企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

1

1. 人材派遣の基礎知識

即戦力となる人材に、必要な時に必要なだけ働いてもらえるなど、企業にとって多くのメリットがある人材派遣は、今や日本のビジネスシーンに完全に定着したといっていいだろう。しかし、その活用にあたっては、正社員など直接雇用とは異なる、さまざまな規制やルールがあることも知っておかなくてはならない。特に法制度に関しては、1986年に最初の「労働者派遣法」が施行されてから、現在までに数回の大きな法改正が行われており、常に最新の法制度を理解しておくことはとても重要だといえる。本稿では、これから人材派遣を活用したい、あるいは活用範囲を広げていきたいといった企業のために、人材派遣の基礎知識から活用のためのノウハウまでを解説してみたい。

人材派遣の定義

労働者派遣法では、人材派遣は「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」と定義されている。これをわかりやすい言葉に直すと、以下のようになるだろう。

派遣会社が雇用している労働者に、派遣先企業の指揮・命令のもとで働いてもらうシステム

用語の確認

ここまででも、派遣会社や派遣先企業などさまざまな用語が登場している。人材派遣の場合は、関わる企業や労働者らの関係が非常に重要なので、これ以降、本稿で用いる用語を確認しておきたい。

派遣元、派遣会社 人材派遣会社
派遣先、派遣先企業 人材派遣を利用する企業
派遣スタッフ 派遣労働者

人材派遣のしくみ

人材派遣における、派遣会社(派遣元)・派遣先企業(派遣先)・派遣スタッフの三者の関係を図にすると以下のようになる。

登録型人材紹介ビジネス
【ポイント】
  1. 派遣会社と派遣スタッフの間には「雇用契約」が結ばれている。したがって、派遣スタッフに給与を支払うのは派遣会社である。
  2. 派遣会社と派遣先企業の間には「人材派遣契約」が結ばれている。派遣先企業は、人材派遣を受けた対価として、派遣会社に派遣料金を支払う。
  3. 派遣先企業は、派遣スタッフに対して仕事上の指揮・命令権を持つ。

業務請負、人材紹介との比較

人材派遣とよく比較される人材サービスとして「業務請負」がある。また、人材紹介も言葉がよく似ているため間違いやすい。この二つのシステムと人材派遣との違いを図解する。

(A)業務請負
登録型人材紹介ビジネス
【ポイント】
  1. 請負会社は「請負契約」を結び、自社の従業員を使って業務を遂行する。業務を発注した企業は請負会社に業務請負料を支払う。
  2. 請負会社の従業員に対する指揮・命令権を持つのは、請負会社だけである。
  3. もし、業務を発注した企業が請負会社の従業員に指揮・命令を行うと、違法行為である「偽装請負」になってしまう。
(B)人材紹介
登録型人材紹介ビジネス
【ポイント】
  1. 人材紹介会社は、企業からの求人依頼に対して、適切な人材を紹介する。
  2. 人材紹介会社と紹介される人材の間には契約関係は存在しない。
  3. 求人企業が人材の採用を決めた場合は、直接人材との間で雇用契約を結ぶ。求人企業は人材紹介会社に紹介料を支払う。

直接雇用と間接雇用

一般の雇用と人材派遣の違いは、「直接雇用」と「間接雇用」の違いでもある。雇用主、つまり給与の支払者と指揮命令権者(仕事上の指示を出す人)が同じ場合を直接雇用といい、正社員以外にも契約社員、パート、アルバイトなどがこれにあたる。一方、雇用主と指揮命令権者が異なる場合が間接雇用で、人材派遣が該当する。

登録型人材紹介ビジネス

人材派遣の種類

人材派遣にはいくつかの種類がある。ここでは、現行法上可能な4種の派遣、及び違法となる派遣の形態について説明してみよう。

1)登録型派遣(一般労働者派遣)

イメージ人材派遣の約8割を占め、もっとも代表的といえるのがこの「登録型派遣」だ。派遣の仕事を希望する人材が、まず人材派遣会社に登録しておき、希望・条件にあう派遣先が見つかった時に雇用契約を結ぶという形をとる。

