人事制度構築フロー

人事制度構築はどのような手順で行うのだろうか。ここでは、既存の企業が人事制度を新たに構築する際の一般的なフローを見ていく。
1)STEP1/経営理念の再確認
人事制度は、企業の経営理念に基づかなくてはならない。そのため、人事制度をつくる際には、まず自社の経営理念・基本理念を再確認した上で、「会社は従業員のことをどう考えているのか」という「人事ポリシー(人事理念)」を明文化すること不可欠だ。人事ポリシーは人事制度を構築する上での大方針となり、各仕組みとの整合性、社員へのメッセージを伝える場合にも重要な役割を担う。
2)STEP2/現状分析と制度設計のグランドデザイン
現在の人事制度の課題を分析した上で、大まかな人事制度のグランドデザインに入る。現状分析では必要に応じて、従業員満足度(ES)調査や各部門へのヒアリング、他社との給与水準の比較などを実施する。経営理念や人材ポリシーに沿う形で、等級制度や評価制度、給与制度の改定の方向性を決定する。
3)STEP3/等級制度の設計
人事制度の骨格になる等級制度を、まずは構築する。STEP2で決めた方向性(例:属人ベース「職能資格制度」、職務ベース「職務等級制度」、役割ベース「役割等級制度」)に基づき、ここでは等級の段階数や、等級一つひとつの「資格要件」を定義する(例:職能資格制度は「資格要件書」「職能要件書」、職務等級制度は「職務定義書(ジョブ・ディスクリプション)」、役割等級制度は「役割定義書」、など)。こうして、等級制度の細部を設計していく。
4)STEP4/評価制度(人事考課)の設計
等級制度で定義した資格要件に対応する形で評価の基準を定める。評価制度の核心は、何を評価するのか(評価項目)、どう評価するのか(評価基準)だ。評価制度によって従業員のモチベーションは変わる。経営理念や人材ポリシーをベースに、企業が望む方向へと従業員を意識づけ、モチベーション向上につながるような評価制度を心がけたい。
5)STEP5/報酬制度の設計
STEP4の評価基準を給与・報酬に適正に反映するため報酬制度を作成する。等級ごとの給与額の上限と下限、ならびに給与額間の差(ピッチ)を定めるが、従業員が「その給与で無理なく生活していけるのか」を十分シミュレーションすることも重要だ。さらに、改訂した報酬制度をもとに、人件費の総額を試算し、検討を重ねていく。
6)STEP6/新制度への移行シミュレーション
新しくできた制度はただちに実施するのではなく、移行した場合のシミュレーションを行わなければならない。総額人件費の変化、移行後の労働生産性の変化などを確認し、改善していく。また、従業員(労働組合)に対して十分な説明を行い、理解と協力を求める。処遇が大きく変動する従業員に対しては、数年程度の猶予期間を設けるなどの措置も必要となる。
7)STEP7/制度の定着化
人事制度を狙いどおりに機能させるには、制度自体の浸透(従業員への周知、管理職や考課者の研修)と実際の運用(新制度に基づく人員配置・組織運営、人材開発など)が重要である。新人事制度の運用を通じて、さまざまな課題を発見し、改善していくことが欠かせない。
次章からは、上記の等級制度、評価制度、報酬制度を詳しくみていく。