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人材紹介ビジネスを「取り巻く環境」

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(1)人材紹介ビジネスの現状

●求人ニーズに、人材供給が追い付かない状況

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規制緩和が行われて以降、人材紹介ビジネスは急成長を続けており、人材紹介を専業とする日系や外資系の会社のほか、人材派遣会社が人材紹介事業部門をスタートさせたケースも目立つ。また他業界からの新規事業としての参入や、企業の多様な人材ニーズに対応して新しく人材紹介業を起業するケースなど、さまざまな分野からの新規参入が続いている。特に近年は、有効求人倍率の上昇が続く中、少子高齢化に伴う労働力人口の減少が進んでおり、企業の人材確保に対する危機意識は相当高まっている。拡大する求人ニーズに、人材の供給が追い付いていないのが現状だ。そのような点から考えると、人材紹介ビジネスには当分、追い風が吹き続けることが予想される。

●大手では分業体制、中小では特定分野に特化した形で売り上げを伸ばす

マーケットが拡大する中、各社の対応状況を見ると、業界の大手企業では一部を除き、スケールメリットを目指す方向へと舵を切っているようだ。若手ビジネスパーソンをターゲットとした中途採用をメイン事業として行い、「求人企業の求人案件の開拓」と「求職者の開拓」を分けた分業体制で、人材紹介を展開するケースが多く見られる。それに対して、中小規模の人材紹介会社では大手企業とは異なる戦略を採用している。スケールメリットを狙うのではなく、特定分野(業界や職種)に精通(特化)することで顧客企業からの信頼を得て、高いパフォーマンスを上げている企業が目立つ。

(2)外資系と日系

●サーチ型の多い外資系、日系は大手を中心に登録型が多い

人材紹介会社には、「外資系(外国資本)」と「日系(日本資本)」が存在する。カタカナ表記の名前が多く、社名からはどちらか分かりにくいこともあるが、外資系の人材紹介会社は外資系企業の求人案件、日系人材紹介は日本企業の求人案件を取り扱う傾向がある。

また、外資系人材紹介会社は登録型よりもサーチ型が多く見られ、転職を考えていない層に対しても、求人企業の事業展開などを踏まえた上で、積極的に求人を売り込むアプローチを行う。取り扱う求人は、30代~50代のミドル・シニア案件が中心となっている。

一方、日系人材紹介会社は登録型が多く、転職を希望しているのは求職者自身であるというスタンスの下、その点を確認してから求人内容を紹介するのが基本である。扱う求人案件も、大手人材紹介会社の場合、20代~30代前半が多く、スケールメリット(量的拡大)を狙い、全国的に展開しているのが特徴だ。

(3)手数料(サービスフィー)の変化

●相場の値崩れが進む可能性も?

現在、人材紹介ビジネスは「成功報酬型」がスタンダードな料金体系となっている。新規参入によって人材紹介会社が急増し人材紹介会社間の競争が激化したことなどにより、需給関係が崩れ、前金をもらって仕事をする「前金支払い型(リテインサーチ)」は激減した。そのため、これまでリテインサーチしかやらないというスタンスを取ってきた会社は、サービスの機会損失に悩み、事業戦略の変更を余儀なくされている。

このような競争の激化は、手数料(サービスフィー)のあり方にも影響を及ぼしている。日本における人材紹介ビジネスのサービスフィーは30%が相場となっているが、これは欧州(20~25%)、アメリカ(15~25%)、アジア諸国(15~25%)と比べると、比較的高い水準にある。欧米やアジアの市場では人材紹介ビジネスは成熟化していることもあり、サービスフィーは値下がり傾向にあると言う。こうした傾向が日本市場でも起こり得ると予想されている。

事実、一部の採用力(企業ブランド)の高い企業では、取り引きする人材紹介会社を絞り込み、サービスフィーの値下げを要求するなど、一部に下落傾向の兆候が見られる。その一方で、逆のケースも見られる。大手でも採用に苦労している企業では、多くの人材紹介会社と取り引きを行い、高いサービスフィーを払ってでも確実に採用を実現しようとしている。採用力に関して、このような企業間格差が起きている中、サービスフィーが今後どう変化していくか注目されるところだ。

●「リファーラルリクルーティング」が、サービスのあり方に変化を与える?