派遣会社にとっては、仕事がある時だけの雇用契約なので効率的だが、派遣スタッフにとっては仕事がない時には無給となってしまうリスクがある。そのため、こうした登録型派遣で働くスタッフは複数の派遣会社に登録しているのが一般的である。登録型派遣を行うためには、厚生労働省の許可が必要となる。

2)常用型派遣(特定労働者派遣)

仕事がある時だけ雇用契約を結ぶ登録型に対して、常用型の場合は、派遣会社と派遣スタッフが一般の正社員と同様に無期限の雇用契約を結んでいる。当然、派遣会社は仕事の有無にかかわらず、派遣スタッフに毎月の給与を支払わなくてはならない。従って、長期の業務が中心となり、一定のスキルや経験が必要な機械・電気関係の設計やシステムエンジニア、化学関係、デザイナー、営業などスペシャリスト業務が多い。常用型派遣を行うためには、厚生労働省への届出を行っていることが条件となる。

3)紹介予定派遣

派遣先に直接雇用されることを前提に、一定期間(最長6カ月)の人材派遣を行うシステム。言い換えれば、試用期間を派遣スタッフとして勤務する特殊な人材紹介といえる。派遣期間終了後、直接雇用に切り替える場合には、企業と人材の双方の合意が必要だ。そのため、仕事内容や職場の雰囲気、人材の能力や人柄などをお互いに見きわめた上で判断できるメリットがある。紹介予定派遣を行うには、人材派遣と有料職業紹介(人材紹介)の両方の免許を持つ事業者であることが条件となる。

登録型人材紹介ビジネス

4)新卒派遣

派遣されるスタッフがいずれも新卒であることが特色の人材サービス。ビジネスマナーやOAスキルといった一定の研修を派遣会社で行ったうえで企業に派遣するので、派遣先企業にとっては新人研修の手間が省けるメリットがある。紹介予定派遣の形をとるケースも多く、十分に相互理解を図った上で採用できるため、早期退職の原因となるミスマッチの防止に効果的がある。

現行法上は違法となる人材派遣

人材派遣は、法改正によって規制が緩和されることもある反面、労働者保護などを目的とする規制強化によって、それまで合法だったものが違法になってしまうことも珍しくない。利用する企業としても十分な注意が必要だ。

(A)短期・スポット型派遣(日雇い派遣)

イメージ1日単位の仕事にスタッフを派遣するもの。形の上では登録型派遣と同じだが、派遣期間があまりにも短すぎると派遣スタッフの生活が不安定になるということで、雇用期間が30日以内のものについては禁止された(2012年10月施行)。ただし、同じ派遣元(人材派遣会社)が31日以上の雇用契約を結べば、派遣先が複数にわかれて、それぞれ数日ずつであっても可能になる。

(B)二重派遣(多重派遣)

派遣先が派遣されたスタッフをさらに別の会社に派遣して働かせること。多重派遣が行われると、スタッフに対する安全確保などの責任の所在が曖昧になることや、中間搾取によってスタッフが受け取る給与が目減りする可能性が高いといったことから、派遣法では「自社で雇用していない労働者」を派遣することは認めていない。そのため、多重派遣を行うと、職業安定法で禁止されている「労働者供給事業」に該当してしまい、派遣元だけでなく派遣先に対しても罰則があるので注意が必要だ。

(C)専ら派遣

特定の企業や企業グループに限定して行う人材派遣を「専ら派遣」という。こうした派遣形態が定着すると、本来なら直接人材を雇用すべき仕事が派遣スタッフに置き換わるとして禁止されている。例えば企業が子会社として派遣会社を持ち、自社では社員を極力雇用せず、子会社からの派遣スタッフで人材をまかなうことを想定している。ただし、特定企業や企業グループに対する派遣の割合が80%以下であれば規制の対象とはならない。

