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掲載:2017.10.20

2017年9月開催
HRコンソーシアム全体交流会 レポート

人事の、人事による、人事のためのオープンプラットフォームである、「日本の人事部HRコンソーシアム」。その第2回の「全体交流会」が、2017年9月8日に開催された。冒頭では、各分科会参加企業の感想を共有する報告会を実施。後半はその分科会のひとつである「HR Tech・AI」グループを代表して、アクセンチュア株式会社 佐藤優介氏による講演「HR領域におけるテクノロジー活用~人事業務や人事としてのキャリア構築はどう変わっていくべきか~」が行われた。広い会場の各テーブルは、会員企業に加えオブザーバー参加の企業からの出席者で埋まり、参加者は情報収集と企業の垣根を超えた人事同士の交流に熱心に取り組んでいた。

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分科会報告

HRコンソーシアム内において、4月から定期的に開催されている分科会。その現状や成果を、各会の代表者が報告した。

テーマA「新しい働き方を実現させる組織と評価」
報告:日本トイザらス株式会社 人材開発部 組織開発課 原浩子氏

この分科会には11社14名が参加。「『働き方改革』に取り組む上で、人事は経営・現場と何について話し、何を決めなければいけないのかを整理する」というテーマで意見交換が行われている。原氏はこの分科会に参加した動機を、「実務者から具体的な事例が聞ける。講演会などと違って、聞きにくいことも直接聞けるのが魅力だった」と語る。施策が導入された背景など、人事担当者として共感することも多く、他社の人事と利害関係を離れて交流することの意義を実感できたことも大きな成果だったという。事務局でも、自由な意見交換を妨げないよう、議事録をあえて文書化しないなどの配慮を行っている。「自社で困っているような問題を、他社でも抱えていることを知ることができました。また、実務上のヒントや課題に対処する勇気をもらえました」という原氏のコメントが印象的だった。

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テーマB「HR Tech・AI」

この分科会には11社17名が参加。「デジタルHR推進のために、これからの人事部およびHRパーソンに必要なことを整理する」というテーマで話し合われている。参加メンバーには若い世代が多く、非常に活発な意見交換が行われているという。参加した動機について、「他社の事例を知り、自社のプロジェクト推進に活かしたかった。同時に最新動向をキャッチし、社内外への貢献力を高めたいという『自身の成長』も目的の一つだった」と語る。実際にHR Techに関するさまざまな知見やアドバイスが得られたと同時に、「他社の人事とつながることの意義」を再確認できたことも大きかったという。

テーマC「人事部力 ~良い人事部とは何か~」
報告:双日株式会社 人事総務部 人事企画課 佐々木智之氏

この分科会には6社8名が参加。「『人事部力(いい人事部とは)』について定義・言語化し、自社の人事部力の向上のためにすべきことを明らかにする」というテーマに取り組んでいる。佐々木氏は営業から人事に異動したキャリアを持っており、「営業では同業他社と交流する機会はまずなかったが、人事では企業の枠を超えて話し合えることが非常に新鮮に感じられた」と語った。普段の業務では改めて考える機会が少ないテーマについて話し合うことで、「経営と社員、どちらの視点から考えるのか」「人事もまた企業業績に貢献する存在でなくてはならない」など、多くの気づきが得られたという。他社との交流によって、当然と思っていた諸制度が当たり前ではないこと、同じような課題が他社にもあることを知るなど、非常に有意義な会合になっているそうだ。

分科会には、8月から新たに「ノーレイティングを題材に自社の目標管理・人事評価のプロセスを考察する」というテーマが加わった。これは参加企業メンバーからのリクエストで立ち上がったグループだ。また、11月からは、「サクセッションプラン・経営人材育成」「育成・研修」の二つの分科会がスタートすることが事務局より発表された。

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講演 「HR領域におけるテクノロジー活用~人事業務や人事としてのキャリア構築はどう変わっていくべきか~」
講師:アクセンチュア株式会社 人事部 リクルーティング 新卒採用チームリード 佐藤優介氏

「HRコンソーシアム全体交流会」後半では、分科会のひとつ「HR Tech・AI」にも参加している佐藤氏による講演が行われた。もともと戦略コンサルタントとして企業のさまざまな課題解決に取り組んできた佐藤氏は、人事領域でのHR Tech・AI活用についても最新の知見を持つ存在として、さまざまな分野のリーダーたちとネットワークを築いている。この日の講演は、HR Tech・AIの導入によって「人事はどう変わっていくべきか」にフォーカスした内容となった。

