環境づくりを担う。そのためには、経営理念から人材開発方針、教育方針にいたるまで一貫した姿勢を持ち、人事諸制度との関連を明らかにしなければならない。自己啓発についてのメッセージや援助策を打ち出し、各職場でOJTが効果的に行われるような推進方法の検討、実施などが必要となる。
教育コース・施策の企画立案 教育担当部署で実施することの決まった個々の教育コース・施策の企画・立案を行う。具体的には、教育訓練プログラム作り、講師・研修場所の設定、受講者の人選、受講案内通知といった一連の作業である。
運営・実施 実際の研修を運営・実施していくことであり、ここでは事務局担当と教育訓練担当講師・トレーナーの二つの業務がある。事務局担当は、研修全体が円滑かつ効果的に行われるよう、プロデュースする縁の下の力持ちの役割を持つ。講師・トレーナーは、教育訓練担当者が直接受講者に対して研修を行う立場となる。大規模な社員研修センターでは、従業員の専任講師を抱えているケースもある。

(2)教育研修計画作り

●教育研修計画作成についての考え方

教育研修計画の立案に際しては、経営戦略に対応した人材育成戦略として、経営理念やトップの示す人材育成方針を具体化することが求められる。さらに、当面の課題への対応だけではなく、将来必要とされる能力の開発を含み、「短期(1~2年)」と「中期(3~5年)」の人材育成戦略を考える必要がある。これらの観点を踏まえ、経営課題(中期経営計画)から人材育成の課題(人材ニーズ)、能力開発の方法(研修計画)を検討する。そして、現状分析、ヒアリングを行い、研修ニーズ(研修目的)を導き出し、具体的なプログラムを選定する。また、それぞれの研修の目的を明確にし、ほかの研修との関連づけをはっきりとさせるようにすること。このようなステップを踏み、オリジナルな体系を作っていくことが望ましいだろう。

●「伝えるべき内容」「使える時間」「受講者のレベル」で教育研修の手段を決める

教育研修の手段の選定にあたっては、「伝えるべき内容」「使える時間」「受講者のレベル」の三つのバランスを考慮しつつ、検討する必要がある。

【研修手段を決める要素】

伝えるべき内容 研修では、まず何を伝えるべきなのかを整理する。その際、「研修プログラム全体」と「各セッション」の二つの視点から整理し、各セッションで伝えるべき内容を総合したものが、全体の伝えるべき内容と合致しているかどうかを確認する。
使える時間 「正味時間」(休憩・挨拶などを除いた研修そのものに使用できる時間)を把握し、「時間の位置づけ」(研修で使える時間帯)をはっきりさせる。
受講者のレベル 同じ研修であっても、受講者の理解度によりその内容を調整しなければならない。受講者のレベルは事前に調べておくのが望ましいが、現実には研修が始まってから参加者のレベルを見極め、研修内容を調整することが求められる。

●伝える手順を検討しながら、全体の流れを作る

研修プログラムを作るとき、技法を先に考えてしまうと、技法が研修内容を規制してしまう可能性があるため、技法を選ぶのは、「伝えるべき内容」を明確にしてからにする。また、同じ技法のセッションが続いてしまうと、受講者が飽きてしらけてしまうこともある。そのため、技法を検討する場合、部分だけでなく全体の調和・バランスを考えることが大切である。また、プログラム作成上でポイントとなるのは、手順を検討しながら全体の流れを整えていくこと。特に、長期にわたる研修の場合、レクリエーションなどもうまく取り入れながら、変化をつけていく必要がある。

【手順と技法のチェックポイント】

      □研修の流れを活かす手順となっているか
      □研修の流れは単調になっていないか
      □知っている技法だけで、全て研修を組み立てていないか
      □同じような技法を、一つの研修の中で何回も使っていないか
      □研修全体の中で、技法の位置づけ(意味合い・効果)を考えているか
      □技法と各セッションの内容はマッチしているか

(3)研修プログラムの展開

●一目で分かるプログラムを作成する

研修プログラムは、教育研修のエッセンスである。そのためにもプログラムを一目見ただけで、研修の目的、対象者、どういうことを行うかが読み取れなくてはならない。また、研修プログラムを作るときには、受講者をどのレベルにまで引き上げるかという目標を整理し、その目標レベルを前提として、研修のねらいを明らかにすることが肝心だ。

