採用活動プロセスが確立している新卒採用と比べ、中途採用の悩みは「どうすれば応募者を集められるか」にある。そのため、ターゲットとなる人材に巡り合える確率の高い「募集手段」の選択と、上手な活用がポイントになる。募集手段には、大きく「公営(無料)」「民間(有料)」があり、職業安定法などにより、「直接募集」「職業紹介」「文書募集」「その他人材サービス」に分類される。
直接募集・委託募集 | 職業紹介 | 文書募集 | その他人材サービス | |
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公営(無料) | ・合同会社説明会 | ・ハローワーク ・学校 ・公営人材銀行 |
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民間(有料) | ・縁故 ・合同会社説明会 |
・人材紹介(登録型人材紹介、ヘッドハンティング・スカウト) | ・新聞 ・折り込みチラシ ・専門誌・業界紙 ・フリーペーパー ・転職サイト ・自社ホームページ ・ソーシャルメディア |
・人材派遣 ・アウトプレースメント(再就職支援) |
縁故 | 社員や社員の出身校の先輩・後輩、出身校の教授・先生、知人・友人、親戚、取引先のつてなどを使って募集する方法。求職者のプロフィールをつかみやすく、コストもかからないのがメリットである。しかし、同質・同族の人材が集まることで組織の硬直化、競争意識の欠如なども考えられ、他の方法との併用が望ましいと言える。 |
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合同会社説明会 | 合同会社説明会(転職フェア)は、複数の企業がブースを出して、転職希望者に対して会社説明を行うイベントである。中小企業庁、商工会議所、ハローワークなど公的な機関や、民間のさまざまな転職メディアが主催するものがある。求人側として、最初の段階から人材と直接接触できる点が大きな魅力である。また、転職意向のある人材が来場しているので、その場で一次面接を行うことができるなど、スピーディーな対応が可能である。なお、公的機関が主催する場合、出展参画費用は基本的に無料である。民間の転職メディアが主催するものは有料だが、求職者の動員数は公的機関主催のものを上回ることが多い。 |
ハローワーク(公共職業安定所) | 国が運営する職業紹介事業機関。求人・求職ともに無料であり、あらゆる職種の紹介を行う。大都市圏では区ごとに、他の地域でも市単位など一定のエリアごとに設置される。複数の職種に渡っての求人が1ヵ所で行えるため、多職種募集の際には便利である。ただし、1回一人ずつしか紹介を受けられないので、大量募集、急な募集には不向きである。また、複数の応募者を比較検討することはできない。 |
公営人材銀行 | 管理職や専門職・技術職の人材を対象に、ハローワークの内部組織として専門職種の紹介を行う機関で、全国26ヵ所にある。管轄区を持たないため、広い斡旋対象地域となる。東京の場合で言えば、関東一円の人材を対象としている。登録しているのは、一定レベル以上の経験・技術・能力を持つ人材である。ハローワークと比べると、扱う人材の年齢層や技術レベルに違いがあり、若年層の採用は期待できない。 |
人材紹介 | 中途採用を希望する企業に、条件に合った人材を紹介するサービス。知識・スキルや経験、本人の意向などをもとに、ある程度の絞り込みを行った上で紹介するので、企業側の採用業務を大幅に削減することができる。人材紹介には、「登録型」と「スカウト(ヘッドハンティング)」がある。登録型は、転職意向のある人材に予め登録しておいてもらい、その中から企業に推薦する候補者を探し出す。公募できない内密の募集も可能で、成功報酬型が一般的である。スカウトは、企業の要求に見合った人材を探し出し、転職への動機づけを図った上で紹介するというもの。マネジメントクラスやハイスペックな技術者などを扱うケースが多い。ただ紹介、採用するまでにある程度の時間がかかる。 |
新聞 | 新聞広告の特徴は、発行部数の多さと広範囲に配布される一般性にある。日刊紙という形態の持つ情報の鮮度の高さにより、読者からの反応が速く、広告の即効性が期待できる。また、地方での採用では、地元の有力紙が効果的である。新聞広告は即効性はあるものの、保存性が低く、広告生命が短いという弱点があり、掲載後の応募ピークは2~3日後と言われている。応募締め切りは、掲載日から一週間が妥当と思われる。 |
折り込みチラシ | 折り込みチラシには、新聞社は直接関与していない。広告代理店や印刷会社が新聞専売所に持ち込む形だ。地域の選択が細かくでき、配布する日取りが自由に選べることから、地元での人材募集に効果的である。求人広告の中でも掲載制限が少なく、料金が割安であるため、比較的広いスペースを使って、自社の特色・労働条件をアピールできる。中小企業や各店舗・事業所ごとに利用されることの多いメディアである。ただ他の広告にまぎれたり、新聞と一緒に破棄される可能性も高く、広告効果が長続きしない面もある。 |
