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評価制度の実際

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(1)評価制度の意義・目的

●評価の対象が、人事制度の方針を決定する

評価制度の実際

かつて評価は「査定」「人事考課」などと呼ばれていたが、現在では「人事評価」または「人材評価」、もしくは単に「評価」と言うのが一般的だ。そして、評価のしくみで重要なのは「評価対象」である。何を評価の対象とするのか(年功or能力or職務or役割)によって、人事制度の方針が決まってくるからだ。

評価制度の実施フローは、「評価対象の決定」→「評価項目の設定」→「評価基準の決定」→「評価の実施」→「評価結果の決定」→「評価結果のフィードバック」の順に進む。このように評価のしくみを決めることにより、等級制度や報酬制度のしくみも自動的に決まってくる。

評価制度・等級制度・報酬制度の関係

図表:評価制度・等級制度・報酬制度の関係

●人が人を評価する以上、完全無欠な評価はあり得ない

評価制度に納得性・説得性が十分にあれば、人事制度そのものに対する納得性・説得性が得られる。しかし、人が人を評価する以上、どうしても印象や主観、感情が入り込むことになり、完全無欠な評価はあり得ない。そこで、印象評価や主観評価を防ぐために、評価を行う際は、以下のようなしくみ・工夫が必要になる。

【印象評価や主観評価を防ぐしくみ・工夫】
評価制度
  • シンプルでわかりやすいものにする。必要以上に複雑にはしない
  • フェア(公正)であることを念頭に置く
  • 評価対象、評価項目、評価基準がオープンになっている(社内に公開されている)
評価者
  • 評価者(管理職層)が、評価制度を十分に理解している
  • 正しい評価を行うために、評価者研修を実施する
被評価者
  • 納得性を高めるために、被評価者自身の自己評価も実施し、上司評価と擦り合わせが行われるようにする
フィードバック・異議申し立て
  • 最終的な評価結果が、被評価者にフィードバックされる
  • 異議申し立てについて、評価再検討委員会などが設けられている

(2)評価制度の種類

次に、評価制度の種類として代表的な「年功評価」「能力評価」「職務評価」「役割評価」の四つについて、ポイントを紹介する。

●年功評価:年齢や経験で評価するため、結果平等に陥りやすい

年功とは、「年齢」をはじめ、「入社年次」「勤続年数」「経験」「学歴」などを指す。年功評価は、これらを評価対象として、評価結果を導くものであり、評価対象を細分化した評価項目や、評価項目ごとの評価基準(ものさし)を設ける必要はない。そのため、評価のしくみは非常にシンプルでわかりやすいものである。人事管理に手間暇がかからず、効率が良いというメリットもある。

しかし一方で、等級や報酬が年齢などで決まってしまうため、新たにチャレンジしようとするマインドが抑制されることになり、年功の少ない若年層から不満の声が聞かれることもある。このような年功評価が成立するには、以下に示したような条件が必要となるが、前提条件が大きく崩れている現代では、年功評価を行うこと自体が非常に難しくなっている。

年功評価が成立する条件

  • 経済状況や会社業績などが、高度な右肩上がりの成長段階にあること
  • 労働力不足の状況(傾向)にあること
  • 経営や事業、業務知識や専門知識、技能や技術などを取り巻く環境変化が、ゆるやかであること(変化が少ないこと)
  • 従業員の年齢構成がピラミッド型であること

●能力評価:職務遂行能力(職能)の評価が、結果的に年功評価となる構造的な問題が内在

能力評価とは、職能資格制度にもとづく人事考課の「能力考課」のことを指す。職能資格制度による評価(人事考課)は、「能力考課」「情意考課」「成績考課」の三つから行われるが、一般的には能力考課に大きなウエートが置かれる。前述したように、ここでの能力とは、職務を遂行するうえで必要な「職務遂行能力(職能)」のこと。職能資格制度の下、資格ごとに求められる職務遂行能力は、「職能資格要件書」または「職能資格基準書」として定められる。具体的な評価項目には、職務遂行上保有すべき知識・技能・技術、および職務遂行に期待されるポテンシャル(潜在能力)として、理解力や判断力、折衝力、企画力、統率力などがある。これらの能力は、その保有のレベル、さらに習得度や習熟度を基準として評価される。

