3. モチベーション・組織活性化研修のプログラム例

モチベーション・組織活性化研修の中で、課題別(目的別)に行われているいくつかのプログラムを紹介していく。
1)新入社員の「早期離職」を防ぐ

近年、新入社員の早期離職傾向が強まっているが、その理由として、新入社員のモチベーションの低さを挙げる経営者、現場の責任者は多い。新入社員のモチベーション低下の主な理由は、採用の段階から生じている会社や仕事への理解不足によるアンマッチ・ミスマッチのほか、配属後の成長実感の欠如、先輩社員・上司との人間関係がうまくいかないこと、希望通りの仕事ができないことなど、さまざまである。これらの状況を踏まえ、なるべく早期に一人の社会人として、仕事に対する取り組み方や問題解決の思考法などを習得させていく必要性が生じている。
プログラムでは、個人ワーク・グループワークを通して、まず、会社や仕事、周囲の人と協働することなどに対する「意味づけ」を行う。そうすることで、目の前にある仕事・求められるミッションに対するやる気と行動への意欲が高まり、周囲との関係性を深く考え、行動するようになるからだ。その結果、一人ひとりが将来に向けてのキャリアビジョンを描いていけるようにもなる。このようなアプローチを通して、新入社員のモチベーションを高め、離職の防止へとつなげていく。また、その先には早期戦力化の実現も見据えている。
新入社員に対するモチベーションアップ研修の例
1.オリエンテーション
|
2.会社理解・仕事理解
|
3.仕事の質を高め、プロフェッショナルになるための思考法
|
4.良好な人間関係の作り方
|
5.モチベーションを上げるための思考法
|
6.キャリアビジョンの描き方
|
7.まとめ
|
2)自分でモチベーションをコントルールする セルフ・モチベーション・コントロール

モチベーションを自分自身でコントロールするのは大変難しいことだが、そのための基本となるのは、一人ひとりが気づきを得て、内面から変革行動を起こすことである。自分なりの目標を持ってそれを日常に埋没させないこと、日々の行動に意味づけを行っていくことが重要である。このように自分なりにモチベーションを維持、管理していくためには、自分でモチベーションをコントロールするスキルを身に付けていくこと(セルフ・モチベーション・コントロール)がとても重要だ。
セルフ・モチベーション・コントロールを目的とした研修では、自分でモチベーションをコントロールするためにステップを一つずつ確実に身に付けていくことがポイントとなる。また、研修が終わった後も、上司や同僚などと振り返りやフィードバックの機会を設け、意識してモチベーションをコントロールし、目標を達成していけるように仕向けていくことが大切である。
セルフ・モチベーション・コントロール研修の例
1.自分のモチベーションを診断する
|
2.ポジティブなセルフイメージを作る
|
3.目標作り
|
4.モチベーション・コントロールの技術
|
5.日常での振り返り、フィードバックの機会を持つ
|
3)個人の「やる気」を支える多様なアプローチ
モチベーション(やる気)は、働く個人の土台を支える大きな力である。しかし、働く個人を取り巻く就労環境は大きく変化し、かつ複雑化している。何より、組織からは強靭な気力(精神力)に基づいた主体性や自己責任が求められている。与えられる目標も、厳しいものがある。しかし、単にやる気を出すように求められているだけでは、何をどうすればいいのかよく分からないまま、日常業務に忙殺されることになってしまう。すると、なかなか思うような成果を出せず、場合によってはメンタル不全に陥るケースも出てくるだろう。そのようなリスクを回避し、個人が主体的に仕事に取り組めるよう、「やる気」を支えていくための多様な研修メニューが求められている。
個人の「やる気」を支える多様な研修例
|
1.オリエンテーション
|
2.プロフェッショナルな思考とは
|
3.発想を創出する思考プロセス
|
4.クリエイティブセンスを最大化するために
|
5.まとめ
|
|
1.オリエンテーション
|
2.主体性の確立
|
3.自己理解を深める
|
4.主体性を高める
|
5.主体性行動を強化する
|
6.自己の指針を創造する
|
7.まとめ
|
4)部下の「モチベーション」を引き出す

部下のモチベーション低下は、日頃の業務の些細な部分から生じることが多い。上司はモチベーションの理論をはじめとした基本的な知識を理解すると同時に、自分の仕事(マネジメント・指導・育成)の中で部下のモチベーションを低下させている部分に気づき、部下のモチベーションをうまく引き出していくことが求められる。
しかし、多くの管理職層は部下のやる気を育てていくためのフレームワークや理論をしっかりと学んでいない。自らの経験で学んだ我流の理論でマネジメントを行っているケースが多いのが実情だ。それで部下をやる気にさせようと思っても、効果はあまり期待できないだろう。
このような背景から、自らの仕事の仕方を振り返りながら、部下のモチベーションを上げていくための考え方・手法を学ぶ「モチベーション・マネジメント」研修が増えている。研修を通じて、リーダーのモチベーション方法が変わり、部下も「やらされ感」がなくなり、自ら工夫し、積極的に仕事に取り組むようになり、活気のある職場風土が形成されていくことになる。
「モチベーション・マネジメント」研修例
1.オリエンテーション(講義、個人・グループワーク)
|
2.モチベーションとは
|
3.部下のモチベーションの理解
|
4.自分のマネジメントスタイルのチェック
|
5.個人(組織)レベルのアプローチ
|
6.まとめ
|
5)組織活性化を目的とした「ワールドカフェ」

近年、組織活性化を目的とした研修としてよく開催されるのが「ワールドカフェ」である。ワールドカフェとは、「知識や知恵は、機能的な会議室の中で生まれるのではなく、人々がオープンに会話を行い、自由にネットワークを築くことのできるカフェのような空間でこそ創発される」という考え方に基づいた話し合いの手法である。
具体的には、4~5人の「島」を作り、それぞれの島ごとに模造紙をテーブルクロスのように置いていく。対話のテーマを設けて、各々が自由に語りながら、模造紙にメモや絵を描いていく。20分程度の話し合いを行った後、各島のホスト役を決め、それ以外のメンバーは違う島に旅立っていく。このような流れを2~3回行い、最後に元の島に戻り、他の島で体験した学びや気づきを共有していくというものである。誰かが何かを一方的に教えるのではなく、共に対話する中から生まれる気づきに価値があることを実感させていく場である。
このようにワールドカフェとは、リラックスした雰囲気の中での会話(ダイアローグ)によって参加者全員の納得感が得られるファシリテーション手法である。例えば、新規事業を開発するプロジェクトメンバーのチームビルディングやビジョン・バリューの共有、アイデア創出、戦略策定、コミュニケーションの活性化など、さまざまな目的で活用されている。話し合いのプロセスを通じて新しいアイデアが生まれるだけではなく、相互理解や共通認識の醸成に役立っていて、組織の活性化に大きく寄与している。