【プログラムに盛り込む項目】

セッション名 研修のセッションごとに何をするか(目的・対象者)。
技法 講義形式orグループ討議形式or野外活動形式など
時間割 時間単位を目安にした、おおまかな表現にしておく(あまり細かくし過ぎない)

●現状と目標を明らかにし、ギャップを埋めるための「伝えるべき内容」を決める

プログラムを作成する際に重要な「伝えるべき内容」とはどのようなものだろうか。まず、「この研修は何のために行うのか」という共通となる考え方を明確にする。次に、研修を通じて「受講者をどのレベルにまで持っていくか」を決め、目標と現状とのギャップを把握する。現状に関しては、サーベイ、プリテスト、ヒアリングなどを行って把握し、目標については関係者の意見を参考にしながら、到達できる確実なレベルを加味し、検討する。そのうえで、現状と目標のギャップを埋めるために、どういうことが必要かを考察する。このように「伝えるべき内容」が明らかにしたうえで、マッチした技法・手段(プログラム)を考えていく。

●プログラムは、必ずチェックする

できあがったプログラムは、必ず複数の関係者の目でチェックする。「伝えるべき内容」が不明確だったり、表現や言葉づかいが難しく、よく分からなかったりすることがないよう、できるだけ平易な表現を用いることである。

【プログラム作成でのチェックポイント】

      □目的(ねらい)とプログラム内容は連動しているか
      □受講者とプログラムはマッチしているか
      □伝えるべき内容は、ストレートに表現されているか
      □プログラムを見て、受講者が何をするのかが想定できるか
      □難しい表現や言葉を使ったプログラムになっていないか
      □研修に使う時間とプログラムの内容のバランスは取れているか
      □タイムスケジュールに無理はないか
      □プログラム全体を見て、無理のない構成となっている
      □研修全体の流れに、変化はつけられているか(単調となっていないか)

●テキスト・教材作りの工夫

研修で使うテキスト・教材は、自社のオリジナルが望ましい。プログラムが決まった時点で、できるだけ早い時期に作成するといいだろう。ポイントは「使用目的」と「範囲」を明確にすること。1時間程度の講義中心で進める研修であれば、簡単なレジュメで十分だが、三日間の研修で実習が組み込まれ、研修後も参考資料として用いるというようなケースでは、レジュメだけでは不十分である。そういった場合は、ある程度の解説・説明を伴ったテキスト・教材を用意する必要がある。

【テキスト・教材作成のポイント】

      □研修の目的・範囲を押さえている内容か
      □講師への原稿依頼の確認は済んだか
      □部数は確認したか
      □再度、内容の見なおし(あらためて、研修のテーマに沿っているかどうかの確認)はしたか
      □誤字・誤植のチェックは済んだか
      □不適切用語は見なおしたか
      □文字・図表のバランス・構成は適切か
      □表現(ですます調、である調)は統一されているか
      □必要な部分において、記入(コメント)欄は設けてあるか

(4)運営事務局の実務

●目的や進め方に合った「研修会場」を探す

研修会場は研修の重要な要素であり、研修の目的(ねらい)、進め方に合った会場にすることが肝心である。研修会場を見つけるには、教育関係を中心に本や専門誌、インターネットで探すのが基本。「これは!」と思った研修会場は早めに問い合わせを行い、資料を取り寄せておくことだ。研修会場には一流ホテルから社内会議室まで、さまざまなものがあるが、受講者の階層や受講時期によって、その印象は変わってくる。研修会社の担当者は会場・施設などの情報に詳しいので、日頃からコミュニケーションを取って、アドバイスをもらうといいだろう。

●「事前資料」を受講者に配布する

社員研修・人材育成の実務(4)教育研修の計画・準備・段取り

研修を実施する際は、前もって受講者に対して「事前資料」を配布しておく。配布の際は、宛名は研修参加の本人とし、社内の最短ルートを利用する。また、事前資料を確実に読んでもらうための工夫も必要だ。例えば、「なぜ、この研修に参加するのか(しなければならないのか)」「事前課題をやってこなかった場合、どういう不都合があるのか」といったことを、あまりプレッシャーのかからない表現で明記しておく。いずれにしても、参加する研修をより身近なものと感じられるように工夫することが大切だ。

