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2. アルバイト・パート雇用における労務上の注意点

アルバイト・パート雇用における労務上の注意点

正社員よりもきめ細かい対応が必要

前章でも触れたように、法律上は正社員もアルバイト・パートも、労働者としての権利に変わりはない。雇用する企業は、アルバイト・パートの労務管理にも充分な配慮が必要だ。例えばアルバイト・パートの場合は、勤務時間や出勤日数が正社員よりも少なく、時給や日給といった給与形態が一般的だ。勤務条件が個々に異なるため、有給休暇の付与日数や社会保険の加入・非加入にも違いがあり、さらには扶養控除内での勤務も絡んでくるなど、きめ細かい対応が求められる。

本章では、こうしたアルバイト・パート雇用時の労務上の注意点を整理する。

都道府県で異なる「最低賃金」

労働者を雇用した場合の最低賃金は法律で定められている。もちろん、アルバイト・パートにもこの最低賃金は適用される。最低賃金には、各都道府県に一つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があり、金額の高い方を当てはめなければならない。最低賃金は原則として10月に更新され、最新の金額は厚生労働省のWEBサイトで閲覧可能だ。

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最低賃金は、「時間給」で表示されている。自社の給与が日給や週給、月給制の場合には、時間給に換算して、最低賃金を上回っていることが必要となる。たとえば、日給制の場合には、日給を所定労働時間で割って、時間給を算出する。ただし、都道府県労働局長の許可を受けることを条件に、最低賃金よりも低い金額が適用される特例もある。

年収によって変わる「扶養・控除」

アルバイト・パートで生計を立てている人は別として、たとえば主婦などが家計の補助のために働きに出ているような場合、できるかぎり税金を抑えるために「扶養・控除の範囲」を考慮するケースが多い。アルバイト・パートを雇用する際の基礎知識としてこの「扶養・控除」について簡単にまとめる。

アルバイト・パートで得た年間の収入が「103万円」「130万円」「141万円」を超えるごとに、扶養や控除に関係する条件が変化する。一般には「103万円の壁」といった言い方をされるので、以下それぞれの「壁」を超えると条件がどう変わるのかを見ていきたい。ここではパートで働く主婦と、サラリーマンの夫のケースとして、図1をもとに解説する。

■ 図1:年収による扶養・控除・税・社会保険の関係

図1:年収による扶養・控除・税・社会保険の関係

1)「103万円の壁」:所得税と配偶者控除

年収が103万円を超えると二つの変化がある。第一点は、本人(妻)の収入に「所得税」がかかってくることだ(図1参照)。通常、所得税の計算を行う場合、年収から「給与所得控除65万円」+「基礎控除38万円」(=合計控除額103万円)が認められる。そのため、年収が103万円までなら所得税を納める必要はない。しかし、103万円を超えると、その超えた分が課税対象所得となる。

第二点は、「配偶者控除」の対象外になることだ。妻のパートの年収が103万円以下であれば、妻は『税法上の扶養家族』として区分され、配偶者(夫)の給与所得から「配偶者控除38万円」が認められる。妻の年収が103万円を超えた時点で配偶者控除はなくなるが、代わって「配偶者特別控除」が適用され、年収103万円~141万円の間は控除額が10段階で徐々に減額される仕組みとなっている。

2)「130万円の壁」:健康保険と公的年金

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妻のパートの年収が130万円未満であれば、『保険上の扶養家族』となり、夫の社会保険の被扶養者として扱われるので、妻は健康保険料を負担する必要はない。年金についても年収が130万円未満の妻は第三号被保険者で区分され、夫が厚生年金を負担している。この年収「130万円の壁」を超えることで、パートで働く妻は、健康保険と公的年金の支払い義務が生じる。この負担額は住民税・所得税と比較して重い。一般的に健康保険と公的年金に加入すると、年収を150万円程度まで増やさないと、手取り金額は逆に減ってしまう。

※ただし、一定の条件(勤務時間と勤務日数の両方が正社員の4分の3以上)を満たせば、年収には関係なく勤務先の健康保険・厚生年金の加入者とすることが法律で定められている。

社会保険の負担と並んで、影響の大きな変化が夫の勤務先の家族手当だ。、夫の勤務先の就業規定によって扶養家族の範囲が定義され、家族手当(配偶者手当)が支給されているケースが多い。月額5000円~2万円と高額なため、扶養家族をはずれた場合、家計への打撃は大きい。

※ただし、多くの企業では扶養家族の範囲として「税法上の扶養家族(年収103万円以下)」もしくは「保険上の扶養家族(年収130万円以下)」を就業規則で定めているため、妻の年収が103万円を超えた時点で配偶者手当が支給されない場合もある。

3)「141万円の壁」:配偶者特別控除

妻のパートでの年収が141万円を超えると、10段階で徐々に減額されていた夫の「配偶者特別控除」が0になる。

※ただし、配偶者特別控除は、配偶者の課税対象所得が1000万円を超えている場合は受けられない。

◎アルバイト・パート年収と配偶者特別控除の変化
配偶者特別控除によって、103万円の壁の家計への影響は比較的小さく、年収103万円をあまり意識しないで働く人の方が多くなっている(夫の勤務先に家族手当がない、もしくは条件が「保険上の扶養家族(年収130万円未満)」の場合)。

実際に主婦パートに対して行われた調査では、約半数が「自分の収入に上限を設けている」と回答している。パートで働く人がこうした年収の壁を意識していることは留意しておきたい。

