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一般的なコンプライアンス対策

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コンプライアンス違反を引き起こすもの

企業活動のあらゆる局面で発生リスクがあるコンプライアンス違反だが、それが引き起こされる背景を再確認しておくことは、対策を立てる上でも非常に重要だ。一般的にコンプライアンスの問題は、以下のようなさまざまな要素が複合的に絡み合って発生すると考えられる。

  1. 企業理念・使命感の喪失
  2. 役員・従業員の社会常識、倫理観の喪失
  3. 同質化した職場
  4. 内部監査体制の機能不全
  5. 不適切な人的交流

つまり、企業の本来あるべき姿を見失い、組織や自己の利益だけを重視する姿勢が、顧客や社会を無視する法令違反につながるのだ。しかも、同質化した職場ではなれ合いが横行し、チェック機能も働かないので、不正行為が日常化し、とりかえしのつかない事態にまで進んでしまう危険性がある。もちろん、談合を主導する企業や一部の公務員との癒着、反社会的勢力との交際もコンプライアンス違反に直結するものだ。

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このように見ていくと、コンプライアンスの問題は、主に「組織風土」「職場環境」に大きな要因があることがわかる。従って、コンプライアンス対策とは、「形」や「仕組み」をつくればそれでよいのではなく、最終目的は、目先の利益よりも倫理を優先する組織風土や職場環境、つまり「法令違反が起こりにくい企業体質」をつくりあげることと言える。

もっとも重要なのは経営トップの強い意思

法令違反が起こりにくい企業体質をつくりあげるためには、「コンプライアンス体制の整備」と「コンプライアンス啓蒙活動の徹底」の両輪が不可欠となる。

ここでもっとも重要なのは、経営トップの強い意思である。形だけコンプライアンス対策を行っても、経営者が本心では「法律など守っていたら仕事にならない」「この業界は昔からグレーゾーンが認められてきた」などと考えていれば、それがふとしたはずみに言動に出ることがある。一度でもそういうことがあると、組織は「コンプライアンス対策は所詮建前であり、真剣に取り組む必要はない」と受け止めてしまう。そうなると、せっかく構築したシステムも正常には機能せず、いつかはほころびが出てしまうだろう。

経営トップの強い意思
コンプライアンス体制の整備 コンプライアンス啓蒙活動の徹底

コンプライアンス体制に求められる要素

コンプライアンス体制の整備にあたっては、以下の要素を基本に考えていくのが一般的である。体制整備の中心となる社内組織づくりと行動基準作成などは、どちらを先に行わなくてはならないといった決まりはない。並行して進めても問題はない。

■ コンプライアンスの基本要素
(1)コンプライアンス体制構築 コンプライアンスのための社内組織づくり
(2)行動基準作成 倫理方針、行動規範集、内部規程などの文書作成
(3)リスク評価と対策立案 事業ごと、職場ごとにリスクを洗い出し、対策を立てる
(4)教育の実施 全役職員が自社のコンプライアンス方針を理解する
(5)文書管理 関連文書を利用しやすい状態で保管し、活用する
(6)モニタリング・監査 内部通報システムなどの定期的なチェック

コンプライアンス体制構築

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コンプライアンス体制を構築する場合、まず行うのはコンプライアンス専任部署の設置だ。専任部署は取締役会の下に置き、コンプライアンスを推進するために必要な権限を与える。この部署の責任者が、「コンプライアンス担当」として、全社のコンプライアンスを牽引していくことになる。非常に重要な役割なので、副社長や専務取締役など経営全般に一定の影響力を持つ人物を選任するのが望ましい。

コンプライアンス専任部署を「コンプライアンス委員会」とするケースもある。委員会は社外有識者なども含む組織であり、外部の視点も採り入れたい場合などに、この方式が採用される。しかし、委員会は基本的な方向性などを話し合うものなので、実務に関しては、コンプライアンス室のような実務部門をその下に置くのが一般的だ。