また、研修受講者には「研修の目的、日時、会場、講師、参加者、内容、方法」などについて、簡潔に記した「参加案内」を必ず配布する。参加案内通知の送付先は、研修受講者の上司が原則。これは、上司が研修の内容を把握し、参加のための指導・激励をうながすためである。研修参加前の上司からの動機づけは、研修に入ってからの本人の姿勢に大きな影響を与える。

●事前に「グループ編成」を考えておく

研修実施前の検討事項で特に重要なのが、グループ編成である。研修中のグループ活動では、その活性化がポイントとなるからだ。実際にグループ編成を考える場合、まず何グループ程度にすればいいのかを考える。全体の参加者数を予定しているグループの人数で割って、概数を決める。算出したら、グループ数が今回の研修にとって、多過ぎないか少な過ぎないかを判断する。その際、教室の大きさ、マイクの有無など、物理的な制約条件についても考慮する。一般的に、グループの人数は5~6人が多い。なお、グループ編成において、参加メンバーが「異質」か「同質」かを判断しなければならないことがある。教育研修会社が主催する公開講座などは異質の編成を基本としているが、特定のテーマでグループ討議を行う場合は、同質のグループ編成が行われることが多い。

【グループ編成の基準(例)】

年齢 年齢の近い者とするか、年代の違う者を一緒にするか
性別 男女別々にするか、混合にするか
職種 同じ職種の者を集めるか、別々にするか
成績 成績の良い者と悪い者を一緒にするか、別々にするか
所属 事業部・支店単位であれば、同じ事業部・支店で固めるか、別々にするか
課題 事前課題のテーマ(でき具合い)を参考にして決める

●研修当日、手際よく動くために「マニュアル」が不可欠

研修当日の事務局スタッフは忙しく、かつ柔軟な対応が求められる。研修開始までに何をしなければならないのか、また時間がない場合にはどのプログラムを省くのか、などをあらかじめ予測し、組み立てておかなくてはならない。研修は多人数がかかわるので、事前に事務局用のマニュアルを作成しておくことが不可欠だ。また、マニュアルはその研修独自のものを作成し、当日の進行によって修正を加えるのがいいだろう。マニュアルの軸となるのは「時間」で、これを補足するのが「研修項目」。時間、研修項目を軸としながら、事務局としてどのような対応をするかを検討し、その際に用意しなければならないものを確認する。

●与えられた条件下(研修会場)で、効果的な方法を探る

研修の進めやすさや効果は「研修会場」に大きく左右される。しかし、広さや照明など、研修会場や部屋そのものが持つ前提条件は、大きく変えられるものではない。そのため、与えられた条件下で、いかに効果的な研修を行うか、事前にイメージできるようにしておくのが望ましい。まず、研修会場(部屋)全体をチェックし、全体の広さ、天井の高さ、照明、カーテン、冷暖房などを確認しながら、会場づくりを行う。その際のポイントは「机のレイアウト」である。レイアウトには劇場形式や教室形式など基本となる形があるので、基本に従ってレイアウトを行うと同時に、その適用範囲、メリット・メリットをしっかりと押さえておくことが大切だ。

●受講者への丁寧な受付と誘導を行う

組織内における研修では、受講者につい慣れ親しんだ態度を取りがちだが、これは避けるべきだ。受講者は自分の仕事の都合をつけて参加しに来ているのだから、きちんと挨拶し、丁寧な対応(受付と誘導)を行うことで、手際よく準備しているという印象を持たれるようにしたい。それが、研修への参加意欲を高めることにつながる。

●研修後のアンケートを用意する

研修の効果を測定するアンケートは、研修ごとに作成する。そして、「アンケートでどこまで聞くか」「アンケートで何を把握したいか」「アンケートで教育研修をどうしたいか」を明確にしておくことだ。そのためには、正しいアンケート用紙の作成方法を知り、分析方法を熟知しておくことが大切である。

【研修後のアンケート作成の留意点】

      □質問は、二つの意味を含まないようにする
      □言葉遣いは、研修受講者の「下位レベル」に合わせる
      □価値判断を含んだ言葉は使わない
      □明らかに「YES」「NO」と分かるような(答えなければならない)質問は避ける
      □研修の流れ、または技法・手段に従って答えられるような質問とする
      □回答には数値化できるよう、「尺度」を与える
      □アンケート用紙は、事前にテスト・確認を行う

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