1. グローバル人材育成とは

グローバル人材に求められる役割と能力

企業がアジアなどの新興国での海外展開を本格化していく中、海外で活躍するグローバル人材には、現地法人におけるトップマネジメント、またはミドルマネジメントの役割が求められている。しかし、そうした役割が期待されているにもかかわらず、国内にいた時は主任クラスなどでマネジメント職に就いていなかった者が、海外では高いポジションに就いてマネジメント業務を行っているケースが多いのが実情。海外への依存度が急激に高まっている状況下、グローバルにビジネスを展開していくための人材育成が、多くの企業で緊急の課題となっている。
日本経団連が実施した「産業界の求める人材像と大学教育に期待するアンケート結果」を見ると、グローバルに活躍する日本人人材に求められる資質、知識・能力として、「既成概念に捉われず、チャレンジ精神を持ち続ける」(77.3%)、「外国語によるコミュニケーション能力」(67.9%)、「海外との文化、価値観の差に興味・関心を持ち、柔軟に対応する」(57.6%)などの要件が上位に挙げられている。
このうち、「外国語によるコミュニケーション能力」と「海外との文化、価値観の差に興味・関心を持ち、柔軟に対応する」の二つは、海外でマネジメントを行う際に最低限必要な能力と言えるだろう。これらに加え、「ビジネスの専門性」「外交力(コミュニケーション含む)」「マネジメント力」などの能力が、グローバルに展開している企業から多く挙げられている。
既成概念に捉われず、チャレンジ精神を持ち続ける | 77.3% |
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外国語によるコミュニケーション能力 | 67.9% |
海外との文化、価値観の差に興味・関心を持ち、柔軟に対応する | 57.6% |
企業の発展のために逆境に耐え、粘り強く取り組む | 48.9% |
当該職種における専門知識 | 44.3% |
出所:「産業界の求める人材像と大学教育への期待に対するアンケート結果」(日本経団連・2012年)
グローバル人材研修の目的

現地法人でのローカル人材の育成は別として、グローバル人材研修を日本人従業員に限定して考えると、グローバルビジネス展開への「適応力」を高めていくことに重点が置かれていることがわかる。異文化・現地法人と適応しながらコミュニケーションを図り、ビジネスを推進していくことができる人材を育てていくことが研修の大きな目的となっているのだ。特に、海外で起こるさまざまなストレスへの耐性を高めていくために、異文化理解と適応力をいかに備えていくかは、大きなテーマと言える。
一方で、周囲とのコミュニケーションや報告・連絡・相談など日常業務を円滑に進めていくためにも、手段としての「語学力」の強化は依然として根強い。事実、語学力の強化をグローバル展開へのメッセージとして、全面的に打ち出す企業は少なくない。