掲載:2018.11.19
ベンチャーから大企業まで「日本の人事を強くする」
双方向型で意見交換できる人事コミュニティー HLC
株式会社CyberQ 取締役
久慈秀斗さん

人事が強くなれば会社が強くなる。会社が強くなれば社会も強くなる。よりよい社会を築くためにはまず、日本の人事を強くする必要がある――。この思いをベースに2017年9月にスタートしたのが、会員制人事コミュニティーのHLC(Human Resource Learning Community)です。運営を担っているのは、株式会社サイバーエージェントの100%出資子会社である、株式会社CyberQ(サイバーキュー)。活動開始から一年たらずで、ベンチャー企業の人事担当者から大企業の取締役クラスまで約700人もの会員が集まり、活発に交流しています。同コミュニティーの概要や活動内容、今後の方向性などについて、株式会社CyberQ 取締役の久慈秀斗さんにうかがいました。

- 久慈 秀斗氏(くじ しゅうと)
- 株式会社CyberQ 取締役
慶應義塾大学経済学部卒業。サイバーエージェント選抜型インターンシップDRAFT一期生(MVPに選出)。DRAFT内の案をベースにした就活chの立ち上げに参加。内定者時代にグループ子会社株式会社CyCAST立ち上げる。2017年サイバーエージェントに入社、CyCASTに出向。会員制人事コミュニティHLC 事業責任者を務める。2018年CyCASTがCyberQに社名変更、同時に取締役就任(現職)
人事に関する情報は大いに交換してシェアすべし
まずは「HLC」を立ち上げられた背景や目的からお教えいただけますか。
もともと私は、サイバーエージェントの採用の一貫として、自分たちで企画して立ち上げた「人事就活チャンネル」という動画制作・配信プロジェクトに携わっていました。新卒向けの会社説明会などを動画にしてインターネットで配信することで、説明会のために上京する地方の学生の負担を軽減するとともに、優秀な学生と出会うチャンスを増やし、ミスマッチを減らすというプロジェクトです。その経験があったので、以前から人事には興味と可能性を感じていました。
HLCを具体的に構想したのは、2017年5月頃のことです。大学時代の同級生たちに会うと、非常に楽しそうに仕事をしている人とそうでない人がいて、「なぜだろう?」と思っていました。会社のせいかもしれないし、個人に原因があるのかもしれない。いろいろと考えるうち、会社と社員をつなぐ「人事」こそが大事ではないかと思うようになったんです。そこから「人事のためのオンラインサロン」というアイデアが生まれました。

私自身に人事経験はなかったのですが、「人事就活チャンネル」で上司だった曽山哲人がサイバーエージェントの人事担当取締役としても豊富な経験を持っていたので、相談しながら企画を具体化していきました。そうして固まったコンセプトが「日本の人事を強くする」。人事が強くなれば会社が強くなり、会社が強くなれば社会が強くなる。本気でそう考え、新たなサービスとして立ち上げたのが、会員制人事勉強会コミュニティーであるHLCです。
中心にあるのは、各社の素晴らしい取り組みを共有していこうという発想。人事に関する情報をシェアしてもそこに競合性はない、という考え方です。なぜなら、人事は経営にひも付くものですから、まったく同じ経営戦略の会社がない以上、単純に他社のまねをしてもうまくいくとは限らないからです。しかし、多くの生きた事例を知ることで、価値ある選択肢を得ることはできます。勉強会で講師の話を一方的に聴くだけでなく、会員同士の横のつながりを生かしてさまざまな知見をシェアしていくことこそがHLCの目的であり、使命だと考えています。
どのような方々が会員として参加されているのでしょうか。
スタートから1年たっていませんが、会員数はすでに700名を突破しました。IT業界を中心に、従業員数300名以下のベンチャー企業に所属されている方が60%を超えます。同時に、ソフトバンクさん、リクルートさんなどの有名企業からも数多くご参加いただいており、非常に幅広い方々と交流できることも特長です。法人会員様だけではなく、個人の方も多くいらっしゃいます。
人事に携わっている方が中心ですが、HLCでは特に参加資格を設けず、人事以外の方の参加も歓迎しています。実際、社員や部下のマネジメントが必要な経営者やマネジャークラスの方も多く参加されています。社長、取締役、人事部長など、会員の約6分の1は管理職クラス以上の方たちです。
定例会・交流会から、会員発の分科会まで多彩な活動
主な活動内容について教えていただけますか。
基本となるのは月2回、勉強会として開催する「定例会」です。曽山をはじめ、テーマに応じてその分野に詳しい講師によるレクチャーと質疑応答を行います。時間は約90分。スタイルとしては、いわゆるセミナーですが、その中に必ず「グループワーク」を取り入れて、参加者の皆さんからのアウトプットもあるように工夫しています。講師から受講者への一方通行ではなく、双方向であったり、参加者同士の横のコミュニケーションであったり、HLCならではのオリジナルな価値を付加していきたいと考えています。
たとえば「採用のクロージングに使うキーワードは何ですか」というテーマで、グループワークを行ってもらったとします。1グループ4人として、4グループに発表してもらうと、明日から使える16通りもの採用のキーワードを共有することができるわけです。
ベンチャー企業の場合、人事経験のない人がいきなり人事をやることになったり、社内に人事が一人だけで相談相手がいなかったりすることも珍しくありません。定例会でのグループワークによる事例共有、あるいは普段からのフェイスブックを介しての会員同士の情報交換で、いわゆる「ぼっち人事」の悩みを解決できるのも「HLC」の大きな魅力です。
定例会には、何人くらいの方が参加されるのでしょうか。

