企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

3. 現代における人事システムの役割

もっとも現代的な人事システム「タレントマネジメントシステム」

現代における人事システムの役割を考えるうえで、「タレントマネジメントシステム」「人材マネジメントシステム」などの戦略人事システムは、避けて通れない。人事システムを構成するもう一方のシステムである人事・給与システムは、すでに長い歴史があり、その概要や機能も広く知られている。そのことを前提として、本章では2000年代以降、急速に存在感を増した戦略人事システム、中でもタレントマネジメントシステムの役割について、考えていくことにしたい。

タレントマネジメントシステム登場の背景

1)人的リソース重視の流れ

企業経営のリソースとしてよくとりあげられるのが「ヒト・モノ・カネ」の三つだ。もともと人的リソース、すなわち人材が生み出す価値こそがその企業の価値であると考えられてきたが、知的生産業務やサービス業務など、人材の力に左右される仕事の割合が圧倒的に大きくなっている現代の日本においては、あらゆる分野で人的リソース重視の傾向が強まっているといえるだろう。

イメージしかし、1990年代までは、重要な人的リソースの最適化(配置、起用など)を行う際に、きわめて属人的な経験やカン、印象などに頼っていた。たとえば、新たなプロジェクトをスタートさせるにあたって適任の人材を選抜する場合には、従業員の経歴や性格などをよく知る人事マネジャーや各部門の部課長クラスが自分の記憶の中から候補者を探し出し、紙の資料と照らし合わせながら比較検討するという風景がごく一般的なものだった。

だが、従業員数が数十名、数百名の企業ならともかく数千名、数万名となると、そういった方法では最適の人材に到達するまでに途方もない労力と時間、すなわちコストがかかることになる。また、思いがけないところに最適の人材がいた場合には、その存在を見落としてしまうリスクもある。そこで他のリソースと同様に、組織・人材管理でもIT化を進め、スピーディーかつ高品質な人材(タレント)マネジメントを実現しようとする動きが出てくるのは当然といえるだろう。社内の人的リソースをフルに活用するためのシステムとして「タレントマネジメントシステム」の発想が生まれてきたのだ。

2)価値創出部門としての人事へ

人材の最適配置とともに重要なのが人材開発である。特に2000年代には、新卒・中途とも厳選採用が完全に定着し、限られた人材で最大のパフォーマンスをあげることが経営からの強い要請となった。しかし、組織管理やプロジェクト管理と同様、人材の教育・研修も従来はIT化があまり進められていなかった分野といえる。人材開発についても、ITを活用して、効率的・効果的に行うことが求められるようになった。

こうした流れは、人事をかつてのコストセンターから価値創出部門に変えていった。もちろん、単独で純粋なプロフィットをあげるわけではないが、組織や人材の価値を高めることを通じて、企業業績の向上に寄与する部門という位置づけに大きく変化したといえる。特に日本では、2008年のリーマン・ショック以降、こうした考え方をする企業が明らかに増えてきた。グローバル競争が激しくなるに従って、人事部門も業務効率化とコストの削減さえしていればよいという状況ではなくなったのだ。あらゆる部門が価値を生み出す仕事を求められる時代だからこそ、人事が効率的にそのミッションを果たすためのツールとして「タレントマネジメントシステム」が不可欠となりつつある。

タレントマネジメントシステムの役割

1)人材・組織の最適化

イメージ 「人材」の面から見ると、タレントマネジメントシステムは、任意のポジションやプロジェクトに最適の人材を企業全体の中からもっとも効率的に探し出すことができるシステムということになる。基本属性、業務経歴、保有資格、スキル、本人の志向、教育・研修履歴、コンピテンシーなどさまざまな要素を組み合わせて検索できる。もちろん、そうした検索に必要なデータは日常的に人材データとしてデータベースに蓄積されていなくてはならない。

