企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

人事マネジメント「解体新書」

第26回:OJTを人材育成の中心に置く
~日常業務をビジネススクール化する工夫

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

近年、雇用形態が多様化しているほか、組織のフラット化、IT化などが進んだことで、人材育成のあり方が現場中心から、Off-JTやeラーニングへと移行してきている。しかし、合目的、効率的な能力開発を目指したこれらの施策も、正直、その成果となると疑問符が付く。なぜなら、ビジネスにおける人材育成を考えると、人は仕事を通じ他者と関わっていく中で、本当の力を身に付けていくからである。つまり、人材教育においては、あくまでOJTが中心となるべきなのだ。問題は今日、OJTが現場でうまく機能していないということ。今回は、このような状況をどう改善していけばいいのかについて、考えていきたい。

人材育成を取り巻く「現状」

■人材格差が企業格差を生む時代

景気悪化が一段と進み、雇用不安が叫ばれている中にあって、長期的な視点での人材マネジメントの必要性が問われてきている。厳しい現状ではあるものの、その先にある持続的な成長戦略を考え、人材を採用、育成しようとしている企業も少なくない。少子高齢化社会が到来することにより、人材格差がまさに企業格差となることを、これまでの経験を通じて学んできたからである。

実際問題として、個人がある程度の裁量権を持ちながらチームで進めていくような昨今の仕事のあり方を考えると、技術やノウハウの継承、あるいは企業文化や価値観への理解・共感、さらには忠誠心といったものが組織には必要不可欠となってくる。なぜなら、そのようにして出来上がったチームの構成員というのは、余人をもって代え難い存在となるからだ。足りなければ入れる、余ったら整理するなど、その時々の状況で調整弁のように活用することはあり得ない。こうした人材については、昨今のような状況でも「ぜひ欲しい」「育てていきたい」というのが企業の経営者、人事・教育責任者の本音ではないだろうか。ではこの先、能力開発、人材育成の方向性はどのように進んでいくのか?

■OJTを重視する企業が減ってきている

厚生労働省の「2006年度能力開発基本調査」では教育訓練方法の方針として、OJTとOff-JTのどちらを重視するかを比較している。すると、「これまで」は75.3%がOJTを重視した一方で、Off-JTは22.9%にとどまっている。しかし、「今後」をみると、OJT重視は65.8%へと減少するのに対し、Off-JT重視が32.2%と10ポイント程度高まってくる(各々「重視する」「重視するに近い」を合わせた割合)。

このようなOff-JTシフトを読み解くヒントとして、能力開発や人材育成に何らかの「問題がある」とする事業所割合が77.3%あることを、翌年実施した「2007年度能力開発基本調査」は挙げている。問題点の内訳として、「指導する人材が不足している」50.5%、「人材育成を行う時間がない」47.3%を挙げる割合が高くなっているのだ。

現実的に、個人主体の能力開発や自己啓発のみでは、企業が求める人材を効果的・効率的に育成できない。また、一部の選抜された人材のみを集中して育成しても、企業全体の競争力は高まらないだろう。全体の底上げが必要だ。しかし、多くの企業では人材育成に十分な力を割けず、現場主体でのOJTは多忙さや人員の減少によって、うまく回らなくなっている。そのために、Off-JTを効果的に活用したいという意図が働いているのだと思われる。

図表1:教育訓練の方針(%)
OJTを重視する OJTを重視するに近い Off-JTを重視するに近い Off-JTを重視する 不明
これまで 22.7 52.6 18.0 4.9 1.8
今後 18.1 47.7 27.5 4.7 2.0

資料出所:厚生労働省「2006年度能力開発基本調査」

■多忙さや人員の減少により、OJTがうまく回っていない

この状況を、もう少し詳しく見てみよう。「2007年度能力開発基本調査」では、OJTとOff-JTの企業における活用状況と実態について整理しているが、企業における正社員に対する計画的なOJTの実施率が45.6%(前年度:53.9%)に対して、Off-JTの実施率は77.2%(同72.2%)、自己啓発支援の実施率では79.7%(同77.3%)となっている。OJTの実施率のみが減少しているのだ。

計画的なOJTについて実施率が8.3%下がっているのは、前述したように、現場主体でのOJTが多忙さや人員の減少により、機能していないことが原因として考えられる。逆に、Off-JTや自己啓発の実施率が概ね上昇していることは、企業側がOff-JTを活用することで、OJTを補完しようとしていることの表れと言えよう。

図表2:企業における教育訓練の実施状況(正社員)(%)
2007年度 2006年度
計画的OJTの実施率 45.6 53.9
Off-JTの実施率 77.2 72.2
自己啓発の実施率 79.7 77.3

