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社員研修・人材育成の実務(3)
近年の教育研修の傾向と対応

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●「基本」が存在する一方、より効果的な社員教育が求められている

社員研修・人材育成の実務(3)

社員に求められるスキル・能力の変化に伴い、社員教育の方向性も、従来型の指揮命令・マニュアルに従って行動するのではなく、自発・自律的な行動が取れる社員を育成するあり方へと変わっている。一方、いつの時代でも変わらない「基本」が依然として存在しているのも事実。では、新しい社員教育の流れ、コンテンツはどうなっているのか。以下、いくつかの「対象別」と「テーマ別」の研修について、近年の傾向と実効性を高めるためのポイントを整理した。

【対象別の研修(例)】

1.内定者
近年の傾向
  • 内定者フォローと新入社員教育をつなぐ役割として、「内定者研修」を行うケースが増えている。採用活動中は、自社の都合の良い側面をアピールしがちで、学生は企業に大きな期待感を抱くが、入社後に予想外の現実を知り、そのギャップに大きなショックを受ける。企業に嘘をつかれたという思いが残り、早期退職へのカウントダウンが始まる。こうした事態を招かないためにも、入社前に適切な対応を行う必要がある。
実行性を高める
ポイント
  • 求められる知識やスキルの変化のスピードが速くなるに従い、新入社員には早期戦力化が求められている。「基礎知識」「基本要件」などはこの段階でマスターさせ、入社後により実践的な教育を行うことがポイントだ。
  • 内定者は学生の身分のため、正式な雇用関係には至っておらず、卒業旅行や最後の論文作成などに取り組んでいる学生も少なくない。負担がかからないよう、内定者への呼出には留意したい。一方、入社後のギャップを埋めるためにも、入社前に必要な情報を提供しなくてはならない。また、不参加者の中には、入社日が近づいてくると会社に対して不安を抱く者もいるだろう。そうした場合には、研修の実施内容を後日報告するなど、状況に応じてフォローを行う必要がある。
2.新入社員
近年の傾向
  • 座学で知識を教えるよりも、グループに分けて研修を行うケースが増えている。グループによる学びでお互いに気づきが起こり、態度変容・行動変容が期待できる。例えば、「体験・参加型の研修」が盛んに行われるようになったのも、みずから体験・参加して覚えたことは忘れることがなく、実際の現場に出たときにも応用が効くという学習効果をねらったからだ。
実行性を高める
ポイント
  • 「ゆとり教育」の教育方針の中で育った新入社員に対して、「真面目で勉強熱心だが、自分が納得しないと動かない傾向にある」という声をよく聞く。「ゆとり世代」に対応するため、「今、自分には何が求められているか」「そのために、この研修が必要となってくる」といった趣旨について、事前の段階で丁寧に説明し、理解してもらうことが大切だ。
  • 即戦力化も大事だが、近年は教育期間を長期に設定して、段階的な教育を実施する企業が少なくない。長期にわたる研修で確かな技術や知識を身につけてもらうことにより、各自の適性やレベルも明確になる。人材の定着を図るうえでも、それに合わせた形でのフォローやメンタル面でのケアを行い、能力開発や配置・配属を推し進めていく必要がある。
3.中堅社員
近年の傾向
  • 階層別で対象者一律に行う必須研修を持たない企業が増えている。その結果、中堅社員が管理職に上がるまで10年前後も体系的な研修を受けてこなかった、という“空白の状況”が起きている。また、管理職ポストの不足から中堅社員自身も将来のキャリアに対して、“停滞感”を持ちがちだ。こうした事態を打開し、人材の底上げを図るために現場の中核をなす中堅社員に対して、スキル開発、キャリア開発を促そうという企業が増えている。
実行性を高める
ポイント
  • 「中堅社員研修」では、受講者が義務的な参加意識を持ったり、受動的な姿勢を取ったりする傾向がある。そこで、研修実施後の定期的なヒアリング、フォローにより研修成果を継続して本人に意識づけることが大切である。さらには現場の管理職を巻き込み、日常業務との関連を強化し、現場での意識づけや能力開発と結びついた運用を行う必要がある。
  • 中堅社員に対しては、自分の置かれた立場を強く認識してもらい、次なるステップに向けて、絶えず行動を起こしていくための支援・工夫を講じていくことが大切だ。
4.幹部社員
近年の傾向
  • 「幹部社員研修」の導入を考えている企業が多い。これからを担う30代、40代社員のマネジメント経験が不足し、数年後には主要なポストを担当する次世代リーダーが不足してしまう経営的な懸念があるからだ。プログラムは長い期間をかけて行われることが多く、短いものでも半年、長期では3~5年に及ぶケースもある。この期間内に一貫性のある育成方針の下、定期的な集合研修とさまざまな課題が与えられる。
実行性を高める
ポイント
  • 「幹部社員研修」の実効性を高めるポイントは、以下の3点である。 1)将来の人材ニーズを焦点に入れる
    今、必要となる人材(要件)に焦点を当てると同時に、将来の変化を見据えたうえで可能性のある人材を幅広く特定する。
    2)ポテンシャルの高い部下を対象とする
    上司から見て「よくやっている」部下を対象にするのではなく、上司のやっていることを発展させてくれる可能性の高い部下を対象にする。
    3)基準やプロセスの透明性を高める
    候補者が選ばれる基準やプロセスの透明性を高め、できるだけオープンにする。「自分は候補に選ばれているのか」「今、選ばれていなければ、今後選ばれることはないのか」といった不安感の高い状況では、社内のモラールは低下する。

