厚労省・ストレスチェック制度に関するマニュアル作成委員に聞く!ストレスチェック義務化対策――見過ごされている「経営リスク」とは

「マイナンバーは待ったなし。女性活躍推進の行動計画も作らなければいけないのに……これも!?」――今年12月に施行される「ストレスチェック義務化」への対策に、多くの企業の人事担当者が頭を抱えています。新制度への対応が重なるなか、「とりあえずストレスチェックを実施すればよいのでは」と考えている企業もいまだ多いようです。しかし、厚生労働省「ストレスチェック制度実施マニュアル」作成委員を務められた産業医の岡田邦夫先生は、「安易な実施は、セキュリティをはじめ、様々な経営リスクを増大させる」と指摘します。ストレスチェック義務化で、企業がやるべきこと、やってはいけないことは何か――。岡田先生と、企業向けEAP(従業員支援プログラム)サービス「TEAMS」を提供する保健同人社の古川弘和社長に語り合っていただきました。

プロフィール
岡田邦夫氏 プロフィールPhoto
NPO 法人健康経営研究会 理事長/プール学院大学 教育学部 教授/労働衛生コンサルタント/日本医師会認定産業医
岡田邦夫氏
おかだ・くにお/

平成26年度 厚生労働省「ストレスチェック制度に関するマニュアル作成委員会」委員
平成26年度 厚生労働省「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取扱い等に関する検討会」委員
平成27年度 厚生労働省委託「ストレスチェック制度の効果検証に係る調査研究事業―ストレスチェック制度に基づく面接指導及び長時間労働者に対する簡易マニュアル作成委員会」委員

大阪市立大学大学院医学研究科卒業。プール学院大学教育学部教育学科教授 健康・スポーツ科学センター長 。平成22年度厚生労働省、平成24年度文部科学省のメンタルヘルス関係の委員を歴任。現在は特定非営利活動法人健康経営研究会理事長でもある。

古川弘和さん プロフィールPhoto
株式会社保健同人社 代表取締役社長
古川弘和氏
ふるかわ・ひろかず/金融サービス会社を経て、2003年総合メディカル株式会社に入社。社長室長、執行役員経営戦略部長、営業企画部長など歴任。その間、特定保健指導事業、治験事業などの新規事業に参画。2015年3月より現職。
企業向け EAP(従業員支援プログラム)サービス『TEAMS』
『TEAMS』ロゴ

(株)保健同人社と(株)ヒューマネージが共同で提供するEAPサービス。890 法人761 万人以上の利用実績を誇る。保健同人社は、1988 年、電話健康相談から EAP サービスをスタートし、専門職による相談・研修・コンサルティングサービスに強みを持つ。ヒューマネージは、2003 年、ストレスチェック「Co-labo」の提供を開始しEAPサービスをスタート、特に一次予防に強みを持つ。採用支援システムではシェア第1位*、新卒採用向け適性検査ではシェア第3位*を誇る。

*「就職希望企業ランキング(大学 文系全体・理系全体)」(2015 年 6 月、日本経済新聞社調べ)におけるシェア(ヒューマネージ調査による)

高ストレス者が働き続けてうつ病になった場合、最近は“会社法”で裁かれる

岡田:あらためてストレスチェック義務化の経緯を振り返ると、もともとはバブル崩壊以降の自殺・うつ病対策が始まりです。1998年から、それまで年間2万人台前半で推移していた自殺者数が急増し、毎年3万人を超すようになりました。その後、働く人のメンタルヘルス不調の問題が顕在化し、うつ病など精神障がいに係る労災の申請件数、認定件数も増加の一途をたどりました。これは何とかしなければということで、2010年から厚生労働省が方策の検討を始めたのです。