定例会の様子
平均して70名前後の会員の方にご参加いただいています。予定があわなかった方や遠隔地の方のために動画配信も行っており、過去の定例会もすべて視聴可能です。また、現状では東京・渋谷の弊社オフィスを会場としていますが、今後は大阪などでの開催もできたらと考えています。
定例会では毎回お酒を交えた交流の時間を設けています。やはりカジュアルな雰囲気でのほうが会員様同士の打ち解けも早いと感じているためです。最近では、私たちが関与しないところで、自発的に勉強会や食事会が開催されるケースも増えています。良いコミュニティーができつつあるなと、非常にうれしく感じますね。
その他にはどのような活動を行われているのでしょうか。
ちょうど動きだしているのが、会員発の「分科会」です。定例会では扱いにくい、よりニッチで専門的な題材を扱おうとするもので、有志会員が運営委員となって、より深く関わっていくことがポイントです。人事の仕事は本当に多種多様で、私たちだけではすべてをカバーしきれないのが実情です。そこで、会員同士が必要と考える領域をより深く掘り下げる場を設けることにしました。人事部内での役割や使っているツール、サービスごとにテーマを絞り込んで、それぞれのノウハウを交換、共有できる場にしたいと考えています。最初は運営委員に手をあげてくださる方がいるかどうか、少し心配したのですが、結果的には15名もの方が立候補してくださいました。今はまだ企画中ですが、まもなく形になって動き始める予定です。
単発のセミナーにはないコミュニティーならではの魅力
それ以外にも、今後展開される計画などがあればお聞かせください。
HLCで得た知識をもとに、実際にやってみてどうだったのかを可視化できればいいな、と考えています。勉強しただけではダメで、実際にアクションを起こさなければ日本の人事は強くなりません。その一つの試みとして、会員へのインタビューを始めています。その結果も、会員の皆さんにフィードバックしていく予定です。
もう一つは、これだけ人事の現場にいる人が集まっているわけですから、人事関連のさまざまな新製品・新サービスのモニタリング組織としても可能性があると思っています。たとえば、新しいHRテクノロジーの製品が出たときに試験導入してもらう。開発元は実際の人事の目で見てどうなのかという貴重なデータを得ることができますし、会員にとっては新しいツールやサービスをいち早く知る機会になります。本当にいいものなら、他社に先がけて導入するチャンスにもなります。HLCの会員には新しいものに関心の高い人が多いので、ぜひ実現させていきたいと考えています。
活発に活動されているHLCですが、参加してほしいのはどういった方々でしょうか。
入会には資格制限はなく、幅広くご参加いただきたいのですが、最もHLCを活用できるのは、とりわけ「ぼっち人事」と言われるような方々だと考えています。HLCでは会員企業の生の声が聞けます。本を読んで勉強する方法もありますが、リアルな人事施策の詳細は表に出てこないことも多いと思います。人事の機微を肌で感じてほしいですね。
「あれやってみたよ」「どうだった?」といった情報交換ができるのは、単発のセミナーとは違う継続的なコミュニティーならではのメリット。スタートからまもなく1年ですが、良いコミュニティーができ上がりつつあると感じています。ぜひ一緒に、日本の人事を強くしていきましょう。
