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管理職に求められる「役割」と「育成の方向」

1)管理職に求められる「役割」とは何か

● 目の前の課題を解決することに精一杯で、本来求められる役割に手が回らない状況に

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管理職に期待される役割が変化する中、経団連では2012年に「ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応」をまとめており、「ミドルマネジャーに求められる基本的な役割」として、以下の四つの事項を示している。具体的な中身を見ると、求められている役割が高度化かつ複雑化していることがよく分かる。自社のミドルマネジャーの働きぶりには総合的に満足しているものの、多くの企業が「部下のキャリア・将来を見据えた指導・育成」「経営環境の変化を踏まえた新しい事業や仕事の企画立案」について、十分な役割を果たせていないと考えているようだ。

図表1:ミドルマネジャーに求められる基本的な役割
情報関係
  • 社内外の情報収集および周辺状況の分析
  • 必要な情報の経営トップへの伝達
  • 経営トップのメッセージを咀嚼し、現場に浸透
  • 自らのチームが目指すべき方向性の明示
  • 海外も含めたグループ企業や関係部署との折衝、および情報共有
  • 社内外(他部署や取引先、顧客など)からの要請や問い合わせへの対応
業務遂行関係
  • 日常業務の処理や課題解決
    ~課題解決に向けたPDCAを回す
    ~自らもプレーヤーとなり、仕事の成果を上げる
  • 新規事業やプロジェクトの推進、イノベーションの創出
    ~経営環境の変化を的確に捉えた状況判断
    ~新しいビジネスモデルや商品・サービスの企画立案
  • 経営のグローバル化への対応
    ~海外におけるマーケティング、現地消費者にとって魅力ある製品・サービスの提供、海外のパートナー企業との綿密な連携 など
対人関係
  • 部下一人ひとりに性格や長所・短所を踏まえた指導・育成
  • 仕事に対する動機づけ
  • 部下が協働し合うような職場づくり
  • 人間関係上のトラブルの早期発見と早期解決
  • 社外の関係者との連携強化や人脈づくり
コンプライアンス関係
  • 個人情報の適切な管理
  • 内部統制や機密情報の漏えい対策
  • 適切な労働時間管理
  • 労働関連法規の遵守
  • 業務に関わる法律や実務上の留意点の理解促進、および法制度改正などを見据えた事前準備

多くの企業が、期待通りに管理職が活躍できていないと感じているのはなぜか。同報告書では、ミドルマネジャーが求められる役割を十分に果たせていない「構造的要因」として、以下の五点を挙げている。

図表2:ミドルマネジャーが役割を果たしづらい五つの「構造的要因」
経営環境の変化:ビジネスの複雑化・高度化
組織構造の変化:組織のフラット化などによる影響
雇用形態や働き方に対する意識の多様化
短期的な業績・結果志向の強まり:失敗を許容しない雰囲気
コンプライアンスなどに関する管理実務増大

つまり、組織のフラット化や短期的な業績・結果志向の高まり、厳密な労働時間管理の影響などにより、自らもプレーヤーとして業績を上げなければならなくなっているからだ。そのため、目の前の課題を解決することに精一杯になり、部下指導・育成や業務のマネジメントにまで十分に手が回らない状況にあることが、求められる役割を果たせないことの原因なのだ。こうした悪循環を何とか打開しようと、管理職研修に力を入れるようになってきているのが、近年の傾向である。

2)管理職育成の方向

● 企業は何を認識し、どう対応すべきか

このような状況において、管理職育成の方向として、企業が認識すべきことは何なのか。まず、「課題解決を管理職本人の問題として突き放すのではなく、組織として適切な対策を講じていくこと」、そして「管理職が求められる役割を果たしやすい環境を整備すること」である。その際に企業に求められるのは、以下のような対応である。

図表3:企業に求められる対応
  • 実務的な負担を軽減し、業務のマネジメントや部下指導・育成に取り組める状況を組織的に整備する
  • より良いマネジメントの実践を可能とするためのOJT(仕事を通じた部下指導・育成)へ の制度的支援を行う
  • 管理職の自律的な成長を支援するためのoff‐JT(企業内研修)を強化する
  • 管理職のやる気や意欲を高めるような精神的な支援施策を充実する

● 仕事を通じた部下指導・育成(OJT)への支援

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しかし、一人の管理職が一度に直接対応できる範囲には限界がある。そこで、過度な負担がかからないよう、配慮が求められる。例えば、「チェックシートを用いた業務内容(目的、意義、必要な日数と人員数)の見える化 」「業務の優先順位付け」「不要不急な業務の廃止と、定期的な業務内容の見直し」などを行い、まずは業務そのものの見直しを図ることだ。

その上で、以下に示したような仕事を通じた部下指導・育成(OJT)への支援を行う。管理職は日常的に業務が多忙で時間的な余裕がないため、OJTに関する能力・経験不足によって、OJTを十分に行えない状況にあるからだ。

図表4:仕事を通じた部下指導・育成(OJT)への支援
時間的余裕が不足している問題への対応
  • 職場全体で新入社員や若手社員の育成に取り組んでいく体制の整備
  • 職場の管理と部下育成・指導に専念し、実務は行なわない管理職ポストの設置
OJTに関する能力・経験不足への対応
  • 部下とのコミュニケーション力向上に向けた研修プログラムの導入・強化(コーチング、ソーシャルスタイル理論等)
  • 管理職登用前に部下を指導・育成する機会を意図的に設け、経験を積ませる(メンター制度の活用)

● 効果的な企業内教育研修(off-JT)への見直し

企業活動が高度化・複雑化している状況下、企業内教育研修が業務遂行に必要な知識・ノウハウの提供、受講する側のニーズに的確に応えられていない現状がある。さらに、研修参加に伴う時間的・心理的負担への配慮も必要である。そこで、以下のようなoff-JTの見直しが求められる。

図表5:効果的な企業内教育研修(off-JT)への見直し
職場で実践しやすい内容への見直し
  • アクションラーニングや内省(リフレクション)のプロセスを重視した研修の導入
研修の効果を高めるための取り組み
  • 競争の要素やゲーム性の取り入れ、研修の事前準備と研修後のフォローアップの充実
受講者の負担軽減に向けた取り組み
  • 開催時期を複数回設定し、受講者が参加しやすい日時を選択。e-ラーニングの活用
  • 経営トップの参画により、研修の重要性を社内全体で認知

*出所(図表1~5):「ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応」(日本経済団体連合会/2012年)


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