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日本における人事制度の変遷と企業意識

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時代背景とともに変化する人事制度

人事制度は、時代とともに大きく変化してきた。ここでは、1950年代以降における日本企業の人事制度の変遷を概観してみたい。

1950~1960年代/高度経済成長期

人事 年功序列、終身雇用、企業内労働組合、新卒採用
賃金 年功給
経済・社会 高度経済成長
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1950年代に日本で急激な高度成長期がはじまると、企業は慢性的な人材不足に陥った。そこで、金の卵と呼ばれる中卒の若年労働者が地方から都市部へ集団就職するようになり、社会現象となった。一方、大企業では新卒採用において、大卒者を確保するために青田買いを進めるなど、採用競争が激化した。

こうした中、多くの企業は採用力強化のため、魅力ある人事制度を導入した。安心して働ける「終身雇用」、勤続年数に比例して賃金が増額する「年功序列制」、労働者が団結して権利を確保するための「企業内組合」、これらは「日本型経営システム」の三種の神器と呼ばれ、日本の経済成長を支えた。

この年功序列制は学歴・勤続年数・性別を基本的な骨格としている。勤続年数ごとに、習熟度も上がるため、賃金も増えていくという仕組みである。

1970~1989年/安定成長期からバブル経済期

人事 職能資格制度、終身雇用、新卒採用
賃金 年功給
経済・社会 安定成長期、バブル景気

勤続年数によって、一律に賃金があがる「年功序列制」では、公平な人事評価ができない。この問題を解決するために導入されたのが、日本固有の等級制度といわれる「職能資格制度」だ。社員が保有する能力を等級に分け、従業員を格付けし、昇進・昇格、給与などを決定するシステムである。ただし、賃金体系の基本は年功序列であり、そこに等級ごとの差をわずかに反映する形をとった。それでも「年功序列制」と比較すると、従業員にとって、評価の納得性やモチベーション向上につながり、効果的に機能した。

1980年代後半、バブル景気がはじまると、新卒市場で大卒が空前の「売り手市場」になるなど、再び労働力の需要が大きくなった。人材の確保が経営課題となり、従業員にとって魅力のある人事制度である「職能資格制度」「終身雇用」は、日本企業に深く浸透していった。

バブル崩壊後は景気の失速とともに右肩上がりの給与体系、人事制度そのものが見直されていく。

1990~2004年/バブル崩壊から失われた10年

人事 旧成果主義、リストラ、中途採用の一般化
賃金 旧成果給
経済・社会 バブル経済崩壊、IT・インターネットの普及

バブル経済の崩壊によって多くの企業が経営の効率化を迫られたのが1990年代だ。この時期は「失われた10年」とも呼ばれ、人事を巡る環境も大きく変化した。(その後、不況の長期化によって2000年代も含めて「失われた20年」という表現も現れた)

象徴的なのは、成果をあげた従業員に多額の給与を支給するアメリカ型成果主義が注目され、導入する企業が相次いだことだ。あわせて、リストラ・早期退職制度・選抜人事など、余剰人員を削減し、高い業績をあげる人材に経営資源を集中させるような組織の再編が当たり前になった。インターネットなどIT技術が進歩し、従来、人が行っていた業務をIT化したことで、より人員や組織の合理化が進んだ。

企業が人材を育成する余裕を失ったことで、大手企業でも即戦力の中途採用が一般化。成果をあげている人材の行動や特性を分析・研究することで、優秀な人材を育成しようとする「コンピテンシー」の考え方が、浸透しはじめたのもこの時期だ。

しかし、数値目標で管理するアメリカ型の成果主義は、結局日本では成功せず、企業は日本に適合する新たな人事制度を模索することになった。

2004年~/長期化するデフレ不況、グローバル化への対応

人事 新成果主義、グローバル化への対応、戦略人事
賃金 新成果給
経済・社会 デフレ不況の長期化、少子高齢化、価値観の多様化
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2000年代には、ITバブルや小泉構造改革、米国の堅調な消費により、緩やかな景気回復期もあったが、「実感なき景気回復」とも呼ばれるように、デフレが定着し経済の低迷が続いた。国際的な企業間競争が激化し、生産拠点や資材調達先の海外移転が一層進むなど、グローバル化が一段と加速した。国内でも少子高齢化による国内市場の縮小が顕在化。また、好況期を知らない世代も社会人となって労働市場に加わり始め、働き手の価値観も多様化しはじめた。春闘の形骸化、ベア廃止に象徴されるように、「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」などの旧人事制度は、力を失っている。