【テーマ別の研修(例)】

1.グローバル化
近年の傾向
  • グローバル化対応で、多くの企業で導入を検討しているのが「異文化対応マネジメント研修」。マネジメント経験が十分にないまま出ていったとき、現実的にうまくマネジメントできないという問題が出ているからだ。疑似体験などを通じて、海外に出る前に異文化をよく知り、どうマネジメントしていけばいいのかを“肌感覚”で理解しておくことで、自分自身の手でうまくやれる状況を作ることができるようになる。
実行性を高める
ポイント
  • 「異文化というのはこういうことなのか」「異なる国の人たちはこんな考え方をしているのか」「それに対しては、こうやっていけばいいのか」といったことを理解し、その状況にうまく対処する“予防接種”的なプログラムを工夫する。
  • グローバル人材育成に取り組むためには、自社の事業展開を踏まえ、どのような人材がいつまでに、どれくらい必要かを見定めたうえで、育成対象や教育内容を決める必要がある。その際、テーマや自社の状況によって、自社内で行うもとの、外部機関を利用して行うものをよく考え、選択していくことがポイントだ。
2.コンプライアンス対応
近年の傾向
  • 経営におけるリスクが多様化している中、リスクマネジメントを怠ったときの損害は大きく、投資家、顧客、取引先、従業員、金融機関、地域社会など、影響は広範囲に及ぶ。そこでコンプライアンス(法令遵守)の姿勢と具体的行動を学ぶ「コンプライアンス研修」の重要性が一段と高まってきた。
実行性を高める
ポイント
  • 研修では「経営におけるコンプライアンスの意味とその重要性の理解」「自分の行動のチェックとその後の意識と行動の変容」について、講義やケーススタディ(他社事例)などをとおして学ぶことが大切だ。各人がコンプライアンスに対する問題意識と自覚を持ち、社内における不祥事などの未然防止につなげていくようにする。
  • その際に重要なのは、企業利益と倫理が相反する場合には、必ず倫理を優先させるという基本原則を全員が理解し、納得すること。また研修は一律に行うのではなく、企業内の責任範囲や実務経験に応じて、階層別に行う方が効率的だ。
3.モチベーションアップ
近年の傾向
  • 成果や生産性は、個人のモチベーションの有無や高低によって大きく異なる。それは、個人の集まりである組織でも同様であり、一人ひとりのモチベーションを高め活性化をうながし、生産性を向上させていくことは重要なテーマだ。その考え方と具体的な方法を学ぶため、「モチベーション研修」が盛んに行われるようになっている。
  • 研修では、モチベーションの「基本事項」を学ぶ一方、一人ひとりのモチベーションを細かく分析し、ポイントを押さえた行動計画を立てていくことにより、みずからのモチベーションをマネジメントし、成果・業績へとつなげることをねらったプログラムが増えている。
実行性を高める
ポイント
  • モチベーションのあり方は一人ひとり違うという前提のもと、会社の方向性とどうひも付けていくかがポイントとなる。スタッフ部門と現場マネジャーとが一定の理解を持ったうえで、プログラムの企画・立案していくことである。
  • 個人のモチベーションと組織活性化とのリンク(相乗効果)を常に意識し、実感させるようなコンテンツを盛り込みながら、理想的な状態をイメージできるようにする。また、研修終了後もモチベーションが持続できるようなフォロー・工夫を盛り込むようにすることが大切だ。
4.リーダーシップ
近年の傾向