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佐藤氏はまず、参会者全員に呼びかけた。

「今日は最初に、グループワークを行います。各テーブルで、(1)自社のデータ整備状況、(2)人事領域の分析としてどのようなことを行っているか、(3)そのためのツールの導入状況はどうかをディスカッションしてください」

しばし話し合いの時間が設けられ、ひとしきり盛り上がったところで、いくつかのテーブルで出た議論の内容が共有された。

●システムが業務分野ごとにばらばらでパッチワークのようになっている。エクセルなどを使って分析のようなことは行っているが、出したい結果になかなかたどり着けない。

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●データの一元管理が難しい。改善したいが会社の方針でそこまでの予算が認められない。申請しても上層部からは『人事はデータだけでは語れない』というような反応が返ってくる。

現場の悩みは、各社とも共通するところが大きいようだ。ただ、経営陣の反応については、改善に積極的なところとまだ理解が進んでいないところがあり、社風によってもかなりの差がみられる。そういった状況を踏まえて、佐藤氏が紹介したのが「HR Techの導入ステップ」だ。

「よく相談を受けるのは、『どんなツールがいいのか』『AIやボットの導入はどうすればいいのか』といったこと。しかし、まずやるべきなのは基盤のデータをどう整備するか、ということです。データが未整備の状態で、高度な分析やツールを導入しようとしても、決してうまくいきません」

社内に分散したデータを整理し、続いて何がしたいのかという目標に向かって分析手法を固める。最初はエクセルなどの計算式で十分だという。そこが「初級」の段階だとするなら、さらに多くのデータを集め、分析手法を高度化させていく過程は「中級」ということになる。データマネジメントの責任者を配置したり、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの最先端ツールを入れるのはその後の「上級」の段階だ。このように段階を踏んでいくことの重要性を、佐藤氏は複数のスライドを示しながら説明していく。参加者の多くが「自社はどの段階にあるのか」を意識しながら、話に耳を傾けたのではないだろうか。

中盤は、HR Techの導入によって「人事の仕事はどう変わるのか」というテーマとなった。この日の核心の部分だ。佐藤氏は人事領域の仕事を階層化したピラミッド型の図形を示す。今後の人事の進んでいく方向性を予測したものだ。

○経営(人事戦略):CHROの人材輩出のために人材育成が必要
○人事企画:標準化・高度化されていくため、プロ人事のクラウドソーシングやAIのPlanレコメンドが行われる
○人事業務効率化や集約化が行われる。デジタルレイバー(RPA/AI)による業務の自動化が進む

まず、もっとも経営に近い人事戦略の業務は「CHRO(チーフHRオフィサー)」が担うようになる。財務を管轄するCFOと同じくらい、未来の企業にとっては重要なポジションだ。中段の人事企画は、現状よりもさらに高度でプロフェッショナルなスキルが求められるようになる。そして、最下段の定型化された業務は、ほとんどがAIに代表される「デジタルレイバー」に置き換えられ、どうしても人が行われなければならない業務だけを少人数でスポット的に人が対応していく。現状では「定型業務」に従事している人の割合が高いが、今後は人事もスキルアップし、「より上位の人事企画以上の業務に従事するようにシフトしていくことが求められる」と佐藤氏は言う。

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ここでアクセンチュアが作成した短い動画が上映された。「テクノロジーを活用した未来の働き方」を映像化したものだ。画面の中では、オフィスにいる社員たちがAIと対話しながら業務を進めていく。これは、先ほど人事企画の将来像を示す図の中にあった「AIによるPlanレコメンド」を具体化した映像だ。

「AIは随時、もっとも効率的な仕事の進め方を提案してくれます。ここでの人の役割は『意思決定』と『コミュニケーション、周囲の巻き込み』です。すでにアクセンチュアは、こうしたAIを実用化しており、アメリカでは製品展開も始めています」

“Accenture MyWizard”というこのAIは、「プロジェクトマネージャー」「データサイエンティスト」など職種ごとに分かれ、業務の各場面での最適のサゼスチョンや自動分析、解析を行ってくれる。