資料出所:厚生労働省「2006年度・2007年度能力開発基本調査」

■OJTの軽減は、人材育成において致命傷になりかねない

これらの結果に対して、多くの専門家は、企業における人材育成の方向性を考えていく際に、Off-JTの位置付けを再評価し、OJTと連携させていくことを通じて、Off-JTの有用性と効果を高めていくことが今後ますます重要になってくる、という見方をしている。

しかし、果たしてそうだろうか?私自身は、OJTにこそ人材育成の基本があると思っている。というのも、OJTをうまく行えるかどうかが、企業の人材育成において差別化が図れる大きな要因となるからだ。仕事に対する自立的な態度とは、仕事を通してこそ育まれるものである。Off-JT・自己啓発はあくまで、それを補完する位置付けだろう。むしろ、OJTを軽減していくことは、人材育成において致命傷になりかねない。

冒頭でも述べたように、人の能力というのは周囲との関わりの中、仕事を通じてさまざまなトラブルに遭遇しながら開発されていくものである。一方、Off-JTや自己啓発というのは、非日常の場。悪く言えば、リアリティのない場である。もちろん、こうした場も必要ではあるが、やはり人は自分が責任を持つ日常業務、つまり「ガチンコ的」な状況の中でしか、なかなか当事者意識を持ち得えるものではない。スポーツを見れば分かるように、実践の場での経験値こそが、その人の能力とポテンシャルを大きく伸ばしていくのである。

■OJTを人材育成の「中心」に置こう

だからこそ、OJTを人材育成の中心に置かなくてはならない。しかも、機能的、計画的に。Off-JT、自己啓発はあくまでOJTで明らかとなった長所や欠点を補完・補足していくものと考えていくべきなのだ。

研修サービスを行うアルー株式会社が2009年に発表した調査結果が、そのことを裏付けている。入社3年以内の新卒社員を担当しているOJTトレーナーを対象に、新人育成に関する意識調査を実施した結果をみると、OJTトレーナー自身は、組織が成長していくために人材育成は欠かせないものであり、新人育成に対しても非常に前向きにとらえているという。実際、新人とOJTトレーナーに対する取り組みが行われている企業は多く、OJTトレーナー研修については約7割の企業で実施されている。他方、OJTトレーナーの約6割が経営層・上司は新人育成について理解が不足していると感じている。育成に対する指示・報告が一方通行になっていることや、育成に対する意識が行動として示されていないことに対して、不満の声が多く挙がっているのだ。

このように、OJTがうまく行えていない「現場」に大きな問題があるのは間違いない。この点について、多忙さや人員の減少を言い訳にするのでは、あまりにも情けなくはないか。そこで提案。現場のリーダーや人事・教育担当者は、OJTをある意味、ビジネススクール化していくことを考えるべきではないかと。この点についての説明は後述していくとして、次に、OJTを中心とした企業内教育のあり方について、考えてみたい。

OJTとは何か?

■企業内教育の3つのアプローチ

そもそも企業が人に対して教育投資を行うのは何のためなのか?それは、現在のように経営を取り巻く環境の変化が激しく、流動的な社会環境下で生き残っていくためには、組織として常に新しい技術や情報を取り入れていくと同時に、各人が自ら成長し自己革新を図っていく必要があるからだ。何よりも企業が存続・発展し、企業間競争に勝ち抜くためには、社員一人ひとりが職業人としての自分の将来を築き、一皮むける経験を通じて、ブレークスルーを行うことが強く求められる。

周知のように、企業内で行われる教育には以下の3つのアプローチがある。

【企業内教育の3つのアプローチ】

  1. OJT:職場で「日常業務」を行いながら、上司や管理・監督者、先輩、熟練者が、部下や後輩、未熟練者を指導・育成していく
  2. Off-JT:日常の業務から離れて社員を集め、社内外の指導講師やインストラクターが集合教育の形で研修を行う
  3. 自己啓発:本人の意思により、自分自身の能力向上や精神的な成長を目指して行う

OJTとOff-JTが他者から受ける教育であるのに対して、自己啓発は自らが自らに与える教育であることが大きな違いである。いずれにしても、組織が力を蓄えていくためには個々人が日常業務で力をいかんなく発揮することが前提条件となる。そのために、日常的にアプローチを行うOJTが十分に機能しなくてはならない。

■OJTを取り巻く「現状」

本当に、OJTがうまく機能しなくなってきたと皆が言う。これも近年、働く人を取り巻く状況が大きく変化してきたからだ。例えば、以下のようなことが多くの現場で起きている。

