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人事マネジメント「解体新書」第49回
「リスクマネジメント」の時代~その具体的対処法(前編)
― リスクマネジメントが求められる背景と考え方 ―

近年、経営におけるリスクマネジメントの要請が強まってきている。リスクマネジメントとは、経営者が企業経営を行い、利益を追求していく中で、事業承継、セキュリティ、内部統制など、経営に重大な影響を及ぼし得るさまざまなリスクを認識、評価し、計画性をもって対応していくマネジメントのことである。従来は、部署ごとにリスク対応が行われていたが、昨今はリスクとなる要因が多様化しており、全社的な視点で合理的かつ最適な方法で管理を行い、かつ企業価値を高めていくことが重要視されてきている。それに伴い、人事部として求められる役割も大きくなってきたように思う。今回は、リスクマネジメントを進めていく際の考え方と具体的なポイントを解説していく。

なぜ、リスクマネジメントなのか

◆避けることのできない重要な経営課題に

製品の事故、顧客からの苦情、偽装問題、情報漏えい、コンプライアンス違反、災害など、企業はかつてないほどのさまざまな「リスク」に取り囲まれている。さらに近年では、原材料や石油の高騰、環境問題など新たな社会規制、事業の国際化やM&Aなどの経営環境の変化により、企業が直面するリスクは巨大化、多様化、そして複雑化の様相を呈してきた。

このような状況下でリスクマネジメントを怠った結果、企業が消滅していったケースは少なくない。また、リスクマネジメントを怠った経営者が、巨額の賠償を命じられるケースも増えてきている。厳しい判決が下されるのも、経営者には会社法の下、リスク管理や内部統制の構築を行う義務があるからだ。そして、これらを怠った時の損害は大きく、投資家、顧客、取引先、従業員、金融機関、地域社会など、広範囲に影響することになる。今や、リスクマネジメントは避けることのできない極めて重要な経営課題となってきた。

◆「ISO2600」規格の採用国拡大

企業経営を取り巻く法的な環境変化を見ても、2006年の「会社法」の施行により、株式会社では「損失の危険の管理に関する体制」を整備する必要があることが求められてきた。また、「金融商品取引法」においては2008年度決算から「日本版SOX法」が施行され、財務に関する分野においてリスク管理体制の整備が急務の課題となってきた。

そして、今年になって注目され始めたのが、企業の社会的責任(CSR)に関する国際規格である「ISO26000」。「人権」や「労働慣行」など七つのテーマごとに対応すべき課題をまとめたものだ。2010年に策定されて以降、ISO26000を採用する国が増えてきており、同規格が定める人権、労働慣行などの基準をクリアすることが、企業のグローバル展開を進める上で、不可欠になってきた。

ちなみに、ISO2600がカバーする労働慣行には、下記に影響を及ぼすあらゆる「方針」または「慣行」が含まれる。

  1. 労働者の採用および昇進
  2. 懲戒および苦情対策制度
  3. 労働者の異動および配置転換
  4. 雇用の終了
  5. 訓練およびスキル技能開発
  6. 健康、安全および産業衛生
  7. 労働条件(特に労働時間および報酬)

また、労働慣行には、下記も含まれる。

  1. 労働者組織の承認
  2. 雇用に関する社会的課題に取り組むための団体交渉
  3. 社会対話
  4. 三者協議への労働者、雇用者の両組織の代表者選出および参加

例えば、ある大手電機メーカーでは約200の海外法人で、取引先も含めて児童労働などの問題行為を未然に防ぐ体制を2012年3月期末までに整えるという。これも、ISO26000を採用した国では、基準を満たさない現地企業と取り引きすると、問題となる可能性があるからだ。そのため、人権に関してインターネットで学べる教材も用意して、従業員の問題意識を高めている。同社が拡販を目指す新興国などでは人権を重視する動きが強まっており、ISO2600への対応強化でリスクを軽減していくという。関係者の話を聞くと、ISO26000は2011年度中にも日本工業規格(JIS)化させる見通しとのこと。このような状況から見ても、現在はまさにリスクマネジメントの時代と言えるだろう。

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