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3. 人材派遣の歴史

理解しておきたい法改正の歴史とその背景

イメージわが国における人材派遣は、1986年の労働者派遣法施行によってスタートした。まだ比較的新しいサービス、業界だといえる。その歴史は、法改正によって規制が緩和され、対象となる範囲が広がる流れが続いていたが、2010年代に入って行き過ぎた部分をもう一度引き締める動きも出てきている。

現在の人材派遣制度を十分に理解し、正しく活用するためにも、これまでの法改正がなぜ行われてきたのか、またどう変わってきたのかを整理しておくことは大切だ。


前史(1985年まで)

日本でも明治期、あるいはそれ以前の江戸時代から、建設現場などを中心に「人貸し」「人足貸し」といわれる、労働者を送り込んで働かせる業者が存在していた。もちろん、法律の裏づけもないため、雇用関係や責任の所在は曖昧で、不当な中間搾取(いわゆるピンハネ)も横行し、労働環境としてはきわめて劣悪なものであった。現在、職業安定法で「労働者供給事業」が原則禁止とされているのは、こうした歴史が背景にある。

日本に近代的な人材派遣ビジネスが登場したのは、1966年のマンパワー・ジャパン設立以降とされる。同社は、アメリカで広まっていた人材派遣サービスを、最初は日本国内の外資系企業への事務スタッフの派遣という形で持ち込んだ。やがて、国内系の商社や銀行も人材派遣を利用するようになり、人材派遣の市場が成立すると、テンプスタッフ(1973年設立)をはじめ、現在も大手といわれている多くの国内系人材派遣会社が誕生した。

しかし、この時はまだ人材派遣が正式に法律で認められていたわけではない。そのため、「業務請負」という形をとってサービスを提供していた。

派遣法施行(1986年~1995年)

イメージ1980年代に入ると、こうしたサービスもビジネスシーンに定着し、一定の評価を得た。そのため派遣を合法化してきちんと管理した方が労働者保護につながるいう考えが主流となり、1985年に労働者派遣法が成立。翌年、施行された。ここから日本における人材派遣の歴史が正式に始まった。

初期の派遣法は労働者保護の色彩が強く、直接雇用の労働者が派遣スタッフに置き換えられる可能性が少ない専門的な13業務に限って派遣を認めるというものだった。その後、機械設計なども加えて16業務となったが、それでも非常に限定的な解禁といえる。これでは業務請負時代からニーズの高かったオフィス業務(一般事務)のスタッフなどは派遣できない。そこで、一般事務をファイリングや事務用機器操作(OA事務)として派遣するといった折衷的な手法がとられた。

規制緩和の時代(1996年~2007年)

派遣法施行後は、バブル景気の影響で人材派遣市場も順調に拡大していった。しかし、1990年代から2000年代にかけては、バブル崩壊、金融危機、デフレの長期化といった低成長期に直面することになる。産業界からも、直接雇用の人件費(固定費)を人材派遣の活用による変動費に置き換えたいというニーズが高まった。また規制緩和によって民間の活力を引き出すという当時の国の基本方針もあり、この時期には数次にわたって派遣業務の対象範囲拡大や派遣期間延長が行われた。

■人材派遣の規制緩和の流れ
施行年 法改正の内容
1996年
  • 対象業務を26業務に拡大
1999年
  • 対象業務を原則自由化(禁止業務のみ指定するネガティブリスト化)
  • 派遣期間は専門業務3年、自由化業務1年(※)
2000年
  • 紹介予定派遣を解禁
2004年
  • 自由化業務の派遣期間を3年に延長
  • 専門業務の派遣期間無制限に
  • 製造業務への派遣解禁(期間は1年間)
2006年
  • 医療関連業務の一部で派遣解禁
2007年
  • 製造派遣の派遣期間を3年に延長

※専門業務と自由化業務については5.「」を参照

こうした流れの中でも、特に大きい意味を持つのは、1999年の対象業務の原則自由化と2004年の製造派遣解禁だろう。これは、営業、販売、一般事務、製造といった専門業務以外の業務に対する企業の派遣ニーズの高まりや、経営戦略にアウトソーシングが大きく組み込まれるようになった時代背景とも呼応している。

規制強化の流れ(2008年以降)

イメージ2008年のリーマンショック以降、製造業を中心に派遣切りや雇い止め、人材派遣をめぐる違法行為の発覚など相次いだ。また、職も家も失った若者が日雇い派遣で生計を立てながらネットカフェで寝泊まりするような状況が注目され、若年層の貧困化やワーキングプアの存在などが急激に社会問題化した。

こうした社会問題の一因に人材派遣という雇用スタイル(働き方)があるのではないかという議論が国会で高まり、2012年10月施行の改正派遣法では、さまざまな規制を強化する方向性が打ち出された。日雇い派遣の原則禁止、専ら派遣の規制強化、離職後1年以内の人材を派遣スタッフとして元の職場で働かせることの禁止など、労働者保護、直接雇用の促進などを強く意識した内容となっている。なお、同時期に議論されていた製造派遣の禁止や登録型派遣の禁止といった業界により大きい影響を与える改正は見送られている。


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