人事の役割も、従来の「管理」から、「経営視点」「現場課題解決」「人材開発・組織開発」へと変化していった。90年代に導入された成果主義も見直しが進み、単一の成果だけを求めるのではなく、複数の評価を組み合わせる「新成果主義」へと移行する企業が増えている。また、就労形態の多様化、団塊世代の大量退職、改正高齢者安定法による実質的な65歳定年制など、新たな課題への対応も求められている。

人事制度に対する企業意識

実際に企業は人事制度に対してどのような意識を持っているのだろうか。評価制度(人事考課)を中心に現状を整理したい。

■ 2006年以降における人事考課制度の改定状況および今後の改訂予定
 2006年以降における人事考課制度の改定状況および今後の改訂予定

出典:「人事考課制度の最新実態」労政時報3797号(2011年5月13日)より

(注)今後の「予定あり」には、検討中も含む

2006年以降に「人事考課制度を改訂したか」という質問には、およそ半数の企業が改訂したと回答。特に「管理職」と「非製造業」は「改訂した」とこたえた企業が半数を超える。これは一般社員よりも管理職の人事制度の改革が急務であると考えている企業が多いこと、製造業よりも非製造業の方が企業を取り巻く環境変化に敏感なことが見て取れる。

また、「今後改訂する予定があるか」という問いにも、およそ半数近くの企業が「予定あり」と答えている。一部再改訂する企業が含まれると考えても、「すでに改訂した」企業と「今後改訂する」企業をあわせると、ほとんどの企業が評価制度の再構築に着手している。

■ 人事考課諸施策の実施割合
人事考課諸施策の実施割合

出典:「人事考課制度の最新実態」労政時報3797号(2011年5月13日)より

どのような人事考課が行われているかの調査では、もっとも多いのが「目標管理制度」で、8割の企業が導入している。次いで「成果につながる行動や業務プロセス」を重視する企業が多く、プロセスも含めて評価することで、成果主義を柔軟に運用していることがうかがえる。また、「自己評価」に続く4番目には「能力」を潜在能力ではなく「発揮された能力」と規定されていることに注目したい。従来の「職能資格制度」とは異なるアプローチが導入されていることがわかる。

また、昇給・賞与に関しても、ほぼすべての企業が人事考課を反映させていると回答している。考課結果は、8割の企業が各従業員にフィードバックしており、考課の透明性やモチベーション向上に配慮している。

企業が認識する人事制度の課題

しかし、これだけ評価制度に気を配っているにもかかわらず、適正な評価ができていると回答した企業は2割にとどまっている。企業が認識している問題点をまとめた。

  • 考課者による評価のばらつき
  • 目標の難易度が一定ではない(被評価者に不公平感が出る)
  • 職種や職場によっては目標を立てにくい

こうした課題の解決には、考課者トレーニングや目標のプロセス管理、よりシンプルな評価制度への移行などが検討されている。

また、海外にも拠点や関連会社を持つグローバル企業では、日本国内の人事制度と現地の事情(各国で一般的な人事制度、国情や社会慣習なども含む)を考慮したグローバル人事制度との整合性をどう実現するかが、喫緊の課題となっている。


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よくわかる「人事制度」講座

人事制度とは

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人事制度とは、広義には労務管理を含めた従業員の「処遇」に関するしくみ全般を指す。ここではその意義と運用のポイントについてまとめた。


等級制度の実際

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社内序列の基盤となる「等級制度」のしくみと種類にはどのようなものがあるか。それぞれのメリット・デメリットとは?


評価制度の実際

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人事制度の方針を決定する上で重要な役割を持つ「評価制度」。その意義・目的と運用のポイントについて紹介する。


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大きく「月例給与」「賞与」「退職金」の三つに分類される報酬制度。人材の流動化とともに進む変化とは?


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人事管理制度全般にかかわる「人事異動」「出向」「転籍」「退職」「定年制」「解雇」「昇進」「コース別人事管理」について紹介する


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ここでは広義の人事制度の中から、注目度の高い「福利厚生施策」について、そのポイントを解説していく。


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研修・人材育成
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社員研修・人材育成
新人研修・新入社員研修
マネジメント・管理職研修
モチベーション・組織活性化
グローバル人材育成
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コミュニケーション研修
営業・販売研修
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採用
人事担当者のための採用ノウハウ。採用の目的別に、基本、準備、注意点まで網羅。
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アルバイト・パート採用
人材派遣
新卒採用
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新卒紹介
新卒採用アウトソーシング
新卒採用コンサルティング
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人事戦略・人事系IT
企業に不可欠な人事システム、人事制度を解説。この分野のトレンドも把握できます。
人事制度
人事システム
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人事労務
テーマに特化した労務関係の取組みを解説。導入の際のヒントが見つかります。
ワーク・ライフ・バランス、働き方改革
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