当初の構想では、企業の定期健診の際にうつ病等のチェックを一緒にしてはどうかという案が検討されていましたが、うつ病学会など医療側から「うつ病か否かは健診だけではわからない」「エビデンス(科学的根拠)が担保できない」と強い反発を受けました。そこでさらに議論を重ねて、うつ病の早期発見が無理なら、うつ病にならないように予防すればいいのではないか、という発想に至ったわけです。要するに、病気の早期発見・早期治療で重症化を防ぐ、予防医学でいうところの「2次予防」ではなく、病気になる前の段階で病気を引き起こすリスクを発見・改善し、病気そのものを未然に防ぐ「1次予防」の対策として、ストレスチェック制度は考案されました。そこに大きな意義があります。

古川:1次予防は、すでにメタボリックシンドローム対策(特定健康診査・特定保健指導)で始まっています。メタボ対策で食習慣や運動不足などを見直し、生活習慣病を予防するのと同じように、心の問題についても、ストレスチェックで1次予防を図ろうというのが今回の法制化の目的です。先生が指摘されたとおり、決して「うつ病発見」のためではありません。にもかかわらず、企業の現場では、そこがよく誤解されているように思われます。

岡田:企業経営の目線で見ると、逆に「病気を発見してからケアする」というスタンスでは、もう間に合わなくなってきています。というのも、高ストレス者などメンタルヘルスにリスクを抱えている人が働き続けてうつ病になった場合、近年の司法判断では、そうしたリスクの顕在化をもって「業務上疾病」と見なし、積極的に労災認定する傾向が強まってきているからです。しかも従来なら、そうした事案は安全配慮義務違反を問われ、労働契約法や労働安全衛生法などの問題として扱われていたのですが、最近は裁判所の判断に大きな変化が見られます。会社法が適用され、経営者個人の賠償責任まで問われてしまう。実際、企業と経営者が折半して賠償せよという判例が、京都地裁、大阪高裁、名古屋地裁などで相次いで出ています。これは本当に大変なことで、会社の根幹を揺るがしかねません。

古川:先生のご見解として、企業がストレスチェックを導入するにあたって、最も留意すべき点は何でしょうか。

岡田:ストレスチェックを受けるか受けないかは、従業員個々の自由意思に任されています。実はここが大きなポイントです。つまり、社員が100人いて100人とも受けるとか、1000人いるのに10人しか受けないとか、その割合を受検率といいますが、ストレスチェックの結果以前に、そもそも受検率がどれくらいあるかということで、その会社の経営の“健康レベル”がある程度わかります。正しい回答を書いたら会社での立場が危うくなるのではないか、上司とトラブルになるのではないか――社員にそういう不安を抱かせるような職場環境では当然、受検率は上がりませんし、受けたとしても、その人は本当のことを答えないでしょう。

岡田邦夫氏 Photo

そうなると、ストレスチェックを実施するのに費やした手間やコストが、まったくのムダになってしまいます。厳しい言い方ですが、このような状況に陥ると経営者として失格だと思います。この事象を最近注目されている「健康投資」の概念に照らし合わせると、自社の従業員の健康づくりという事業に投資しながら、回収できなかったわけです。投資である以上、企業はストレスチェックを導入することで、将来的に労災の申請が減ったり、社員の健康レベルが上がって業務の生産性が改善されたり、目に見える投資効果を出さなければなりません。その基盤として、つらいときにはつらいと正直に言えるような職場環境が整備されているかどうかがストレスチェックの受検率にまず表れることを、経営者は肝に銘じておくべきです。

古川:確かに、ストレスチェックを実施すること自体を目的ととらえてしまうことも企業が誤解しがちな点だと思います。本来、ストレスチェックは目的を達成するための手段として活用すべきものです。本来、組織や職場全体が良くなれば、個人の健康レベルもさらに良くなるに違いなく、そうなって初めて、健康投資に成功したといえるのですね。

ストレスチェック導入時のポイント

岡田:法律が企業に義務づけた内容は、「個人に対してストレスチェックを行い、高ストレス者が見つかったら、面接などで個別に対応しなさい」というところまでです。ストレスチェックの結果に基づいて集団分析を行い、職場の環境を評価した上で組織改善を行うなど、1次予防の、その“先”の取り組みについては、国会審議も十分に尽くされなかったため、現在は努力義務という位置づけにとどまっています。もちろん制度自体のゴールとしては、そこまで進むのが望ましいのです。