また、近年では自社社員を採用チーム(リクルーター)として抱え、求人ポータルや自社HPなどを使って、自前で求職者の開拓に取り組むケースがある。いわゆる「リファーラルリクルーティング」だ。リファーラルリクルーティングは、求人メディアや人材紹介会社など既存の採用チャネルに頼らず、人と人との個人的なつながりを活用することによって、採用候補者の質や信頼性を確保し、採用のマッチング精度を高めることを狙いとするもの。特に近年ではSNSの発達によって、人と人のつながりがネットワーク上で可視化されるようになったこともあり、自社社員による人づての採用活動の有用性(利便性)が飛躍的に高まっている。

リファーラルリクルーティングは、信頼できる人が自社に欲しい人を紹介する採用手法なので、低コストで求める人材を採用しやすくなる。また、面接する前から採用候補者の企業文化や経営理念への共感・親和性なども確認できるので、入社後のミスマッチを防ぐことができる。実際、アメリカでは就職サイトよりも、リファーラルリクルーティングの割合が多くを占めており、このような動きが今後、日本にも訪れると見る関係者も少なくない。それによって、サービスフィーの相場やサポート体制など、人材紹介会社のサービスのあり方にも変化が出てくることが予想される。

(4)弱み

●企業の人材ニーズなど、景況に大きく左右される

人材ビジネス全般に言えることだが、人材紹介ビジネスもその時々の景況に大きく左右される。そのため、景気が落ち込んで人材ニーズが減少した時、早急に対応を取らないと手遅れになることがある。事実、あらゆる業界を対象とする大手人材紹介会社の場合を見ると、そのブランド力を活用して減少する人材ニーズを寡占的に集め、業績の落ち込みを最大限リカバリーする対応を行っている。あるいは、好調業種のセクションにコンサルタントをシフトするなど、さまざまな対策を講じている。それに対して、小規模、かつ特定業種を専門的に扱う人材紹介会社は、ダメージを直接的に受ける。ニッチな層に対する求人開拓がよりいっそう求められることになる。

●「成功報酬型」のビジネスモデルが負荷となる場合も

求人企業の採用が成功した場合に料金が発生するという「成功報酬型」のビジネスモデルは、求人企業にとっては都合のよい仕組みであるが、人材紹介会社にとってみると、少なからぬ負荷となる。それなのに、転職サイトから人材リストを仕入れ、紹介する人材を流すだけといった自己都合を優先した対応を行っていてはマッチングの精度は低くなり、求人企業の信頼を失うことになってしまう。成功報酬というリスクがあるからこそ、安定的な求人依頼を受けることに注力する必要がある。そのためには、キャリアアドバイザーがしっかりと面接を行い、能力や適性を判断した上で顧客企業にコンタクトするなど、非常に手間暇のかかる属人的な対応とならざるを得ない側面が出てくる。このような労働集約型によるビジネススタイルの“非効率性”が、構造的な弱みとなっている点は否めないだろう。

(5)業界の抱える課題と今後の展開

●採用のミスマッチが問題化する中、人材の開拓力が大きく問われる

労働者人口が減少する中、人材紹介業界内の競争が激化するとともに、紹介して入社に結び付く人材を確保することは、より困難になることが予想される。求人難が続き、採用におけるミスマッチが問題化している状況下において、人材紹介会社が生き残るために必要なことは、求人案件の理解を深め、求職者のスクリーニング(人物評価)の精度を高めることである。そして、業務のさらなる効率化によって求職者開拓のスピードアップを実現し、求人企業と求職者との信頼関係が築くことである。広い意味での、人材の開拓力が大きく問われることになる。そのためにも、求人企業と求職者の間に立つコンサルタントが高度なコミュニケーション・コンサルティングのスキルを発揮する体制作りが、各人材紹介会社に求められる。

●競争激化で、格差・多様化が進む

働く個人の価値観の多様化、企業における就業形態の多様化が進み、人材の流動化はますます進展している。流動化する労働市場において、人材紹介ビジネスに対する期待感が増すことは間違いないだろう。その一方で、成長するマーケットを目指して、他業種からの新規参入が相次ぎ、競争が激化することが予想される。

その結果、人材紹介会社間の格差や多様化が広がることが考えられる。多くの企業は、デフレ不況下の調整過程で、求める人材の質に対して妥協してはならないことを強く認識しており、より的確な人材をあっせんできる人材紹介会社にシフトする傾向があるからだ。このような求人企業側の動きから、人材紹介会社では「規模の拡大・統合化」もしくは「専門分野への特化」のどちからかの方向に分化していくと考えられる。規模の拡大・統合化は、各業種に精通したコンサルタントを擁し、業界別の営業体制を構築していくタイプ。それに対して、専門分野への特化は、高度な専門知識を武器に、ITや医療など特化した市場を深めていくタイプである。そして、特徴を打ち出せない人材紹介会社については、徐々に淘汰される方向に進むと思われる。


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