専門誌・業界誌 | 媒体の特性上、保存・反復利用されることが多く、半年後、1年後に問い合わせが来るなど、広告効果はかなり長い。即時採用の目的には向かないが、長期的なスタンスでターゲットとなる求職者を応募に導く手法として、利用することができる。応募者が採用に結び付く可能性は高いものの、他メディアに比べ発行部数が少ないため、多職種募集や大量採用、新卒採用には不向きである。 |
転職サイト | インターネット上の転職サイトは、紙媒体である就職情報誌から発生したメディアが多い。そのような経緯から、中途採用を成功させる各社独自のノウハウを、紙面構成に反映させている。現在の中途採用手段において、最も一般的なスタイルと言える。何より、他のメディアと比べて掲載する情報量が多く、動画なども載せることができるため、さまざまな側面から求職者に自社の特色や魅力をアピールしやすい。また、求職者も条件検索を簡単に行えることから、目的のはっきりした求職者を集めやすいと言える。ただし、掲載期間終了後は閲覧できない。 |
自社ホームページ | 自社サイト内の求人ページ(採用HP)も、有力な募集メディアである。自社ホームページという掲載費がかからないメディアを有効に活用し、自社の価値観を明確に打ち出せば、極めて質の高い人材の採用が可能だ。事実、採用ホームページ経由の応募者は、入社率が高いというデータもある。また、掲載内容を自由に更新できるのも、他のメディアにない特徴である。ただ、タイムリーに情報を更新していくためには、一定の管理コスト(ページ作成費用、サイト運用管理費用)が発生する。 |
ソーシャルメディア | インターネットのSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を利用した中途採用。採用する側(企業)が一方的に選考するのではなく、企業と人材が対等な立場でお互いの理解を深め合った結果、採用に至るのが一般的である。また、企業と人材の情報のやり取りが第三者にもオープンにすることもでき、良い企業イメージの訴求効果が期待できる。SNSの利用は基本的に無料なので、初期費用は安くすむ。ただし、不用意な発言がきっかけで、ネガティブな情報がネット上に拡散してしまうリスクがあるので、情報管理には十分な配慮が必要だ。また、必然的に情報の受発信が増えるため、人事・採用担当者の負担は少なくない。 |
募集手段が決まったら、中途採用に関わる社内の採用体制を築き、募集スケジュール(ツール準備から採用決定まで)に関する詳細を決定する。
求人広告(転職サイトや印刷媒体)は「人を求める広告」であり「人を集める広告」である。一般の商品広告と比較すると、「社員の採用を目的とする」という点で、一線を画している。就職・転職という「人生の一大事」について決断を迫るものであり、そこでは企業と人のお互いが選び合う関係となる。商品広告と比較すると、以下のような違いがある。
求人広告 | 商品広告 | |
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目的 | ・人材の採用(会社説明会、訪問への動員) ・就職先としての企業のイメージアップ など |
・商品の販売促進(商品特性の認知) ・ブランドのイメージアップ ・企業の認知度アップ など |
特徴 | ・データや事実の表記が多い ・人が登場する広告が多い |
・イメージ広告が多い |
対象者 | ・比較的狭い(新卒の場合は卒業予定者、中途の場合は転職希望者に限定) ・受け手のアクションは慎重 |
・広い(不特定多数。ただし商品の特性により、かなり狭い層をターゲットとしている場合もある) ・受け手のアクションは速い |
広告期間 | ・概ね短い(期間が限定される) | ・短期から長期まで多種多様 |
宣伝材料 | ・仕事に関連した企業情報(仕事内容、待遇、人材育成方針 など) | ・商品の特性(性能・デザイン・品質) ・企業活動や経営方針 など |
メディア | ・比較的少ない(就職・転職を前提としたものが中心となる) | ・幅広い(テレビ、ラジオ、新聞などのマスメディアをはじめ、あらゆるメディアが対象となる) |
中途採用と新卒採用では、広告における表現手法も異なる。傾向として、新卒採用は“総論的”であり、事業内容、将来の展望など、企業の情報に焦点が当たる。一方、中途採用は“各論的”で、仕事(職種の説明、仕事の流れ、面白さ・やりがいなど)に焦点が置かれる。広告表現を考えるために必要な要素は以下の三点であり、これらの要素をいかに組み合わせるかが求人広告作成では重要だ。
企業側の要素 | ・業種(事業内容) ・企業規模(国内外展開)、知名度 ・現状と将来性 ・待遇、組織風土 など |
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応募者の要素 | ・知識、能力、スキル ・適性 ・学歴、経験 など |
両者を結び付ける際の外的要素 | ・広告期間 ・広告媒体 ・求人倍率、市況 など |
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