古川:コンプライアンスや企業の社会的責任だけでなく、健康経営を実現するという法律の趣旨に照らし合わせれば、むしろ努力義務の部分こそが重要だと言えるかもしれません。では、制度の“入り口”である、各企業におけるストレスチェックの立ち上げやその前段階においては、何がポイントになりますか。

古川弘和氏 Photo

岡田:ポイントは、どれだけトップダウンで進められるかでしょう。働く人の健康と安全に資する施策については、まず事業主の“表明”から始めようというのが行政の基本姿勢です。したがって、トップ自らがストレスチェックの導入を宣言し、法の趣旨を踏まえた上で、新しい制度にまつわる社員らの不安や疑念を取り除くようなメッセージを発信しなければなりません。たとえば、「結果によって不利益な扱いを受けたり、情報が目的外に使われたりすることはないので、安心して受けてください」と宣言することです。最初に、事業主がどういうメッセージを出すかが非常に重要です。受検率も変わってくると思います。それを受けて、人事労務担当者がたたき台を作り、衛生委員会で議論をして、それぞれの会社に合った仕組みを構築していくことになります。

古川:業種・業態や職場の事情によって、ストレスチェックへの対応の仕方は当然、違ってきます。たとえば、ウェブ上でストレスチェックができるところもありますが、その環境が整っていないところでは紙の調査票で実施したほうが導入しやすいかもしれません。高ストレス者と通知された社員への面接指導についても、自社で医療スタッフを用意するのか、それともEAP事業者にすべて任せるのか、組織の規模や形態によって企業様の判断が分かれます。

岡田:いずれにせよ、効率的に実施できなければ、せっかく制度を導入しても形骸化してしまうだけです。トップと担当者が緊密に連携しながら、実施の手法や手順、体制を煮詰めていくことが大切です。

古川:実施段階では、企業はストレスチェックを直接執り行うことはできません。事業主から業務委託された専門家が「実施者」として受検者に主に応対し、企業がつくったチェックの仕組みを実際に回していくことになるわけですが、この実施者の選定について、先生はどうお考えですか。

岡田:ストレスチェックの実施段階で最も大きな役割を担うのが、この「実施者」です。国が実施者として認定しているのは、次の四つの国家資格を持つ人だけ。すなわち医師、保健師、一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士です。将来は、この9月に関連法案が成立し2017年度中にも新しく国家資格に加わる予定の公認心理師です。ただし、資格さえあれば誰でも適任というわけではなく、実施者として依頼する場合は、自社が選任している産業医の先生や、社内の健康管理室に勤務する保健師さんなど、やはりその会社の状況や職場の環境に明るい医療従事者に頼むのが望ましいと思います。

古川弘和氏 Photo
■ストレスチェック制度の実施体制
事業者   ・ストレスチェック制度の実施責任
・方針の決定
ストレスチェック制度
担当者
衛生管理者、事業場内メンタルヘルス推進担当者など ・ストレスチェック制度の実施計画の策定
・実施の管理 等
実施者
指示
産業医など((1)医師(2)保健師(3)一定の研修を受けた看護師(4)精神保健福祉士のいずれかの資格を保有していること) ・ストレスチェックの実施(企画及び結果の評価)
・面接指導の実施
実施事務従事者 産業保健スタッフ、事務職員等(人事権のある者は従事できない) ・実施者の補助(調査票の回収、データ入力等)

古川:実際のチェックでは、厚労省が標準的な調査票として作成した「職業性ストレス簡易調査票(57問)」を原則的に使用しますが、お客様からは「この57問でなければいけないのか?」という問い合わせもよく受けます。先生に、制度設計をされたお立場からお答えいただけますか。

岡田:この57問には、2万数千人ものデータにもとづく確かなエビデンスがあります。これを活用していただくのが、やはり望ましいのではないでしょうか。他にも23問の簡略版もありますので、たとえば規模が小さく、ウェブ環境が整っていないような事業所であれば、この簡略版のほうが扱いやすいかもしれません。国が示しているものなのでどちらを活用してもかまいません。また、これら以外にエビデンスが存在し、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の三つの領域を網羅したものであれば、民間事業者などが独自に開発したチェックツールを使うことも認められています。

