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コンプライアンス教育・監査のポイント

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コンプライアンス啓蒙活動の重要性

構築したコンプライアンス体制を実際に機能させていく上で重要になるのが、経営陣から従業員(アルバイト、パート、派遣スタッフなども含む)までの全役職員に対する教育、すなわち「コンプライアンス啓蒙活動」だ。コンプライアンス教育は、以下の各項目を押さえた内容で行うのが一般的だ。

  1. コンプライアンスの重要性
  2. 倫理方針などのルールに従う方が組織にとってプラスになること
  3. 一人一人はどのように振る舞うべきか
  4. コンプライアンス・マニュアル違反、法令違反があった場合の処罰

特に重要なのは、「企業利益と倫理が相反する場合には、必ず倫理を優先させる」という基本原則を全員が徹底的に理解し納得すること。日本社会ではよく「本音と建前」という言い方をするが、ここにそういった考え方が入ってくると、構築しようとしているコンプライアンス体制は土台から崩れてしまうと言っていい。

階層別の教育内容

コンプライアンス教育は、企業内での責任範囲や実務経験などに応じて、階層別に行うやり方が効果的だ。その一例を以下に示しておこう。

1.新人・一般職員クラス
【テーマ】コンプライアンスの基礎知識習得
  • 自社でコンプライアンス違反があったらどのような影響を受けるか
  • 従業員の心構え
  • 行動規範遵守の重要性
2.主任・係長クラス
【テーマ】コンプライアンス対処法の理解
  • 部下の行動見本となるために
  • コンプライアンス事例に対する対処法の理解
3.課長・部門長クラス
【テーマ】コンプライアンスの組織的な問題解決策の実践
  • 組織におけるコンプライアンス機能
  • コンプライアンス機能を有効に働かせるための管理職の役割
4.経営者・取締役クラス
【テーマ】全社のコンプライアンスをリードする経営者の役割
  • 法人の社会的使命と経営者の責任
  • 社内コンプライアンス体制の構築法
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キャリアの長い管理職、あるいは取締役クラスは、コンプライアンスがそれほど重視されなかった時代に社会人としての基礎を身につけていることが多い。従って、この層には、「何が本当の企業利益なのか」を再認識してもらうことが重要になる。

また、今後は「アルバイト、パート、派遣スタッフ」などにも、具体例を中心にしたコンプライアンス教育が必要になるだろう。実際に、店舗スタッフなどが個人のSNSで顧客情報を漏らしたケース、中傷的な書き込みを行ったケースなどでは、雇用している企業にも非難が向けられた。リスクマネジメントを徹底するなら、決しておろそかにすることはできない。

コンプライアンス教育の具体的方法

コンプライアンス教育も一般の研修と同様にさまざまな手法がある。多くの企業で行われている方法を列挙すると以下のようになる。

  1. 社内講師による研修・説明
  2. 社内行動規範・ハンドブック等の配布
  3. イントラネット等での情報発信
  4. 職場での周知・討論
  5. 法令研修・勉強会
  6. 社外講師による研修
  7. eラーニング
  8. ビデオ・DVDの活用
  9. ケーススタディー、ケースメソッド

経営者・取締役クラスの研修は、外部講師を招いて行うことが多い。それ以外は、コンプライアンス担当(コンプライアンス専任部署)が事務局となって行う。いわゆる座学の研修に関しては、コンサルタント会社や研修会社に依頼する方法もあるが、具体的な事例や経験談をベースに討論するような場合には、自社の従業員自身が講師になる方法が効果的だ。実際に「社内講師による研修」を実施している企業がもっとも多い。

コンプライアンス教育のポイント

コンプライアンス教育を実施している企業では、その80%以上が「効果があった」と回答している。この効果をさらに向上させるために工夫できるポイントをいくつかあげておきたい。

1)研修を効果的に行う「タイミング」

コンプライアンス研修を行うタイミングはいつがよいのだろうか。定期的に行うやり方もあるが、問題が発生していない時期には誰でも関心が低くなり、身につかないものだ。しかし、以下のようなタイミングであれば、緊張感を持って研修に臨めると思われる。

  1. 自社でコンプライアンスの問題が発生した(発生しそうになった)直後
  2. 同業他社でコンプライアンスの問題が発生した直後
  3. 業界で大きな規制緩和、ルール変更などがあった時
  4. 自社の組織に大きい変更があった時
  5. 海外進出や異業種への新規参入など、文化の違う領域での活動を始める時

2)役職員参加型の研修を工夫する

コンプライアンスの「勉強会」というと、「あれをしてはいけない」「こうしなければいけない」という話になりがちで、参加者がうんざりすることも珍しくないようだ。そういった場合には、主体的に参加できる形式にすることが効果的だろう。具体例としては以下のようなものがある。

(1) 具体例の情報収集・検証を自分たちで行う
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コンプライアンス違反は多岐にわたるため、一般論で語ることが難しい。そこで、できるだけ多くのトラブルの事例(できれば同業界)を集め、その背景を分析し、自社に当てはめて予防策を考える、といったケーススタディーが有効とされている。事例は、一般の新聞、ネットニュース、裁判の判例、社内での過去の例などから比較的簡単に集めることができる。研修の参加者に、その事例収集から分析、対策立案までを行ってもらうことで、知識だけでなく「考え方」も身につけてもらうことができる。

