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コンプライアンス違反から生じる影響

1)企業不祥事のパターン

多くの法令や社内規則が存在するため、さまざまな不祥事が起こり得る

コンプライアンス違反から生じる影響

コンプライアンス違反が問題となる状況には、さまざまなものがある。実際、コンプライアンスへの対応を考えた場合、企業やそこで働く従業員に対して、非常に多くの関係する法令や社内規則が存在する。以下に、実際に企業で十分に起こり得るコンプライアンス上のリスクをまとめてみた。

【起こり得るコンプライアンス上のリスク】
独占禁止法・下請法違反 ・カルテル、談合
・不当廉売
・下請けいじめ(値引き強要などの不当取引)
競合他社と価格や販売数量、販売地域などについて取り決めを行う不当な取引制限(カルテル)が代表的なもの。関与した場合には、厳しい罰則が課せられる。また、独占禁止法における「優越的地位の濫用」にあたる「下請けいじめ」の問題も多発している。
不正会計・不正受給 ・脱税
・粉飾決算、株価操作
・違法配当
・資金不正利用
・裏金捻出
・補助金などの不正受給
・債務不履行
不正会計の代表的なものは脱税、申告漏れ、所得隠しなどである。他方、上場企業などでは株価を維持するために、利益などを偽って申告するケースもある。不正受給では、行政からの各種補助金を受給するために、虚偽の申請を行うケースが多々見られる。このような行為は反社会的な行為であり、犯罪であることを強く認識しなければならない。
契約・対消費者への不正、不当行為 ・製造物責任
・リコール隠し
・不当表示(産地偽装、品質表示偽装など)
・耐震強度偽装
・保険金不払い
・貸し渋り、貸し剥がし
・個人的謝礼の受け取り
近年、急増しているのが、リコール隠しや不当表示など、消費者や取引先を欺くさまざまな偽装・偽造・隠ぺいである。これらの問題に対応するために2009年に消費者庁が発足した。今後、行政による消費者保護の方向性はさらに強まると思われる。このようなケースでは、問題を起こした企業が受けるダメージも相当に深刻で、実際、中小企業などでは倒産するケースも少なくない。
著作権・特許権の侵害 ・特許侵害
・ソフトウエアの違法コピー
・写真や文章の無断利用
特許侵害は、裁判に持ち込まれることが少なくない。そして、裁判で特許侵害が認められると、多額の賠償金を支払わなくてはならない。また、ソフトウエアの違法コピー、写真・文章の無断利用は安易に行われることが多く、注意が必要である。写真の場合は、肖像権の問題が発生することもある。
反社会的行為 ・贈賄
・反社会的勢力への利益供与
・反社会的勢力との交際
贈賄は、国内だけでなく海外での対応も重要だ。国外であっても、贈賄に関与していれば「不正競争防止法」が適用される。暴力団や総会屋などの反社会的勢力とは、慎重な対応が不可欠だ。例えば、各自治体が制定している「暴力団排除条例」では、不動産の提供など、一般的な取引を禁止しているケースがある。
雇用・労働問題 ・サービス残業
・過労死、メンタルヘルス不調
・性別による差別
・内部通報者への報復的人事、不当解雇
・偽装請負
雇用・労働問題としては、時間外労働に対して規程の賃金を支払わないサービス残業が、労働法違反の代表的なものである。過剰な労働は、過労死や従業員のメンタルヘルス不調の原因となり、問題が表面化すると、社会的な非難を受けることになる。また、性別による雇用機会・待遇・教育・評価・昇進などの不均衡は、女性活躍推進が求められている現在にあって、企業イメージを大きく損ね、人材確保の面で損失を被ることになる。
業務命令・社内手続きの軽視 ・違法業務命令
・仕事場での安全軽視
・上司印の無断利用
社内規則に則った業務命令や社内手続きを軽視することは、法令違反ではないが、コンプライアンス上、大きな問題と言える。例えば、利益や効率を優先するあまり、安全管理をおろそかにする組織風土が定着すると、取り返しのつかない事故につながることがある。その場合、安全を軽視する組織風土を作った責任を、経営層は問われる可能性がある。
ハラスメント ・セクシャルハラスメント
・パワーハラスメント
・モラルハラスメント
・ジェンダーハラスメント
近年、職場における「いじめ」「嫌がらせ」などをはじめとするさまざまな「ハラスメント」が急増し、企業の人事管理上、深刻な問題となっている。ハラスメントが起きたときに迅速かつ適切な対応を怠ると、企業としてさまざまなリスクを抱えることになる。また、対応を誤った場合(裁判で敗訴した場合)のダメージは、非常に大きなものとなることが予測される。さらに、職場の雰囲気を乱し、業務効率の低下や業績悪化の一因となる。
情報マネジメントの誤用・不正 ・個人情報の漏えい、目的外の使用
・企業秘密の漏えい、不正取得
・電子メール、SNS利用上のトラブル
・インサイダー取引
ITが情報マネジメントのインフラとなっている現在、取り扱われる情報の適正な管理が、非常に高度なレベルで求められる。代表的な情報としては、顧客や取引先、従業員などの個人情報だ。これらが流失すると多大な被害が生じ、社会的な信用を失うことになる。また、従業員のSNS利用時のリスク管理、営業秘密の不当取得、さらには上場株式のインサイダー取引など、情報マネジメントに関しては非常に幅広いリスクが内在している。
モラル・私生活上の問題 ・業務上横領、私的流用
・飲酒運転
・賭博行為
・違法薬物使用
・暴力
横領は明白な犯罪行為だが、私的流用などの行為が度々起こるような組織風土があること自体、管理体制に問題があると言える。また、従業員の私生活も企業のコンプライアンスと無関係ではない。法的違反となる行為を起こした場合、マスメディアなどで企業名が報道されることになり、少なからぬ影響が及ぶことがある。
環境への対応 ・土壌汚染、水質汚染、大気汚染
・廃棄物の不法投棄
・二酸化炭素排出量の不正申告
環境汚染や不法投棄など、環境問題に対する企業の姿勢、対応もコンプライアンス上、重要なテーマとなっている。さらには、二酸化炭素排出量の不正申告なども、問題視されるようになってきた。実際よりも少なく見積もって申告した企業に対しては、地球環境に対する責任感がない企業という批判が集まることになる。

