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6. 人材派遣会社の選び方と契約

人材派遣会社の選び方と契約

人材派遣サービスを利用する場合に企業は、派遣開始から終了までの期間、派遣会社と継続的に良い関係を保っていかなくてはならない。長期的な関係が前提となる人材派遣会社を選ぶ際には、細かい気配りをしてもらえそうかどうか、つきあいやすい会社かどうかなどを、じっくり見きわめていく必要がある。

選定から発注まで

人材派遣会社を選ぶ際には、下準備が重要だ。

1)人材派遣利用の計画を立てる

派遣会社に依頼する際には、頼みたい業務がどういうものか、人数や期間はどれくらいなのかといったことを、社内で事前に固めておくことが必要だ。派遣会社はそのオーダー内容を見て、適切な人材をリストアップするからだ。派遣禁止業務ではないことを確認することはもちろん、必要なスキルや経験、資格なども明確にしておきたい。業務の内容や手順を整理してマニュアル化するなどの工夫ができればより望ましい。

2)派遣会社を探す

仕事の指示イメージ

近年はインターネットを利用すれば候補となる人材派遣会社を探すことは難しくない。逆に多くの派遣会社があるため選択に迷うほどだろう。そこで、まず絞り込みの最初の段階では、(A)派遣先の近くに派遣会社のオフィスがあるか、(B)専門職を求めている場合は、その分野を得意としているか、という2点を見ていくのがよいだろう。もちろん、実績や規模、評判などを加味してもかまわない。

派遣会社のオフィスが近くにあるとよい理由は、そこが派遣スタッフの登録拠点にもなっているからだ。派遣スタッフは比較的通勤しやすい地域での勤務を望む傾向があるので、近くの派遣会社はスタッフを豊富に抱えている可能性が高い。また、何か問題があった時に、営業担当者にすぐに来てもらえるというメリットも大きい。

3)営業担当者との打ち合わせ

ある程度派遣会社を絞り込んだら、営業担当者を呼んで打ち合わせを行う。自社の状況、依頼したい業務内容、人数、期間などを伝え、派遣料金の見積もりを出してもらう。派遣会社の営業と打ち合わせの際には以下のような点に注意したい。

  • 対応は迅速か
  • 仕事ぶりは丁寧か
  • 業務内容などオーダーの確認はきめ細かいか
  • 稼働後のフォロー体制は十分か

派遣料金は市場でほぼ相場が決まっているので、派遣会社によって見積もりが大きく異なることはないのが普通だ。中長期的に見れば、料金の安さだけを優先するのではなく、対応の良さやフォローのきめ細かさといった点に注目して決めた方がいいだろう。

契約から受け入れまで

利用する派遣会社が決まったら契約、受け入れ準備へと進む。派遣を利用するのは突発的なケースも多いので、どういうルールで決めるのかなどを、普段から話し合っておくのも有効だ。

1)派遣先責任者・指揮命令者を決める

契約に先立って必要なのは、派遣スタッフを受け入れる事業所(派遣先)の派遣先責任者・指揮命令者を選任することだ。これらの選任は法律で義務づけられているだけでなく、実際に派遣スタッフが稼働した後、業務上の指示、進捗管理、問題があった場合の軌道修正など、非常に重要な役割を担うことになる。従って、選ばれた人が「片手間仕事」や「余分な業務が増えた」といった気持ちで取り組まないよう、しっかりした意識づけをしておくことも重要だ。

派遣先責任者・指揮命令者は同じ人が兼任することもできる。

派遣先責任者 派遣スタッフ使用の総責任者、派遣元との交渉窓口、派遣スタッフの苦情や相談の窓口
指揮命令者 仕事の指示、進捗管理、質問受付など

2)労働者派遣契約を結ぶ

人材派遣の利用開始にあたっては、派遣に関する事後のトラブルを防止するために確認しておくべき事柄を明記した契約書を取り交わす。契約には「人材派遣基本契約書」と「人材派遣個別契約書」がある。

A)人材派遣基本契約書

現行の派遣法では義務づけられてはいないが、商取引の契約書として不可欠であるため、ほぼ100%取り交わされている。一般的には、以下のような項目が盛り込まれる。

  • 契約書の目的
  • 個別契約への委任規定
  • 派遣料金設定(集計方法、締め日など)
  • 派遣スタッフの交代
  • 損害賠償
  • 契約解除
  • 守秘義務
  • 契約の有効期限

B)人材派遣個別契約書

個々のスタッフの就業に関して、業務内容や勤務条件といった細かい取り決めを行う契約。派遣法により締結が義務づけられている。主な内容は以下の通り。

  • 派遣先担当者(派遣先責任者・指揮命令者)
  • 派遣会社担当者
  • 派遣スタッフ数
  • 業務内容
  • 派遣先事業所(名称・所在地・電話)
  • 派遣期間
  • 始業時刻、終業時刻
  • 休憩時間
  • 休日
  • 安全衛生
  • 苦情処理に関する取り決め
  • 契約解除

なお、派遣契約を結ぶにあたって、派遣スタッフの事前面接や履歴書などによって派遣スタッフを特定することは、派遣法により禁止されている。実際には多くの派遣会社が「顔合わせ」という形で、事前にスタッフと派遣先の引き合わせを行っているが、これも面接・選考ではなく最終確認ととらえるべきだろう。必要なスキルや能力はあらかじめ派遣会社に伝えてあり、それをもとに人選されたスタッフであることが大前提だからだ。

