5. モチベーションの理論・用語解説

モチベーションの理論・用語
マズローの欲求段階説
マズローによって提唱された、人間のモチベーション理論の一つ。マズローは「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、低次元の欲求が満たされるとより高次元の欲求が生じてくると考え、人間の欲求を5段階の階層で理論化した。

マクレガーのX理論・Y理論
マクレガーによって提唱された、人間観・動機づけにかかわる二つの対立的な理論のこと。マクレガーは人間の本性と仕事に対する考え方について、次のようなX理論とY理論を唱えた。
人間は本来怠け者であり、仕事に苦痛を感じるので、強制されたり威嚇させたりしなければ働こうとせず、責任を回避したがるものである。
●Y理論人間は仕事に対して遊びと同様の喜びを持つことができ、自ら進んで困難な目標を達成しようと責任を引き受け、創意工夫のできる能力を持っている。
X理論は人の生まれつきの性質は悪であるという「性悪説」に立った人間観である。管理手法としては、監督による管理である。一方、Y理論は人の本性は善であるという「性善説」に立った人間観である。管理手法としては、目標による管理である。
ハーズバークの動機づけ・衛生理論
ハーズバーグが提唱した、職務満足および職務不満足を引き起こす要因に関する理論のこと。ハーズバークは職務満足の要因を、満足要因である「動機づけ要因」と、不満足要因の「衛生要因」に分類した。
達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進など
●衛生要因(不満足要因)会社の制度と管理、管理方法、賃金、人間関係、作業条件など
人は動機づけ要因が満たされた時には職務に満足感を覚える。しかし、衛生要因が満たされても不満足は解消するが、真の満足はもたらせないとハーズバークは提唱している。この考え方から、従業員のモチベーションを高めるためには、職務拡大や職務充実などが大切であることが分かる。

ブルーム、ポーター&ローラーの期待理論
ブルームが提唱し、ポーターとローラーらの研究により発展した理論。動機を、「期待」(努力が報酬に結び付くであろう期待)と「価値」(報酬に対する主観的な価値)の積で表されると説明している。自分の努力が結果に結び付き、報酬が得られ、それが自分にとって価値があれば動機付けられる、というものである。そのため、努力しても達成の可能性がない場合、また業績を上げても報酬などに魅力を感じなかったり獲得できなかったりした場合には、モチベーションは生まれてこないか、あっても弱いものとなる。
「成功の循環」モデル
マサチューセッツ工科大学教授のダニエル・キム氏が提唱する、「成功循環」モデルは、「関係の質」→「思考の質」→「行動の質」→「結果の質」→「関係の質」といった「成功の循環」の影響関係をモデル化したもの。
■ダニエル・キムの「成功循環」モデル

組織がうまくいっている時は、(1)「関係の質」が高まる→(2)「思考の質」が高まる→(3)「行動の質」が高まる→(4)「結果の質」が高まる、という好循環で回っていく。そして、この「結果の質」が良くなると、さらに「関係の質」が良くなっていく、というものである。例えば、以下に示したような形で、成功の循環が図られていく。
(1)関係の質 | 組織内の人たちの関係が良く、お互いに認め合っている |
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(2)思考の質 | 対話やディスカッションを通して良いアイデアや、助け合う思考が生まれる |
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(3)行動の質 | 結果として、新たな挑戦やお互いに助け合うという行動が生まれる |
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(4)結果の質 | 良い行動が生まれることで、売り上げや業績が向上していく |
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(1)関係の質 | 結果が出ることで、さらに組織の関係が良くなっていく |
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これまでのマネジメントは、成果・業績などの「結果の質」を重視してきた。そのために、管理者が社員にいろいろと施策を指示して行動を統制し、結果を生み出そうとしてきた。しかし、このようなアプローチでは、これからの時代、なかなか成果につながらないと思われる。複雑性の増す時代には、皆が主体性を発揮して行動することが求められるからである。何より、社員が主体性のある行動をしていくためには、思考も主体的でなければならない。そして、思考が主体的であるには、意見をオープンに交換できたり、互いに情報を共有できたりする、人的な「関係の質」が非常に重要になってくる。