古川:弊社が提供するEAPサービスでもチェックツール『Co-Labo(コラボ)』を用意し、厚労省の簡易調査票の内容に準拠した『Co-Labo 57』『Co-Labo 23』はもちろん、人材育成尺度を加えた『Co-Labo 57+』、人材開発・組織開発にも対応する『Co-Labo 78』と、多彩なラインナップで展開しています。独自尺度についても、4万人超のデータをもとに開発し、信頼性・妥当性の検証を重ねてまいりました。高ストレス者への個別対応だけでなく、“努力義務”の部分――職場環境全体を改善するためのアセスメントなどにも、そのチェック結果をお役立ていただけるものと自負しております。これらのTEAMSが提供する法制化に対応したサービス開発については、岡田先生に監修をいただいています。

ストレスチェック=個人情報保護のリスクマネジメントが試されている

岡田:日本で個人情報保護法が作られたのは、OECDから「個人情報保護が法的に担保されていない国とは貿易しない」と、圧力を受けたのがきっかけでした。それと同じように、ストレスチェックで個人情報が漏れて行政指導を受けたり、社員に不利益に取り扱いがあって内部告発されたり、あるいは受検率そのものが悪かったりすると、そういう企業はコンプライアンスや社会的責任の面で問題が大きい、ビジネスの相手や投資対象にならない、と判断されてしまうかもしれません。今後は、そういう経営リスクが高まってくると、私は見ています。

古川:ストレスチェック制度への対応ひとつで、ステークホルダーからの評価が変わり、業績にも大きな影響が及ぶ可能性があるということですね。ただ、現在、企業には、ストレスチェックの他にもマイナンバーなど新制度への対応が重複して課せられています。健康投資とはいえ、このタイミングで新しい仕組みを一挙に構築し、個人情報保護にも配慮しながら運用していくとなると、現場は確かに大変でしょう。だからこそ、われわれのようなEAP事業者をぜひ役立てていただきたいです。

岡田:外部に委託する場合は、EAP事業者さんと、企業側の産業保健スタッフとの連携も非常に重要です。特に企業が産業医を選任している場合は、その産業医の先生を名目上の実施者とし、一方でEAP側が提携している医師や保健師さんにも共同実施者になっていただいて、面接指導などは実質、そちらの先生にお願いする。そういうシステムを構築するように求められています。いずれにせよ、企業側の産業保健スタッフが、ストレスチェックにまったく関与しないということは、法制上ありえません。

古川:産業医の先生方には実施者として、専門性の高い業務に特化していただき、われわれは実施事務従事者として、必要な業務支援を行うという関係性が望ましいと考えています。また、お客様からよく、「事業所が何ヵ所か遠隔地に点在していて、産業医がいない場合はどうすればいいか」というお問い合わせをいただきます。そういうケースでは、先生が指摘されたような“共同実施者”として協力できる体制をアレンジして、弊社からご提案することもあります。

古川弘和氏 Photo

岡田:われわれの立場からEAPの事業者さんに求めたいのは、(1)法の趣旨や制度の目的をきちんと理解した上で信頼性の高いシステムが提供できること、(2)セキュリティ面がしっかりしていること、(3)運用支援体制が整っていることです。今回の法制化では、面接の申出を行わない受検者にも受け皿があることが望ましいとされていますから、電話やインターネットでいつでも気軽に相談ができる、(4)セルフケアの相談窓口を用意できるかどうかも委託先選びのポイントになるでしょう。特に、ストレスチェックの実施に際しては、面接申し出の情報や実施者からの意見書なども含め、非常に機微な情報が出てくるので、企業の個人情報保護のリスクマネジメントを試されているともいえ、(2)セキュリティ面が担保されていることは必須です。また、単にストレスチェックの提供だけでなく、(1)法の趣旨や制度の目的をきちんと理解し、総合的なサポートができる事業者さんであれば、企業の真のパートナーとして、ストレスチェック義務化に大きな役割を果たしてくれると考えています。