では、同じ人事企画の未来像の中にあったもう一つの言葉「プロ人事のクラウドソーシング」とはどういうものなのか。これは、業務を自社で雇用する人材によって進めるのではなく、タスクごと、プロジェクトごとにクラウドソーシングで外部の専門性の高い人材に委託していく、という考え方だ。これを佐藤氏はアクセンチュアのテクノロジービジョン2017の言葉を引用し、「人材のマーケットプレイス」と表現した。

「アメリカでは2020年には全労働人口の50%がフリーランスになり、タスクベース、プロジェクトベースで仕事を受けていくようになるという予測が発表されています。イメージしやすいのは、ハリウッドの映画製作現場でしょうか。作品ごとに監督や脚本家、俳優などが集められ、映画が完成したら解散します。今後は企業のあらゆる業務がそうなっていくでしょう」

つまり、これからの企業の競争力は「採用力」ではなく、優秀な人材・タレントの「調達力」によって決まってくるのだ。人材のマーケットプレイスへの広報力、あるいは普段からのコミュニケーションといったものが重要になる。

これからの人事は、人材のマーケットプレイスを意識した「調達」や「育成」といった人事戦略を見据えていくことが求められる。さらに、「自らの働き方の変化」にも対応していかなくてはならない。アメリカではそういった動きが急速に進んでいるという。日本企業で働く人事にとっても、それはもはや未来予測といったレベルの話ではなく、明日に差し迫った現実なのかもしれない。

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講演の終盤では、佐藤氏が実際に関わってきた事例を共有した。

(1)シミュレーション分析を活用した第二新卒採用改革
(2)BI・アナリティクスツールの紹介
(3)LINEを活用した問い合わせ対応の自動化事例の紹介
(4)HRプロセスにおけるRPAの導入

いずれも具体的な内容が詳細に語られた。すぐにでも応用できそうなリアルな事例であるだけに、参加者の多くが熱心に耳を傾けていたのが印象的だった。ただ、佐藤氏は最後にこう付け加えた。

「自動化、効率化に関する取り組みは、人事の課題としてはあくまでも枝葉の議論でしかないと私は考えています。人事のミッションは、本質的には企業業績への貢献という経営的側面と従業員への個別サポートの2つだと考えています。そのためにも、HR Techという言葉に振り回されずに、「人事としてのミッションを達成するために、テクノロジーを活用して自動化・効率化を行っていく」と意識することが重要だと思っております。」

質疑応答

講演終了後には参加者を交えての質疑応答が行われた。

質問者1:上層部がHR Tech導入に積極的でないのだが効果的な進め方は?
佐藤氏:粘り強いコミュニケーションと「他社事例」がポイントだと思います。多くの事例を集めるだけでなく、他社の人事の事例を紹介することでより具体的なイメージができますので、その方法が効果的ではないでしょうか。

質問者2:RPA導入時に注意すべきことは?
佐藤氏:定型化業務の自動化には「定義」が重要。そこをしっかり行わなければ、後で手戻りが発生すると思います。

質問者3:雇用のクラウドソーシング化が進んだら就業環境が不安定化しないでしょうか?
佐藤氏:日本では「副業・兼業」が突破口になるのではないかと考えています。風土的にアメリカほどフリーエージェント化が進まないと個人的には考えております。安定した環境を確保しつつ、専門性も活かせる副業・兼業を行うということで、自分のスキルやキャリアを伸ばしていくのが日本のマーケットには適合性がある気がしています。副業を認める企業が増えている背景には、そのような世の中のトレンドを読んで、正社員の「採用」という形に縛られずに、タレントの「調達」を優先しているからなのではないかと考えています。

質問者4:AIが何でもアドバイスしてくれる時代になると、人材育成に問題は出ないか?
佐藤氏:いかに日々の仕事の中でチャレンジしてPDCAを回し、そこから学びを得るかが重要になると思っています。そのため、最近では大企業からよりチャレンジする機会の多いベンチャーに出向して経験を積んでもらうような事例も増えてきたと思っています。

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「HR Tech・AI」について第一線で取り組んでいる佐藤氏の話をもとに、参加者全員で「人事の未来」について考えた、今回の「日本の人事部HRコンソーシアム」。これから本格的に「HR Tech・AI」を取り入れていきたいと考えている人事の方々にとって、多くの「気づき」や「共感」があったようである。

懇親会

会合終了後、懇親会を実施。その席上でも活発な意見交換が続いた。
(会場:神楽坂Human Capital Studio(株式会社ディスコ協力)/ 〒162-8701 東京都新宿区下宮比町2-12)

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