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人材紹介における「契約実務」

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(1)契約書とは

●誤解を生まないよう、無形のサービスを明文化したのが契約書

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企業からの案件を受注した際、最初に行う作業が契約書の作成である。契約書には、人材紹介のサービスが、求人企業と人材紹介会社それぞれの合意の上で成り立っている仕事であることが明記されている。日本は欧米社会と異なり、契約よりも慣習を重んじる風習があるが、人材紹介ビジネスのような無形のサービスを提供する場合、誤解を生まないためにも、下記に示したような事項について、細部までしっかりと契約書の上で合意しておく必要がある。以下、そのポイントを説明する。

【人材紹介の契約書で重要となる事項】
・サービスフィーの料金と計算根拠
・サービスフィーの支払い条件
・返金条項、フリーリプレイスメントなど、停止条件サービス
・求職者(候補者)のオーナーシップ(所有権)
・成功報酬か、前金支払い(リテインサーチ)か

(2)サービスフィーの料金と計算根拠

●「標準年収」を設定し、一定の割合を乗じて計算する

人材紹介会社のサービスフィーは、年収の一定割合を乗じて計算する。通常、その割合は30%である。問題は、年収の定義である。一般的に、人材紹介会社が提示する年収は「求職者の初年度に想定される年収の総額」であるが、求人企業の中には「変動給を含まない固定給部分を年収とする」と考えている企業も少なくない。その理由は、変動給は予想が困難であり、採用コストを少しでも抑えたいという思惑があるからだ。

例えば、経理や財務などのスタッフ職、エンジニアなどの専門職では、固定給が給料の大半を占めるため、年収の定義はあまり問題とならない。しかし、営業職などは変動給の割合が高くなることが多い。いずれにしても、給与の仕組みは会社によってさまざまである。そのため、変動給が多い場合は、手当や手付金などの扱いも含めて交渉を行い、双方の合意の上で、初年度に想定される「標準年収」を設定し、算出するのが望ましいと思われる

(3)サービスフィーの支払い条件

●入金までのサイクルが長いため、事前に支払い条件を明確にしておく

サービスフィーの支払い条件については、入社後30日と規定している人材紹介会社が多い。しかし、求人企業の支払い条件に合わせざるを得ない場合がある。特に大手企業などでは、「毎月20日締めで、翌々月末払い」とするケースもあり、それまで入金を待たなくてはならない。さらに、返金条項の伴う保証期間がある場合は、人材紹介会社にはサービスフィーを返金しなければならないリスクが伴う。

人材紹介ビジネスでは、1件の成約を得るために2~3ヵ月もの期間を要すると言われる。また、成功報酬であるため、最終的な売上がゼロで終わる可能性もある。いずれにしても入金までのサイクルの長いことが多いので、契約する際にはサービスフィーの支払条件について、事前に明確にしておくことが大切である。

(4)返金条項、フリーリプレイスメントなど、停止条件サービス

●保証期間内に紹介者が辞めた場合、サービスの保証を規定する

保証期間(通常は90日)内に、紹介者が自己都合で辞めた場合、「返金条項」「フリーリプレイスメント」のどちらかの方法でサービスの保証を行うかを決めることになる。現状を見ると、求人企業の多くが返金条項を求めるケースが目立つ。

返金条項は、求人企業が人材紹介会社に対してサービスフィーの一部を返金することを求める旨を規定するものである。その際、サービスフィーの50%を返金するのが一般的だ。中には180日の保証期間や、30日で辞めた場合に80~100%の返金を要求する企業もある。

フリーリプレイスメントは、紹介者が保証期間内に自己都合で退職した場合、無償で新しい候補者を紹介することを規定するものである。新たな候補者が採用に至れば、求人企業にとって新たなサービスフィーが発生することなく、事態が解決されることになる。人材紹介会社にとっても、一度完結した仕事に支払われたサービスフィーを失うことにならずに済む。

(5)求職者(候補者)のオーナーシップ(所有権)

●オーナーシップは、人材紹介ビジネスにとっての死活問題

求職者のオーナーシップは、人材紹介会社が特定の求職者を求人企業に紹介した場合、一定の期間(通常は12ヵ月)、その求職者に対する所有権を持つことを規定するものである。仮に求職者が採用に至らなくても、紹介してから12ヵ月の間に、求職者が別の職種などでその企業に採用になった場合、契約書に基づき、求人企業は人材紹介会社に規定のサービスフィーを支払うことを約束するという内容である。

実際、人材紹介会社に知らせることなく、求人企業が独自に求職者と連絡を取り、採用に動くことがある。このようなケースが頻繁に起きると、そもそも人材紹介ビジネスの存立が難しくなる。オーナーシップは、人材紹介ビジネスにとって死活問題なのだ。契約書に求職者のオーナーシップを規定してあれば、どのような場合であっても人材紹介会社はサービスフィーを請求することができることに、求人企業は留意しておく必要がある。

(6)成功報酬か、前金支払い(リテインサーチ)か

●リテインサーチの場合には、案件に関する事前確認が欠かせない

サービスフィーの支払い形式について、紹介した求職者が求人企業の採用に至った場合、初めて料金が支払われる「成功報酬」と、サービスフィーの3分の1程度を、採用プロセスの段階ごとに支払う「前金支払い(リテインサーチ)」があり、これを契約の際に明確に決める必要がある。一般的には、成功報酬が多くなっている。

通常の成功報酬では、求職者の入社が確定しなければ売上が立たない。しかし、前金支払いの案件では専属契約となり(他社との競合もなく)一部売上が確定するので、人材紹介会社にとってその点が大きなメリットとなる。ただし、人材紹介会社が求められる人材を探せるネットワーク(情報)がないにもかかわらずリテインサーチによる契約を結ぶと、後に大きなトラブルに発展しかねない。契約の際には、求人案件に対して人材紹介会社が十分な対応ができるかどうか、事前確認が欠かせない。


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