※住民税は所得税とは課税方法が異なり、年収100万円を超えると自分で負担しなくてはならなくなるので注意が必要だ。また、各自治体で異なる。

有給休暇・社会保険・産休・育休

有給休暇・社会保険・産休・育休などについては、勤務時間や出勤日数などが一定の条件を満たした場合には、正社員と同じく付与・加入しなくてはならない。

1)有給休暇

アルバイト・パートの場合には1日の勤務時間が短かったり、出勤日が少なかったりするため、正社員と同じ日数が付与されるとは限らない。所定労働時間や所定労働日数に応じて有休を付与するやり方を「比例付与」といい、勤務条件ごとの有給休暇日数を表にまとめた。

■ 表2:年次有給休暇の比例付与
週の
所定
労働
時間
週の
所定
労働
日数
年間の
所定
労働
日数
継続勤務期間
6カ月 1年
6カ月
2年
6カ月
3年
6カ月
4年
6カ月
5年
6カ月
6年
6カ月
以上
30時間
以上
5日
以上
217日
以上
10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
30時間
未満
4日 169~
216日
7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~
168日
5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~
120日
3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~
72日
1日 2日 2日 2日 3日

※「週の所定労働時間」「週の労働日数」「年間の所定労働日数」のいずれかが該当すること。

a)健康保険・厚生年金
アルバイト・パートの場合、「1日、または1週間の所定労働時間」と「1カ月の所定労働日数」の両方が、正社員の4分の3以上であれば、強制加入となる。この場合の比較対象となる正社員は、そのアルバイト・パートと同じ事務所で同じような業務をしている正社員である。また、所定労働時間や所定労働日数が4分の3未満だったとしても、実際には残業などでそれ以上働いているという場合には、加入対象となる。

※前述したとおり、年収130万円を超えた場合も加入適用となる。

b)雇用保険
1年以上継続して雇用されることが見込まれ、さらに週20時間以上勤務する場合には、アルバイト・パートであっても雇用保険の加入対象となる。雇い入れ時には1年以上の雇用が見込まれていなかった場合でも、契約を更新するなどして1年以上の雇用が見込まれるようになった時点で加入となる。

ただし、学生や満65歳を超えて雇用された人については対象とはならない。

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c)労災保険
労災保険は、雇用形態にかかわらずすべての従業員が対象となる。従って、たとえば週1日だけのアルバイト・パートであっても、企業は必ず労災保険に加入しなくてはならない。労災保険については、1人ずつの加入手続きは必要なく、保険料の納付の際にアルバイト・パート分の給与も含めて保険料を計算することになる。

3)産休・育休

アルバイト・パートについても、産前6週間・産後8週間の産休取得が可能である。ただし、この間の給与等については企業側の支払い義務はない。

育児休業については以下の二つの条件をいずれも満たす場合に取得可能となる。

  • 1年以上継続雇用されていること
  • 子供が1歳を超えても継続して雇用することが見込まれること

つまり、企業側とアルバイト・パート側の双方がともに長期勤務を希望している場合にのみ、育休取得が可能になる。なお、育休中は企業側に賃金の支払い義務はない。

18歳未満のアルバイト・パート

ファーストフードやコンビニエンスストアをはじめ、高校生をアルバイトとして雇用している企業は少なくない。この場合、ほとんどの場合が18歳未満の年少者となるため、特別な注意が必要となる。

  • 労働時間:1週間の労働時間は40時間、1日の労働時間は8時間を超えていはいけない
    この条件の適用は厳密で、時間外労働(残業など)や変形労働時間制による勤務を行わせてはならない
  • 午後10時から午前5時までの間の勤務は原則禁止
  • 小学生・中学生は原則雇用できない
    (中学生に関しては所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合にのみ可能)
  • 危険有害業務の禁止や制限がある

いずれも厚生労働省から詳しい指針が示されている。また、高校3年生の場合、在学中に18歳に達するが、卒業までは18歳未満と同等の取り扱いとしている企業がほとんどだ。

改正パートタイム労働法

2006年より「改正パートタイム労働法」が施行されている。現在のアルバイト・パートに関する労務上の注意点は、ほぼすべてこの法律にまとめられているので、アルバイト・パートを雇用する場合には、ぜひ内容を押さえておきたい。

以下、同法が規定しているアルバイト・パート雇用の際のポイントをまとめてみよう。

  • 「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」については文書で明示すること
  • アルバイト・パート従業員から求められたときは、待遇を決定した事項についての説明を行わなくてはならない。
  • 賃金は、アルバイト・パート従業員の職務の内容、成果、意欲、能力、経験などを勘案して決定することが努力義務となる
  • 正社員と同じ仕事・人材活用の仕組みであれば、単位時間当たりの賃金は同一でなくてはならない
  • 正社員と職務内容が同じアルバイト・パート従業員に対しては同じ水準の教育訓練を実施することが努力義務となる
  • すべての待遇についてアルバイト・パート従業員を差別的に取り扱うことが禁止される
  • 正社員登用のチャンスを整える

改正パートタイム労働法は、「同じ仕事内容であれば、雇用形態の違いで給与や待遇、教育機会に差をつけてはならない」という考え方が基本になっている。

これは人件費削減を目的に、従来なら正社員がやっていた業務を非正規雇用に置き換える企業が増えたためだ。正規雇用を必要以上に非正規雇用化する動きに、歯止めをかける法律といえる。


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