当初は、年功よりも能力を評価する斬新な評価制度として、多くの企業が導入した。しかし、そもそも能力考課には、構造的な問題(欠点)が存在した。能力(職務遂行能力)が年齢や経験年数を重ねることによって習得・習熟され、年齢や経験年数とともに習得度や習熟度も増していく制度設計となっているため、制度運用がどうしても年功的になってしまうのだ。もっとも、経済や会社業績が安定的な右肩上がりの成長を続けていた1970年代、80年代には、この欠点が大きな支障とはならなかった。しかし、90年代に入り、成長経済(インフレ基調)が成熟経済(デフレ基調)に変わり、平成大不況が深刻化する過程で、年功的運用に陥ってしまう能力考課の欠点が、問題視されるようになった。

●職務評価:職種と職位の相対的価値で決定。環境の変化により、職務価値の見直しが必要

職務評価とは、職務分析によって得られた情報(職務記述書)をもとに、従業員それぞれに課せられている職務(職種・職位)について、その内容や責任、作業条件などに応じた相対的な価値を評価するものである。職務主義にもとづく人事制度を採用するアメリカの企業では、職務評価を導入する企業が多い。

職務は、「職種」(営業職、技術職など)と「職位」(係長職、課長職など)の2要素で構成されるが、職位にウエートが置かれることが多い。例えば課長という職位の場合、営業課長、技術課長などが職務となる。これら職務にはそれぞれに「職務価値」があり、営業課長と技術課長の職務価値が異なれば、基本給(職務給)も異なる。なぜなら、職務評価は職務価値を評価対象としているからだ。そのため、能力があっても一定の職務に就いていなければ、等級や報酬は低くなる。この点が年功評価、能力評価とは大きく異なる。

職務評価は「職務記述書」にもとづいて行われるが、職務記述書の中には職務の内容や範囲、必要とされる専門知識や専門技術、権限や責任、部下の人数などを管理する組織の大きさといったものが詳細に定められている。しかし、大企業のように職務の数が多い場合、作業量は必然的に膨大になる。また、近年のように環境変化の激しい状況下では、職務価値も目まぐるしく変化するため、職務記述書の書き換えに膨大な労力とコストを要することになる。

●役割評価:役割とは、職位(役職)と職位ごと求められる成果責任を合わせたもの

役割評価は、個々人に対する「役割」をもとに評価を行う。その際に重要なのは、「何を役割とするか」ということ。企業によって、役割の考え方や定義が異なる場合があるからだ。例えば、単純に「職務」を役割とするケースもあるが、一般的には職位(役職)と職位ごとに求められる「成果責任」を役割とするケースが多い。この場合の成果責任は、主に会社業績に対する貢献度のことを指す。

役割評価が台頭してきた背景には、職務評価の問題点に対応していく中で、しくみとして合理的なものと判断されるようになってきたからだ。職務評価では、職務記述書に規定された職務さえ果たしていれば、一定額の職務給が支払われる。このため、職務拡大や会社業績貢献へのチャレンジ精神が欠如するケースが出てきた。この欠陥を補うため、課長や部長といった職位に、「成果責任」という要素を取り入れ、役割としたのである。つまり、役職者に対する成果への貢献を求めたのだ。そのため、役割評価は管理職層のみを対象として導入するケースが少なくない。一方、一般の従業員に対しては、「目標管理制度」を別途設けて、対応するケースが多いようだ。なお、役割評価に基づく基本給の構成は、役割に対して支給される一定額の役割給と、成果評価によって変動する成果給の二つとなる。

(3)評価制度の運用

●評価対象・評価項目・評価基準を一つのパッケージとして、社内にオープンにする

評価制度の運用について、以下、順に概略を示す。まず、制度設計の段階では、「評価対象」を決め、評価対象を具体化した「評価項目」を作成し、評価のモノサシとなる「評価基準」を定める。これら三つは一つのパッケージとして、社員に対して公開する必要がある。評価のしくみがオープンになることによって、評価制度に対する説得性や納得性が生まれるからだ。特に、評価基準の公開は、評価のしくみに客観性を持たせる意味でも大変重要だ。

●「多段階評価」で行われるが、評価の客観性を担保するために「多面(360度)評価」を行うケースも

次に、具体的な運用段階に入る。評価制度では、評価される人を「被評価者」、評価する人を「評価者」と呼ぶ。かつては人事部門にも評価の権限があったが、現在では職場の部下のことを最もよく知る直属の上司(課長クラス)の評価、さらに直属の上司の上司(部長、部門長など)の評価が重要視されている。評価のしくみは人事部が作るが、運用するのは現場の管理職、ということだ。