  • 主に対象となるのは課長~部長相当の役職者。新たなステージに立つリーダーにとって、心構えや具体的な行動論を学び、リーダーとして成果を出す自分なりのスタイルを発見し、必要なスキルを身につけてもらう。リーダーシップの基本を学びつつ、自分はどういうタイプなのかを知り、所属する組織ではどのようなリーダーシップを発揮すべきなのかを考えたうえで、自分にふさわしいスタイルを身につけさせるというプログラムが多い。
実行性を高める
ポイント
  • リーダーとしての基本を学び、タイプを把握できたとしても、それでリーダーシップを発揮できるようになるわけではない。求められるリーダーとなるためには、さまざまな経験を通して学び、成長していくプロセスが欠かせない。そのプロセスの中で何度か立ち止まり、自己を振り返る内省(リフレクション)が重要である。
  • なぜ成功したのか、なぜ失敗したのかを考える。さらにその体験で自分は何を学べたのかを考える。そうした体験の棚卸しを「リーダーシップ研修」にひも付けてフォローアップしていくことにより、真のリーダーとなることができる。
5.経営理念浸透
近年の傾向
  • 経営者の思い、企業の価値観などを記した経営理念には、社員の結束を強化し、主体的な行動をうながす機能がある。しかし時が経つにしたがい、経営理念と現実(現場)とのかい離が大きくなり、社員の行動が経営理念とは違ったものになる。そこで、折に触れて経営理念を社員に確認・浸透させ、経営理念に沿ったふさわしい行動を取ってもらうために「経営理念浸透研修」を行うケースが増えてきた。
実行性を高める
ポイント
  • 経営理念は一度決めたら、容易には変更できない。そのため、経営を取り巻く環境が大きく変化した場合、実情に合わなくなったり、社員に求める行動なども変わってくることがある。研修では、頭ごなしに覚えさせようとするのではなく、現実に起きている事象をテーマに取り上げ、そこで経営理念に則った行動とはどういうものかを、皆で話し合わせる場をできるだけ多くすることが大切である。
  • グローバルに展開していく企業の場合、日本と状況が異なる現地法人においては、経営理念を共有していないと、現地でのマネジメントがうまくできない。経営理念に基づいた行動とはどういうものか、映像などのツールを交えて議論を交わし、こうした場面でなぜそのような行動が求められるのかを、現地法人の社員に理解し、行動してもらうようにする。
6.ダイバーシティ
近年の傾向
  • 職場に多様な人材が増えると、コミュニケーションギャップや不和・対立が起こりやすくなる。さらには、チームのパフォーマンスや生産性の低下をまねくケースも出てくる。特に、男性正社員が中心の日本企業では、こうしたことが起こりがちだ。そのため、なぜダイバーシティが求められているのかという基本姿勢を、徹底して教えていく必要性が高まっている。
実行性を高める
ポイント
  • ダイバーシティは「課題」ではなく、活かされるべき「強み」であることを、講義とケーススタディの両面から十分に理解してもらうようにする。
  • 研修では、できるだけディスカッションや演習を多く取り入れ、参加者同士の意見交換や経験の共有化を促進し、お互いに刺激し合いながら学ぶようにする。各人に違いがあるからこそ、衝突は起きるが、そうした際に的確に対応できるしくみを考え、運用していくことが求められる。それには「価値観」をベースに、「一人ひとりは違うが、ゴールは共通」という姿勢が重要であり、常にマイノリティ(少数派)を理解しようとする思いやりの気持ちと配慮が欠かせない。そして、研修の中だけに限らず、研修が終わった後もあらゆる機会を通して継続することが大切である。

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