人材紹介を行う過程で、さまざまなトラブルが発生する。その中でも代表的なのが、求職者の職務経歴の中身・レベルに関する事項である。求職者は「何とか転職したい」、また人材紹介会社も「求職者を入社させて、サービスフィーを得たい」という思いがあるので、応募書類に強調した表現を用いるなど、職務経歴に化粧をしがちになる。さらに、求職者に対しては人材紹介会社による面接指導などが行われるので、応募者の実態を上回る期待値をもって採用されるケースが起きることがある。そのため、入社後に十分にできると思った仕事が期待に沿わない結果となり、思わぬトラブルに発展することがある。
このような場合、求職者は転職を余儀なくされることも多く、結果的に求人企業・求職者双方にとって、機会の喪失となってしまう。人材紹介会社としても、顧客企業からの信用を失うことになる。こうした事態を回避するためにも、人材紹介会社は経歴に関する過剰な記載を行うのではなく、あくまで事実ベースに徹し、その上で求人企業が興味・関心を抱く具体的な実績や成果などを記述することが大切である。また、求人企業側も事実ベースについて確認する対応を、常に心掛けることである。
人材紹介会社は、各社とも同じ転職情報サイトから転職希望者リストを調達することが多いので、一人の優秀な人材を、各社間で採り合うというトラブルが発生する。例えば、一人の求職者が複数の人材紹介会社を利用し、それぞれ転職活動を進めて仮に2社から同時に採用内定が出た場合、1社を内定辞退することになる。その結果、辞退された企業から「なぜ、辞退する可能性のある候補者を紹介したのか」と、人材紹介会社の管理体制について、クレームを受けることもある。このようなことが起こらないよう、事前に求職者との連絡を密に取り、本人の意向をヒアリングし、他社からの応募があるのかどうか事実を確認した上で、紹介するかどうかを決める必要がある。同様に求人企業も、その点を十分に確認することである。
人材紹介会社には、会社ごとに特徴や得意分野がある。求人企業は採用する人材の要件(求人案件)に応じて、使い分けることが必要である。
例えば、登録型とサーチ型を比べた場合、サーチ型は役員や幹部クラス、専門性の高い人材に限定して利用するのが効果的である。それ以外の一般的な人材については、登録型で十分な成果が上げられる。登録型の場合、成功報酬なので、求人を依頼するだけでは費用は発生しない。1社に依頼しても10社に依頼しても、採用人数が1名ならサービスフィーは基本的に1名分しかかからない。このような点からも、より多くの人材紹介会社に求人依頼を行うのが得策である。
それに対してサーチ型の場合、初期費用が発生し、一定期間は専属契約になることなどから、登録型のように複数の人材紹介会社に分散して依頼することが難しい。そのため、どの人材紹介会社を利用するのか、過去の実績などによる事前のリサーチが非常に重要となる。
人材紹介会社を選ぶ際、第一に考えるべきことは、営業担当者のチェックである。人材紹介会社の営業は、求人情報を収集し、求人票を作成するとともに、その内容を自社のキャリアアドバイザーに伝えるという重要な役割を担っている。営業担当者が求人内容を正しく理解しているかどうかが、採用成功の大きなカギを握っているからだ。その点からも、営業担当者の仕事への取り組み方や対応(態度)について、十分にチェックしておく必要がある。さらに、人材紹介会社を選ぶ際には、下記のような点からも事前に確認しておくことが大切だ。
・厚生労働大臣の許可番号を取得しているか
・プライバシーマークを取得しているか
・日本人材紹介事業協会など、信頼性の高い団体に所属しているか
・人材紹介会社の評価サイトを参考にする
・電話をかけてみて、その対応で判断する
・転職セミナーの実施など、付帯サービスで比較する
・コンサルタントに実際に会って、業界理解などに関する対応を見る
・自社との相性が良さそうか、過去の実績を見る
・信頼のおける他社から、口コミで情報を得る
求人企業が非公開求人を依頼する場合について、「この案件は非公開である」旨を、人材紹介会社に徹底しておくことである。なぜなら、人材紹介会社はより多くの登録者を確保するために、インターネット上の自社サイトなどに、求人情報を掲載することがあるからだ。その際、仮に社名が伏せられたとしても、仕事内容や勤務地などによって、どの会社の募集であるかが分かってしまうケースがある。これでは、非公開とする目的が失せてしまう。どのような形であっても、求人をオープンにしたくない場合には、非公開求人であることを営業担当者に強く念押ししておくことが大切である。
求人企業が候補者と連絡・交渉する際は、入社受諾の段階まで必ず人材紹介会社を経由して行うのが基本ルールである。なぜなら、人材紹介会社を利用する求職者は、求人企業との連絡や交渉に際し、間に人材紹介会社が介在することで、安心感を得ている場合が多いからだ。それなのに、求人企業が直接連絡を取ったり、条件交渉などを行うと、その企業に対して不信感を抱くことになり、場合によっては辞退に至るケースともなりかねない。その点からも、入社受諾までは候補者に対する連絡・交渉は、人材紹介会社を経由する点を遵守することである。
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