「組織」の面から見ると、任意の部署やチームの人員構成、業績、勤怠、人件費などをリアルタイムでモニタリングし、比較・検討・シミュレーションを行うことで最大パフォーマンスをあげられる組織をつくる機能を持つのが、タレントマネジメントシステムといえる。人員構成については、人材を検索するのと同様のさまざまな項目で分析を行うことができる。勤怠や人件費を参照するためには、人事・給与システムのデータベースと連携することが必要なので、できればすべてのデータを一元管理するのが望ましいだろう。ERPの場合は、会計システムとの連動も容易なので、業績(売上高など)のデータを利用しやすくなる。

2)人材開発の指標

人材開発では、計画的に「必要な人材」「欲しい人材」を育成していくことが望ましい。キャリアモデルを設定して、必要な実務経験や研修を明確にし、候補となる人材に効率的に業務を担当させたり、研修を受けさせたりするのが一般的だ。しかし、紙ベースで管理することがかなり難しかった。そこで、タレントマネジメントシステムは、「すでに経験した業務・研修」と「必要だがまだ経験していない業務・研修」を可視化して明示することで、人事・現場マネジャー・本人に同じ情報を提供し、確実な人材開発をサポートする役割を担う。

3)意思決定のためのデータ提供、シミュレーション

上記の「人材・組織の最適化」「人材開発の指標」いずれにもいえることだが、最終的な判断・決定を行うのは人間である。タレントマネジメントシステムは、その人間の意思決定をサポートするための材料となるデータの提供、シミュレーションをスピーディーに行うという重要な役割を担う。また、そのデータを加工してわかりやすい形(グラフ、チャートなど)に可視化することで、マネジメントに必要な「気づき」を生み出すツールといえる。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

よくわかる「人事システム」講座

1. 人事システムとは

1. 人事システムとは

「人事システム」とは、人事のさまざまな業務をIT化することで企業経営に貢献するシステムである。業務の効率化やコスト削減だけにとどまらず、企業の組織力を高め、経営戦略実現をサポートするための強力なツールとしての人事システムについて見ていくことにする。


2. 人事システムの歴史

2. 人事システムの歴史

人事システムは、時代によって移り変わっていった人事の役割とともに、その機能やシステム構成を進化させてきた。その時々の経済情勢や社会のあり方、また、IT技術の進歩に大きな影響を受けている。1980年代以降の人事をとりまく状況と人事システムについて整理する。


3. 現代における人事システムの役割

3. 現代における人事システムの役割

現代における人事システムの役割を考えるうえで、「タレントマネジメントシステム」「人材マネジメントシステム」などの戦略人事システムは、避けて通れない。人事システムを構成するもう一方のシステムである人事・給与システムは、すでに長い歴史があり、その概要や機能も広く知られている。そのことを前提として、本章では2000年代以降、急速に存在感を増した戦略人事システム、中でもタレントマネジメントシステムの役割について、考えていく。


4. 人事システムの主な機能

4. 人事システムの主な機能

同じ人事システムではあるが、タレントマネジメントシステムには人事・給与システムとは異なる機能的な特性が求められる。人事・給与システムの場合、処理する業務も定型業務がほとんどであり、求められるのは確実性と効率性だ。しかし、タレントマネジメントシステムの場合は、利用者は人事以外にも現場の管理職、経営者など幅広く、またその利用目的も企業戦略の立案や実行など非定型の業務がほとんどだ。それぞれの基本的な構成について整理する。


5. 人事システムの種類

5. 人事システムの種類

人事システムは大きく「人事・給与システム」と「戦略人事システム」に分けられるが、それをさらに細かく「目的別に見た人事システムの種類」「技術的に見た人事システムの種類」に分類する。


6. 人事システム導入のメリット

6. 人事システム導入のメリット

ITを活用することで、給与計算のような定型業務を正確化・効率化し、コスト削減を行うのはもはや当然だ。今改めて人事システム導入のメリットを考えることは、その人事システムが企業戦略の中でどういうメリットを生むのかを検討することだといえる。効率化・コスト削減というIT化のメリットを大前提として、さらに、人事システムには企業力を向上させるためにどのような力があるのかをまとめる。