【OJTが機能しなくなった要因】

  • 組織がフラット化し、「先輩・後輩」「上司・部下」といった主従関係が薄れてきた
  • IT化が進んだことにより、人と人が直接的に顔を合わせる機会が減ってきた
  • プロジェクト単位で仕事が進むことが多くなり、仕事を構成する要員がその都度違ってくる事態が恒常化してきた
  • 成果主義が浸透し、仕事が個人単位に割り振られ、タコつぼ化するケースが増えてきた
  • 雇用形態が多様化、さらにはアウトソーシングが進むなど、職場内の人間関係が薄らいできた
  • 新卒採用を手控えた時期があったことで、組織の人員構成に歪みが出てきた
  • 部下や後輩を持った経験のない(人を指導した経験のない)社員が増えてきた
  • 管理者に個人目標を持たせるようになってきたため、部下指導・育成にまで手が回らない状況が頻発してきた

実際、「先輩・後輩」「上司・部下」という関係性が成り立たない職場が増えてきた。そのため、先輩や上司から仕事を教わるという「慣習」そのものが薄らいでしまった。さらに言えば、先輩や上司が、人を教えたり、指導したりすることを自分の仕事とは思っておらず、また、そのスキルを持ち合わせていない。加えて、昨今の若者は先輩や上司の干渉を嫌う傾向にある。こうした職場環境下では、OJTが機能しなくなってきたのも無理はない。

とはいえ、このような環境を一気に変えることは現実的ではない。それより、どのような環境下でも通用するOJTのあり方を、若い人たちが当事者意識の持てるビジネススクール的な仕様で再定義していく必要があると考える。

そうすることで、指導する側・される側とも、能力開発、人材育成というものに対するモチベーションやインセンティブを強く持つことができるようになる。その際、繰り返しになるが、企業で求められる能力というのは、あくまで人と仕事との関わりの中でこそ獲得できるものであることを忘れてはならない。

■OJTの「機能」と「場」には何があるか?

言うまでもなく、OJTとは「On the job Training」の略である。まさしく職場内教育そのものであり、これを日常的な業務遂行の場面と結び付けてみると、以下のような機能を有していることが分かる。

【OJTの機能】

  1. いつ(When):日常業務を行うプロセスにおいて
  2. どこで(Where):職場で
  3. 誰が(Who):上司・先輩・熟練者が
  4. 誰に(Whom):部下・後輩・未熟練者に対して
  5. 何を(What):企業の生産性向上と従業員の自立・成長のために、個人・組織にとって育成の必要な点を見出し
  6. どのように(How):上記に対する一切の指導・援助活動を計画的、継続的に行う

さらに、フラットな組織、IT化の進んだ今日的な職場、何より自立的な人材育成が求められている現況からすると、昨今のOJTは上司・先輩から部下・後輩へと一方的に指導・援助を行うのではなく、ともに教え、学びながらコラボレーションしていくというスタンスが重要になってくる。

そして、具体的にOJTを実践していく「場」には2つある。1つは、日常業務を遂行するプロセスでの「自然発生的な場」。もう1つは、「意図的な場」である。「自然発生的な場」とは、「部下に仕事を指示・命令するとき」「部下が報告に来たとき」「部下を会議や打ち合わせに同席させるとき」など、上司の日常的な行動に含まれているものである。そして、これらの「場」でできなかったことを、「意図的な場」で補完・補充していく。例えば、「個人面接」「人事考課結果のフィードバック」「育成計画書の作成」「キャリア面談」「社内外の研修会・セミナーへの参加」「小集団活動」などである。

このようなOJTの機能と場を見ても分かるように、OJTとは上司が意識する・しないに関わらず、その多くはすでに実施しているものである。重要なのは、これまで無意識的、あるいは断片的に行ってきたことを、今後は意識的、継続的に行っていく、ということである。そうすることにより、従来は1つの仕事を覚えさせるのに半年、1年とかかっていたものを短期間で習得させ、より速く一人前に育てることができるようになる。それが、企業としての効率的な人材育成につながっていく。

■上司の部下への接し方がOJTそのものである

つまり、OJTとは指導・育成のための特別な手法・技法ではなく、企業、そして上司の人材育成の考え方・理念の表れである、ということが分かる。もとより、職場における上司の何気ない行動や発言に、その基礎があると言えよう。

事実、職場における上司の一挙手一投足は、職場風土の形成のみならず、部下の意欲・やる気の喚起(喪失)に大きな影響を与える。だからこそ、上司は部下と接している限り、自分の行動や発言がさまざまな形で影響することについて、十分な自覚が必要である。

部下は仕事をやり遂げる中で、さまざまな経験を積み、周囲からの指導やアドバイスを受けて成長していく。こうした過程で、上司の果たす役割は非常に大きい。まさしく、上司の部下に対する接し方が、OJTそのものなのである。