古川:セキュリティについては、われわれも非常に重視しており、プライバシーマークはもちろん、ITサービスマネジメントシステムの国際規格「ISO20000」、情報セキュリティマネジメントシステムの「ISO27001」の認証を取得し、既に、ストレスチェックでは、10年以上にわたり、110万人以上の支援実績がございます。また、長い間、健康事業に携わってきた強みがありますので、単なるシステムベンダーではなく、制度への対応を進める上での相談役、あるいは必要な業務支援を行うパートナーとして、企業様に併走していきます。

岡田:そういう点を踏まえると、企業の方々は、一度信頼して契約した委託先とはある程度長期的につきあって、互いに理解を深めていったほうがいいと思います。健康づくりは、その人の変化のトレンドを時系列で見て評価しないと、なかなか判断が難しいものです。毎年のように違う業者に委託して、そのたびに「去年はこう言われたのに、今年は同じ結果で違うことを言われた」など、チェック結果に対する評価がコロコロ変わったのでは、ストレスチェック制度そのものへの信頼が損なわれてしまいます。ストレスチェックの結果を適切かつ効果的に運用するという意味でも、長期的な視野をもって社内・外の体制を固め、その中でPDCAサイクルを毎年着実に回しながら、より費用対効果のすぐれた制度へとスパイラルアップさせていくことが大切です。

外部EAP事業者選びの主なポイント
法の趣旨や制度の目的をきちんと理解した上で信頼性の高いシステムが提供できる
セキュリティ面がしっかりしていること
運用支援体制が整っていること
セルフケアの相談窓口を用意できること

働く人の生命はプライスレスでも、健康にはプライスがつく

岡田:日本ではこれまで、職場の健康管理は福利厚生の観点から行われてきました。しかしそれだけではもう立ち行かなくなり、従来の健康管理に限界がきていると考えています。福利厚生から一歩踏み出し、そこに“経営”の視点を入れて、生産性向上と法的なリスク回避のための健康づくりに変えていくことが、日本と日本企業にとって重要だと思います。

冒頭に、ストレスチェック制度は、心の病気を発見するためではなく、病気にならないようにするための方策として考案された、と申し上げました。病気が見つかってから治療する場合、そこは医療の範囲ですから、コスト意識を働かせる余地はほとんどありません。医師が「この社員は残業できない」と言えば、残業は頼めないし、「休め」といったら、休ませないといけない。しかし、そうなる前にきちんとケアしておけば、その人のパフォーマンスは上がり、労働生産性も高まっていくわけです。つまり、病気にならないように予防する「健康づくり」なら、取り組み次第で投資に見合った、いや、それ以上の効果を得ることもできるのです。そこに必要なのは、管理ではなく、経営の視点とビジネスの発想にほかなりません。だからこそ、経営トップの手腕とリーダーシップが問われるわけです。

古川:足元の企業のリスク対策としては、メンタルヘルス不調による労働損失をいかに抑えるか。そしてマクロの視点からいうと、将来にわたって労働力人口が減少し続ける中で、日本社会全体の労働生産性をどう高めて、価値を生み出していくか。ストレスチェック制度導入をめぐる議論は、そういうところまで広がっていく話なのですね。

岡田:語弊があるかもしれませんが、こうとも言えるでしょう。働く人の生命はプライスレスでも、働く人の健康にはプライスがつく――。健康づくりには費用がかかるけれど、投資する価値もまた大いにあるのです。元気な働き手が多ければ多いほど、労災などのリスクは減り、会社そのものも元気で成長し続けられるはずです。健康への投資は、遠回りのように見えて、自社の企業価値を高める近道であることに、一人でも多くのビジネスリーダーが気づいてくれたらと願ってやみません。

古川:われわれも微力ながら、啓発に努めていきたいと思います。本日はありがとうございました。

岡田邦夫さん 古川弘和さん Photo

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