2)企業が受けるダメージ

信用の失墜、行政からの罰則・処分など、さまざまな影響を被ることに

コンプライアンスに対する社会的な関心が高まったことにより、問題が発生した時に企業が受けるダメージも大きくなった。実際に倒産した企業や事業縮小に追い込まれたケースは少なくない。また存続できたとしても、企業イメージ、ブランドは大きく損なわれ、信頼を回復するには長い年月を要する。コンプライアンス違反によってどのような影響を被るのか、以下に整理してみた。

【コンプライアンス違反で被る影響】
信用の失墜 「内部統制の効いていない企業」というイメージが広がり、長年かけて築き上げてきた信用が一気に失われることになる。例えば、「消費者・取引先」「株主」「求職者」からは、以下のような信用を失うことになる。
消費者・取引先:不買や取引自粛などが起き、売上・収益が大きく低下する。近年は小規模な不祥事でも、SNSなどによって一気に火がつき、社会問題化するケースも少なくない。実際、ネット世論によって不買運動が広まった例もある。
株主:売上・収益が低下すれば、株価は下がる。コンプライアンスが問題で株価が低下した場合、その企業を信頼して長期的に株式を所有していた安定株主から見放されてしまうおそれがある。
求職者:事業を継続できたとしても、企業イメージ、ブランドが失墜したことで、採用競争力も低下してしまう。違法行為が発生するような企業で働きたいと考える人は少ないからだ。良い人材が採用できない状態が続くと、長期的に企業力が低下していくことなる。
行政からの罰則・処分 近年、法令違反に対する行政の対応は、一段と厳しくなっている。従来は是正勧告を出し、従わなかった場合に罰則を科すという方式だった分野も、コンプライアンスが重視されるようになった2000年以降、違法行為が確認された段階で、摘発や処分が可能になる「直罰規定」を法律に盛り込むケースが表れている。また、海外では日本よりもはるかに厳しい処罰(罰金)が下されることが多い。海外で活動したり、取引のある企業はその点を十分に認識し、対応する必要がある。
損害賠償・株主代表訴訟 株主代表訴訟の手続きが簡素化されたこともあり、コンプライアンス違反で企業がダメージを受け、株価が下がったような場合、株主は経営層に対して必要なコンプライアンス体制の構築を怠った責任を問い、損害賠償を求める訴えを起こすことが現実的になった。裁判所がその責任を認めれば、経営層は私財で賠償をしなくてはならない上、社会的信用やイメージが大きく損なわれるのは言うまでもない。
企業風土の荒廃 違法行為を当然とするような事業運営を行っていると、そこで働く従業員も不正を当たり前のように感じてしまう。その結果、消費者や取引先への不当な営業、自社の物品や資金の横領、不良品の見逃しなど、企業風土が荒廃し、問題を起こしやすい環境になる。社内の雰囲気も悪化し、従業員のモラルが低下、離職者も増えていく。

3)コンプライアンス違反の原因

さまざまな要素が複合的に絡み合って発生する

コンプライアンス違反は、「企業理念・使命感の喪失」「役員・従業員の社会常識、倫理観の喪失」「悪い意味で同質化した職場」「内部監査体制の機能不全」「不適切な人的交流」など、さまざまな要素が複合的に絡み合って発生する。企業の本来あるべき姿を見失い、組織や自己の利益だけを重視する姿勢が、顧客や社会のことを考えず、無視する法令違反につながっていくのだ。同質化した職場ではなれ合いが横行し、チェック体制が働かない。その結果、不正行為が日常化し、内部監査体制が機能することがないので、取り返しのつかない事態にまで進んでいくことになる。あるいは、談合を主導する企業や行政との癒着、反社会的勢力との付き合いも、コンプライアンス違反に直結してく。

つまり、コンプライアンスの問題は、組織風土や職場環境に大きな要因がある。だからこそ、コンプライアンス対策で重要なのは、「仕組み」を作るだけでなく、目先の利益よりも倫理観を優先する組織風土や職場環境の構築、つまり、法令違反が起こりにくい企業体質を作り上げることであると言える。


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