また、コンプライアンス専任部署とは別に「相談窓口」を設ける場合もある。別組織にするのは、相談者(内部通報者)のプライバシーなどを守り、相談しやすくするためだ。

■ コンプライアンス組織図例
コンプライアンス組織図例

コンプライアンス担当の役割

コンプライアンス推進の責任者であるコンプライアンス担当は、以下のような役割を果たすことになる。

  1. 倫理方針、行動規範集、内部規程などの文書作成・改訂の統括
  2. リスクの洗い出し・対策立案などコンプライアンス実施計画全般の遂行を統括
  3. 各種法令を把握し、役職員が必要に応じてアクセスできる状態を維持する
  4. コンプライアンス教育の実施
  5. コンプライアンスに関する報告相談業務
  6. 各部門との調整・連絡

行動基準作成

コンプライアンス経営を徹底するためには、企業ごとの行動指針を定め、全員がそれを共有することが基本となる。そのため、各種のコンプライアンス関連文書を作成し、全員に配布し、日常的に活用できる仕組みをつくる。各文書には決まった形式はなく、それぞれの企業で実情にあったものをつくればよい。また、最初から完璧なものをつくろうとするのではなく、必要に応じて徐々にバージョンアップを重ねて充実させていくというやり方でもかまわない。

1)倫理方針(倫理法令順守の基本方針)

各企業のコンプライアンスに対する基本方針を示した文書。狭義の「法令遵守」だけでなく、法令の精神や社会が求める人道的要請、社会貢献などにも言及するのが一般的だ。これは純粋に法令の遵守だけを目的としてしまうと、どうしても法の抜け穴を探すような考え方が出てくるためだ。また、この中で経営トップが自らの言葉で、コンプライアンスに真剣に取り組むことを宣言しておくこともきわめて重要だ。

2)コンプライアンス・マニュアル(行動規範集)

コンプライアンスに関連する特に重要な事項を、具体的な事例を盛り込みながら解説したマニュアル。法令の解説書ではなく、あくまでも自社が法令や社会規範から逸脱するリスクと、そうなった場合の影響などを整理していく。リスクの種類や想定される状況は企業ごとに異なるので、その洗い出しによって、本当に役立つマニュアルかどうかが決まってくる。コンプライアンス・マニュアルは作成すること自体が目的ではないので、作成後の「活用の仕方」を明確に決めておくことも大切だ。

コンプライアンス経営に積極的に取り組む企業では、こうした倫理方針やコンプライアンス・マニュアルを一般に公表しているケースもある。また、これらは一度作成すれば終わりではなく、企業の置かれている事業環境や社会環境の変化とともに見直し、必要があれば改訂していかなくてはならない。

3)内部規程

コンプライアンス体制を実効性のあるものにしていくための社内規程。コンプライアンス関連部署の権限や責任を明確化するのが主な目的となる。以下のようなものが一般的だ。

  1. コンプライアンス関連部署の権限規定
  2. 報告相談窓口の運用規定
  3. 監査部門の権限規定
  4. デュー・プロセスと賞罰規程

※「デュー・プロセス」とは、社内で問題が提起された時に、中立的な責任者や委員会が公平・公正な手続きによって判断を下すシステムを意味する。これが整備されていなければ、問題を指摘するのが非常に厳しい組織風土になってしまう。

中小企業などの場合、こうしたコンプライアンス関連文書をすべて整備するのが難しいこともあるだろう。その場合は「コンプライアンス・マニュアル」として、すべての要素をまとめた一つの文書にするやり方や、「就業規則」の中にコンプライアンス関連条項を盛り込んで対応するといった方法もある。

また、アルバイトやパートなど幅広い層に理解してもらうためには、薄いマンガ冊子をつくって配布することも効果的だ。ここでも、具体的な事例をわかりやすく盛り込むことがポイントになる。

リスク評価と対策立案

コンプライアンス・マニュアル作成時にもリスクの洗い出しは行われているが、それをさらに現場レベルにまで落とし込んで、どこに危険性があるのかを具体的に明確化していくことがコンプライアンス経営を実施する第一歩となる。各現場でリスクとそれへの対応策を考えることは、コンプライアンス活動をより身近なものにしていく効果もある。

※「教育」以降のコンプライアンス啓蒙活動の徹底については次章で述べていく。


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