評価方法は一次評価、二次評価など「多段階評価」で行われる。ただ多段階評価では、課長、部長、部門長といった「縦の関係」で評価が行われるため、部下と上司の「相性」や「好き嫌い」などの主観や印象が入り、評価の客観性に疑問が生じることがある。そのため、「多面(360度)評価」などを取り入れ、縦の関係だけでなく、他部門の上司、同僚、取引先や顧客など、「横や斜めの関係」も組み込んで評価の客観性を担保するケースが増えている。

●相対評価と絶対評価

評価方法と合わせて、「評価分布」をどうするかも重要な課題である。評価分布には「相対評価」と「絶対評価」の二つがある。「賃金の原資」には限りがあることから、相対評価を採用する企業も少なくないが、被評価者に対する納得性や説得性の高いのは絶対評価である。

【相対評価と絶対評価】
相対評価 あらかじめ評価結果の分布を、一定割合に割り振る方法。評価分布は標準分布を示すため、中間の評価が多くなる傾向がある
絶対評価 厳密な評価基準に基づいて、評価結果を導く方法。納得性や説得性は高いが、仮に被評価者全員がA評価に該当すれば、全員がA評価という状況になる

●社員区分、資格や等級ごとに評価ウエートを変え、点数化して総合評価する

評価ウエートとは、評価要素や評価項目について、評価の比重を変えることである。例えば、職能資格制度では、勤務態度や仕事に対する取組姿勢などを見る「情意考課」に対して、「能力考課」にウエートが置かれる。また、幹部社員や管理職、一般社員といった社員区分、資格や等級ごとに評価ウエートを変えるのが一般的だ。例えば、幹部社員には業績・実績が重視されるため、情意考課などを0%とするケースが多い。また、評価ウエートは、そのまま点数化することが可能なので、評価要素ごとの点数を加点して総合点を算出し、「総合評価」を導き出した後、部門間や担当者間の調整を経て、最終的な評価が定まることが多い。

(4)目標管理制度における目標とフロー

●組織目標と個人目標の整合性が重要なポイント

評価制度の中では、「成果」を評価する手法、あるいはサブシステムとして「目標管理制度」を導入する企業が多い。目標の達成こそが、成果にほかならないからだ。その際、目標の「基点」となるのは、中長期経営計画(経営戦略)から導き出された年度単位の「経営目標」である。この経営目標が「組織目標(部門長目標)」へとブレークダウンされ、さらに、部、課、係、そして社員一人ひとりの「個人目標」へとブレークダウンされていく。

ブレークダウンのプロセスで重要なのは、組織目標との整合性。部長、課長、係長、社員一人ひとりの仕事目標は、部門長の仕事目標と整合性が取れてなくてはいけない。つまり、組織目標との整合性のない個人目標をいくら達成しても、高い成果評価は得られないのだ。そして、目標としてまず上げなくてはならないのが組織(部門)としての「業績目標」。これを個人レベルにブレークダウンしたのが「個人業績目標」である。

また、業績目標のほかに、経営的課題解決の目標が重要である。例えば、事業部門であれば新製品・サービスの開発、管理部門なら新しい経営・財務・人事などのしくみの創造といった課題が挙げられる。さらに、人材育成の目標も忘れてはならない。特に、部門長以上の職位にある人たちには、非常に重要な課題と言えるだろう。

●「目標設定」→「中間レビュー」→「成果評価」に至る流れ

目標管理制度では、個人目標の設定に際し、組織目標との整合性を図りながら、部門長と各部長、部長と各課長、課長と係長および社員といった関係性の下、部下と上司による「目標設定面談」が行われる。その際、個人目標は複数設定し、目標それぞれに優先順位を付ける。ツールとして「目標管理シート」や「目標チャレンジシート」を用意し、目標ごとに「いつまでに」「何を」「どうやって」「どの程度に」などを記入する。個人それぞれの目標管理は、面談における上司の合意を得たうえで、スタートする。

期初に設定した目標は、中間決算などが行われる期中において、達成状況の客観的な把握と分析のために、上司と部下の面談を通じて「中間レビュー」を行う。そして、期末の成果評価においては、被評価者である部下自身による「自己評価」と、「上司評価」の「すり合わせ面談」を行い、上司評価の納得性や説得性を高めることが重要である。また成果評価に加えて、成果に至る「プロセス」で発揮された能力評価も行う「コンピテンシー評価」を取り入れるケースもある。成果発揮が期待されるチャレンジを評価しようというものだ。そして、最終的に下された「評価結果」は、昇給、昇級・昇格、昇進、賞与などに反映される。


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