日本企業の海外売上比率が高まっているが、一方でグローバル人材の育成やマネジメントには、まだ多くの課題が残されている。いま人事はどのような投資を行い、どのような方策を打つべきなのか。ここで参考にしたいのは、先行してグローバル投資を行い、成功させている企業の動向だ。
今回『日本の人事部』では富士通株式会社が主催する勉強会を取材。日米企業(銀行、証券、重電、電子部品、食品)で25年以上にわたり人事実務に携わった経験を持つ、立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科(MBA) 教授 中川有紀子氏の導入講演とファシリテーションのもと、富士通におけるグローバル人材マネジメントの取り組み事例などを紹介した。

- 中川 有紀子氏
- 立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科(MBA)教授/Barack(バラク)株式会社 代表

- 関 淳一郎氏
- 富士通株式会社 人事本部 シニアディレクター
<講演1>2020年に向けたGlobal HRのトレンド -HRISが影響を与えるHR機能の変化-
人事の世界では「最も強い者ではなく、変化できる者が生き残る」
中川氏はまず、2020年に向けてのGlobal HRのトレンド、また、HRIS(人材情報システム)導入によるHRの機能の変化について語った。
外部環境をみると、日本企業の売上比率(出所:ジェトロ世界貿易投資報告2016年版)は、国内比率では2000年71.4%から2015年41.7%まで降下。それとは逆に、同時期の海外比率は28.6%から58.3%へと上昇した。

「2000年からのたった15年間で、海外売上比率は倍以上に増加し、国内市場は半分以下に減少しています。国内市場の成長鈍化を受け、日本企業は海外で稼ぐ姿勢をさらに強めています。地域別でみると、海外売上比率は米州が2000年13.4%から2015年25.9%とほぼ2倍に、アジア大洋州は5.8%から18.4%と3倍以上に増え、この2地域が大きなシェアを占めています。事業戦略が海外にシフトする中、企業の人財配置は、より利益が出る市場に最高人財を配置しているでしょうか」
次に中川氏は、欧米グローバル企業での人財データの進化について解説した。欧米企業も日本と同じ外部環境にあり、もうかる市場への人財配置を戦略的に進めている。
「1980年から2016年までの経過をみると、人財データのボリュームが加速度的に増えました。時代ごとにみると、1980年以降に人材管理とコンプライアンスがデータ化されてインフラとなり、その上に1990年以降、タレントマネジメントのデータが加わります。今ではその上に、Social Technology & Behaioralといった組織ネットワークや行動データが加わりました。この欧米企業の動きと比較して、日本企業の人事部はどこまでデータ化を進められているでしょうか」
ここで中川氏は、英国の自然科学者であるチャールズ・ダーウィンの言葉を示した。『最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である』
「企業の売上、顧客、競合他社など、外部環境が激変していますが、内部環境の“人財”はこの変化に適応できているでしょうか。2020年を見据え、海外売上高が過去最高を更新する企業が増加することが予想されています。その中で企業の人事部は、どのように役割を変化させていけばよいのでしょうか」
「2020年、人事部門の機能はどう進化するか」。考えられる六つの予測
2020年、人事部門の機能はどう進化していくのか。その方向性について、中川氏は「今後Iot、AIが進化する中で、SHRM(米国人事管理協会)は“データ分析・考察能力”“ビジネス戦略への深い理解”が必要とされていくと予想している」と解説し、ここから考えられる六つの予測について解説した。
米国オラクル・コーポレーションの日本法人として1985年に設立(証券コード:4716)。 「No.1クラウドカンパニー」を目標に掲げ、広範かつ最大限に統合されたクラウド・アプリケーションおよびクラウド・プラットフォーム、ビッグデータから情報価値を創出する製品群の提供と、それらの利用を支援する各種サービスの事業を展開。

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