人材派遣に関係する法律

人材派遣に関係している法律には以下のようなものがある。

  • 労働基準法
  • 労働者派遣法
  • 労災保険法
  • 雇用保険法
  • 健康保険法
  • 厚生年金保険法

イメージ派遣スタッフの健康や安全、労働者としての権利を守る第一の責任は、派遣元でありスタッフを雇用している派遣会社にあるが、派遣先企業にも使用者責任や遵守すべき義務がある。

基本的には、人材派遣であっても直接雇用の場合と同様に、派遣先企業は労働基準法に沿った職場環境や労働条件を整えなければならない。



  • このエントリーをはてなブックマークに追加

よくわかる「人材派遣」講座

人材派遣とは

人材派遣とは

人材派遣の基礎知識から最新の人材派遣事情まで


人材派遣の「現状」

人材派遣の「現状」

進化・拡大の勢いは止まらず――。数字から読み解く人材派遣市場の動向


人材派遣の「歴史」

人材派遣の「歴史」

時代とともに刻々と変化してきた人材派遣業の歴史を振り返る


人材派遣をめぐる「法律」と「対応」

人材派遣をめぐる「法律」と「対応」

人材派遣は「禁止の例外」?労働者派遣法のあゆみと派遣労働者をめぐる環境


人材派遣の「戦略的活用」

人材派遣の「戦略的活用」

雇用の多角化が進む中、人材派遣を戦略的に利用するためのポイントをチェック


派遣開始と就業の実務

派遣開始と就業の実務

実際に派遣労働者を受け入れる際の実務と注意点をまとめた


派遣の終了・更新・解除の実務

派遣の終了・更新・解除の実務

スタッフの雇用安定措置にかかわる法律を把握した上で、講ずべき対応とは


人材派遣会社の選び方

人材派遣会社の選び方

特徴や専門性から見極める、パートナーに最適な人材派遣会社とは


派遣スタッフへの対応

派遣スタッフへの対応

派遣スタッフに気持ちよく働いてもらうために心掛けておくこと


テーマ別Index
研修・人材育成
社員研修を検討する際に押さえておきたい基本とノウハウ。研修の目的別に解説します。
社員研修・人材育成
新人研修・新入社員研修
マネジメント・管理職研修
モチベーション・組織活性化
グローバル人材育成
コーチング研修
コミュニケーション研修
営業・販売研修
eラーニング
採用
人事担当者のための採用ノウハウ。採用の目的別に、基本、準備、注意点まで網羅。
中途採用
人材紹介
アルバイト・パート採用
人材派遣
新卒採用
就職サイト
新卒紹介
新卒採用アウトソーシング
新卒採用コンサルティング
内定者フォロー
ソーシャルリクルーティング
適性検査
人事戦略・人事系IT
企業に不可欠な人事システム、人事制度を解説。この分野のトレンドも把握できます。
人事制度
人事システム
給与計算
給与計算代行
人事労務
テーマに特化した労務関係の取組みを解説。導入の際のヒントが見つかります。
ワーク・ライフ・バランス、働き方改革
福利厚生
社宅・社宅代行
コンプライアンス・企業倫理
メンタルヘルス
その他
それぞれ分野ごとに、基本からサービスを検討する際のポイントを詳しく説明します。
貸会議室・研修施設

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

注目コンテンツ


健康経営の実践に必要なステップ、外部サービスを選ぶ際のポイント

健康経営を戦略的に推進するための必要なステップや取り組み事例、外部サービスを選ぶ際のポイントをご紹介します。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


いま、企業が行うべき研修とは?<br />
~育成の目的とメニューを明確にし、効果を最大限に高めていく

いま、企業が行うべき研修とは?
~育成の目的とメニューを明確にし、効果を最大限に高めていく

自律性を高め、社員一人ひとりのスキル・能力を高めていかなければ、これか...


『日本の人事部』主催イベント

日本の人事部「HRカンファレンス」

日本最大のHRイベント

日本の人事部「HRカンファレンス2019-春-」を5/9・14・15・16・17・23・24に開催。


日本の人事リーダー会

日本の人事リーダー会

日本を代表する大手企業の人事エグゼクティブによる、人事の未来を考える会