受け入れ準備

派遣を利用するような社内状況の場合、就業開始までの時間は限られていることも多い。当日になって準備不足が露呈しないように、速やかに受け入れ準備を進めていこう。

1)デスクや備品の準備

備品の準備イメージ

派遣スタッフを最大限に戦力化するためにも、デスクや椅子、備品などは、直接雇用の従業員にできるだけ近い環境を用意したい。IDカードや制服、パソコン、車通勤の場合は駐車場の手配も忘れないようにしよう。

2)社内に周知徹底すること

配属部署だけでなく、関係する社内にはすべて告知しておくことも重要だ。派遣スタッフが来るということだけでなく、派遣を活用する狙いや期間、派遣スタッフと一緒に仕事を進める上でのルールなども同時に説明しておきたい。また、すでにパートなど似たような業務で待遇が異なる従業員がいる場合には、事前の根回しがより重要になる。「派遣料は高いが、それは期間限定であるためだ」などとはっきり説明しておくことで、無用なトラブルを回避できることが多い。

稼働後

派遣スタッフも直接雇用の従業員と同じ人間である。働きやすい環境づくりなど、細かい気配りがあるほど、モチベーションが高くなり、業務の遂行も効率的になっていく。派遣会社の営業担当者とも協調しながら、いい関係を築いていくことが上手な派遣活用法といえるだろう。

1)管理台帳の作成

派遣先企業では、事業所ごと、派遣スタッフごとに「派遣先管理台帳」を作成し、就業終了後3年間保管することが派遣法で義務づけられている。これは派遣スタッフを適正に管理することを目的としたものだ。多くの場合、派遣会社が作成を代行してくれるので、よくわからない場合は派遣会社に問い合わせればよいだろう。

2)派遣先企業の義務

派遣イメージ

派遣スタッフも、直接雇用の労働者と同じく労働基準法などの法律によって保護されており、派遣先企業にもこうした労働法規を守りながら働かせる義務がある。これが「派遣先の使用者責任」だ。勤務時間、休憩、休日など、すべて法定基準が最低水準となる。これは年次有給休暇の取得などについても同じで、派遣スタッフが条件を満たしていれば、派遣元は有休取得を認めなくてはならない。派遣先企業は有休でスタッフが来ない日については派遣料を支払う必要はないが、業務を進めるために代替要員を送ってほしいというケースもあるだろう。こういった場合には、事前に派遣会社と取り決めをしておくことが重要になる。

3)派遣スタッフのフォロー

フォローは派遣会社の営業担当者の大事な業務だが、派遣先企業もきめ細かい配慮を忘れないことが重要だ。管理担当者だけでなく、従業員全員が派遣スタッフとともに仕事をするために必要な意識やマナーを身につけることで、職場全体の雰囲気も良くなっていくだろう。

契約の更新・終了

人材派遣の主要部分を占めるオフィス業務では、3カ月単位の契約を必要に応じて更新するパターンが多いといわれる。契約の更新・終了は派遣先企業・派遣会社・派遣スタッフのいずれにとっても非常にセンシティブで重要な問題なので、ルールを守って良好な関係を維持するようにしたい。

1)連絡窓口は派遣会社に一本化

契約を更新するにしても、終了するにしても、連絡窓口は派遣会社の営業担当者に一本化するのがルールだ。更新の場合はその希望を伝え、派遣スタッフの状況や意思確認、延長する派遣契約の条件確認などが終わった後に、人材派遣個別契約書を新たに取り交わして更新となる。

仕事指示イメージ

更新を申し込むタイミングは、少なくとも1カ月前が目安だ。なぜなら、派遣スタッフはできるだけ仕事が途切れないようにしたいと考えるため、1カ月前に更新が決まっていないと、次の新しい派遣先を探して動き出してしまうからだ。終了直前になって更新を申し込んでも、仕事のできる派遣スタッフほど次の派遣先が決まっていて応じてもらえないので注意したい。

同様に、派遣契約を終了する場合も、連絡窓口は派遣元の営業担当者、期限は1カ月前が目安となる。派遣スタッフに直接伝えても、それは正式の連絡にならないばかりか、スタッフにも派遣元にも気遣いが足りない企業という印象を与えてしまう。次回利用する際にもお互い気持ちのよいサービスが受けられるように、ルールを守ってつきあいたいものである。

2)途中解約は原則不可

3カ月の予定だった業務が2カ月で終わってしまった場合、残り1カ月分については派遣契約を解約できそうに思うかもしれないが、実はこうした途中解約は派遣法では認められていない。派遣法で途中解約できるのは、会社の倒産や天災で社屋が使えなくなった場合など、通常ではありえないような事態だけに限られているからだ。

やむを得ない事情で解約を申し出る場合は、少なくとも30日前に派遣会社に伝え、派遣元の合意はもちろん、派遣先企業は派遣スタッフの新たな就業機会を用意しなければならない。それができない場合は契約内容に則って、賠償金を支払う可能性がある。

従って、派遣契約を結ぶ際には業務量の正確な見積もり、またスタッフに求める能力やスキルをできるだけ正しく派遣会社に伝えて人選してもらうことなどが非常に重要になる。


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