(2) パネルディスカッション形式の研修

講師が一方的に話すのではなく、報告者のレポートに対して、各部署や階層を代表するパネラーがそれぞれの意見を述べるパネルディスカッション形式を採用することで、聴き手の参加意識を高めることができる。パネラーは、各部門・各階層から男女比が偏らないように選ぶほか、アルバイトやパート、派遣スタッフ、さらには協力会社の社員などにも参加してもらうと、議論がより立体的になるだろう。

3)「尊敬される企業」になるイメージを伝える

リスクマネジメントとしてのコンプライアンスだけでなく、法令や倫理を遵守する企業として信用され、尊敬される企業になった場合のイメージも共有していきたい。そのためには国内外でコンプライアンス重視の経営を行い、素晴らしい成果をあげている企業の事例を紹介し、そういった企業を目標として全役職員でチャレンジしていくことも有効だろう。

文書管理

コンプライアンス体制を維持・運用していく上では、文書管理も重要になる。管理といっても、単に保管しておくという意味ではなく、すぐに使える状態を保つことや活用のしやすさを工夫することなどが主な狙いとなる。コンプライアンス関連文書の管理では、以下のような事項に留意する。

  1. いつでも文書の所在がわかる
  2. 業務の現場で必要な文書がすぐ参照できる
  3. 各文書は最新版である
  4. 廃止、または改訂された文書は撤去してある(保管する場合は利用しない旨を明記)

また、倫理方針、コンプライアンス・マニュアル、内部規程などを順次作成した場合は、各文書それぞれに矛盾がないかも確認しておく必要がある。また、定期的に自社の環境や法改正、社会環境の変化などに対応できているかもチェックし、バージョンアップしていく。

モニタリング・監査

コンプライアンス体制を構築した後、そのシステムが期待したような機能を果たしているかどうかを定期的にチェックするのがモニタリング、監査の役割だ。特に重要なのは、「現場からコンプライアンス担当へ」、または「現場から経営層へ」のコミュニケーションが円滑に機能しているかどうかのチェックである。現場が不法行為などに関する問題に気づいた際に、それがスムーズにフィードバックされる回路が機能しなければ、その企業のコンプライアンス体制は意味のないものになってしまうからだ。

1)社内でのコミュニケーション活動

社内コミュニケーションのチェックとしては、組織として用意した「相談窓口」がきちんと利用されているかどうかを見ることが中心になる。企業内の通常の相談事は、直属の上司に対してするのが一般的だが、コンプライアンスに関しては「上司に法令違反の行為を命じられた」といった難しいケースもあるため、この相談窓口の機能が重要になるのだ。一般的なチェックポイントは以下の各項目となる。

  1. 相談者のプライバシーが守られているか
  2. 相談者への報復行為などを禁じ、それに違反した場合の処罰ができる体制があるか
  3. 仮に相談者が報復を受けるなど不利益を被った場合、回復措置をとっているか
  4. 相談が記録され、保管されているか

こうした相談窓口の機能を保証するための具体的な方法としては、「外部の弁護士事務所などと提携して相談窓口業務を委託する」、または「専門の通報バイパスサービスと契約して相談窓口とする」などがある。

2)日常的なモニタリング活動

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相談窓口の機能以外にも、倫理方針やコンプライアンス・マニュアルなどに示された指針が日常的に守られているかどうかをチェックすることも重要だ。

チェックは、職場ごとにチェックリストやアンケートを配布して、気がついたことなどを記入してもらうやり方が一般的だ。チェックで浮かび上がった問題は、必ずコンプライアンス担当が是正措置を講じ、その記録を作成し保管する。ここでしっかりした対応を行わないと、従業員は自社のコンプライアンスへの取り組みを「建前だけ」と受け取り、以後の協力が得られなくなってしまう。

相談記録もモニタリングへの対応記録も、コンプライアンスへの取り組みが日常的に、また継続的に行われていたことの証拠を残すという意味もある。こうした証拠がないと、仮にコンプライアンス上の重大問題が生じた場合に、取締役の「善管注意義務違反」が疑われてしまうことになる。

3)内部監査

日常的なモニタリングとは別に、コンプライアンス監査を任務とする部門による内部監査も定期的に行うことが求められる。特別な部門をつくる余裕がない企業の場合には、被監査部門から独立した中立的な部門、個人でもよい。監査の目的は、主に以下の各ポイントとなる。

  1. コンプライアンス体制が計画した通りに機能しているかの確認
  2. 問題が発覚した場合、是正措置がとられ、後日それが再チェックされているかの確認
  3. 監査結果を取締役会、コンプライアンス担当、被監査部門の責任者に文書で報告

内部監査を全社一斉に行うのは難しい場合が多い。そのため、問題が発生しそうな部門、潜在リスクが大きい部門、過去に問題があった部門などを集中的にチェックする方法が有効である。


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