7. 人事システムの選び方

7. 人事システムの選び方

人事システム、特に人事・給与システムに関しては、多数のベンダーがパッケージソフトをリリースしており、ユーザー企業の規模や成長ステージにあわせて、それぞれ最適の機能を盛り込んで提供している。まずは企業の身の丈にあったパッケージを比較検討していけば、機能的にも予算的にもある程度は絞り込める。タレントマネジメントシステムなど戦略人事システムに関しては、パッケージでリリースされている製品の種類は、人事・給与システムほど多くない。そのため企業規模で選ぶというよりは、何がしたいのかという目的重視で選定を進めるのがよい。ここでは人事システムの選び方を解説する。


8. 人事システム導入にあたっての注意点

8. 人事システム導入にあたっての注意点

●人事システムの導入は中期的・長期的視点で計画的に取り組まなくてはならない。●タレントマネジメントシステム導入は「投資」という発想で計画すべきである。●カスタマイズやアドオン開発は将来のことも考えて行う。●「人事」と「システム」の両方がわかる人がいるのが理想。など、人事システムを導入する際に注意すべき点を述べる。


テーマ別Index
研修・人材育成
社員研修を検討する際に押さえておきたい基本とノウハウ。研修の目的別に解説します。
社員研修・人材育成
新人研修・新入社員研修
マネジメント・管理職研修
モチベーション・組織活性化
グローバル人材育成
コーチング研修
コミュニケーション研修
営業・販売研修
eラーニング
採用
人事担当者のための採用ノウハウ。採用の目的別に、基本、準備、注意点まで網羅。
中途採用
人材紹介
アルバイト・パート採用
人材派遣
新卒採用
就職サイト
新卒紹介
新卒採用アウトソーシング
新卒採用コンサルティング
内定者フォロー
ソーシャルリクルーティング
適性検査
人事戦略・人事系IT
企業に不可欠な人事システム、人事制度を解説。この分野のトレンドも把握できます。
人事制度
人事システム
給与計算
給与計算代行
人事労務
テーマに特化した労務関係の取組みを解説。導入の際のヒントが見つかります。
ワーク・ライフ・バランス、働き方改革
福利厚生
社宅・社宅代行
コンプライアンス・企業倫理
メンタルヘルス
その他
それぞれ分野ごとに、基本からサービスを検討する際のポイントを詳しく説明します。
貸会議室・研修施設

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

記事アクセスランキング

<アンケートのお願い>採用マーケットの構造変化に関する意識調査

注目コンテンツ


「健康経営特集」
従業員の健康づくりを通じて生産性向上を目指す!

健康経営の推進に役立つ多彩なプログラムをご紹介。資料請求のお申込みや資料のダウンロードも可能です。



『日本の人事部』受けさせたいスキルアップ系講座特集

コミュニケーションや英語力、個人の生産性やPCスキルなど、ビジネス上必須となる多彩なプログラムをご紹介


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


ITエンジニアの「最適育成」と「最適配置」 ~スキル可視化が生み出した新しい可能性~

ITエンジニアの「最適育成」と「最適配置」 ~スキル可視化が生み出した新しい可能性~

ITエンジニアのスキルの細分化、高度化が進み、人事が知りたい「実務力」...


「処遇」から「目標達成」へ<br />
~人事考課における「目標管理」の重要性とは?

「処遇」から「目標達成」へ
~人事考課における「目標管理」の重要性とは?

人は、周囲から評価されて「有用感」を持つことで、働く意欲が高まっていく...


『日本の人事部』 主催イベント

日本の人事部「HRカンファレンス」

日本最大のHRイベント

日本の人事部「HRカンファレンス2017-秋-」を11/14(火)~22(水)に開催します。


日本の人事リーダー会

日本の人事リーダー会

早稲田大学戦略研究センター教授の枝川義邦氏を講師に迎え、第11回会合を8/30(水)に開催。