OJTをビジネススクール化する工夫

現場の状況が大きく変わっていくとしても、OJTを実のあるものにするためのアプローチ方法はある。その1つが、先に述べたOJTのビジネススクール化である。これは別に難しいことではない。日常的な業務をすべて意味あるもの、習得しグレードアップしていくものへと、目的化していくことである。以下、その考え方を示していく。

1.まずは「オリエンテーション」~会社の仕事は、OJTにリンクする

OJTの意味を上司・部下が確認し合う
図表3にも記したように、個人が日常的に行う業務・仕事のすべてがトップの示した経営方針・経営計画から、部→課(チーム)→個人へと合目的にブレークダウンされたものである。ゆえに、会社で行われるすべての業務・仕事というのは、OJTとリンクしていると考えることができる。目標管理制度を導入している企業であれば、この意味はすぐに分かることだろう。とにかく、OJTを実践する現場では、上司・部下ともにこのことを大前提として強く意識しなければならない。OJTをスタートする際には、まずオリエンテーション的な位置付けで、お互いにこの点を十分に確認し合うことが大切だ。

図表3:会社の仕事は、OJTにリンクする

2.ビジネススクール化の「枠組み」~OJTを「PDCA化」する

「PDCA化」することで、「目的」的・「自覚」的となる
ビジネススクール化へのアプローチとしては、「PDCA化」を枠組みとするのが一般的だろう。OJTとして遂行するものを、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(成果をチェックし、軌道修正)→Action(次へと生かす)サイクル」としてとらえるのである。リアルタイムでの対応やフィードバックのある仕組みとすることで、否が応でも日常業務に対して「目的」的かつ「自覚」的となり、前向きでメリハリを伴った行動へとつながっていく。その結果、教育効果も高まってくるはずだ。

【「PDCA」とは】

  1. Plan:上司との話し合いの中から目標を明確にし、目標値を決め、具体的な達成方法や仕事への心構え・対応を定める ↓
  2. Do:プランに従って、実行する。その際、途中経過を確認できるツール、仕組みなどを用意する ↓
  3. Check:成果を調べ、予定通りか、目標に達しているかどうかを必要に応じてチェックし、軌道修正を行う ↓
  4. Action:結果評価に基づいて、次の目標設定を新たに決める

3.PDCAの「実際」~明確化とすり合わせがポイント

PDCAの各プロセスにおいて、重要と思われる事項についてまとめてみた。

(1)Plan~OJTのプランづくり
日常業務についてOJTを行うことを上司と部下が共有することにより、OJTの目的が確認できる。そのためには、以下の点をはっきりさせることが大切である。

【明確化のポイント】

  • 何を、どこまで目指すのか、具体的なイメージやアウトプットが持てるようにする
  • OJT対象者にとって、どの程度の努力を要するのかを明確にする
  • どういう手段、行動が必要なのかを絞っていく

目的と目標の明確化により、「何のために」(目的=意味)、「何を」(目標=期待する成果)がはっきりとしてくる。その結果、必要なスキル、必要な期間、必要な工数などが明確となり、現状とのギャップが得られ、この先クリアすべき問題として明確になっていく。

(2)Do~進捗状況のすり合わせ
実行プロセスで重要なのは、いわゆる「報連相」(報告・連絡・相談)である。

【「報連相」とは】

  • 報告:PDCAの共有化(仕事の進捗状況のすり合わせ)
  • 連絡:業務情報の共有化(保有知識や知恵・ノウハウのレベル合わせ)
  • 相談:問題状況の共有化(事態の現状認識や見通しについての意見交換)

「報連相」を的確に実行するためには、「報連相することの意味・重要性」「報連相の具体的な手段」「報連相の内容(いつ、どこで、何を、どう報告するか)」「不在時の報連相の取り方」「緊急事態の連絡方法」などを明確にしておくことである。こうしたことをはっきりしておけば、忙しい上司も部下の状況が把握でき、適切なアドバイスを送ることができる。

(3)Check~成果の評価
成果の評価は、「成果のギャップ」と「手段のギャップ」の2点。それを確認した上で、「計画の期待水準と進捗水準のギャップの確認」「何をどう軌道修正すればいいかの分析と対策方針の決定」を行い、「目標の再設定」を点検していく。具体的には、「目標の立て方、目標の納得性」「目標達成プランの是非」「遂行時のチェックの仕方」「サポートの仕方」「日常的なPDCAの仕方」「是正や軌道修正の図り方」などである。さらに、個々の指導の仕方を含めた全体でのOJTの進め方について、すり合せていく。

(4)Action~OJTの評価とフォローアップ
OJTは1回で自己完結するものではない。組織の中で仕事を続けていく限り、継続して行っていくものである。大事なことは、まず本人側の「何ができて、何ができなかったのか」という結果そのものの評価だけではない。「目指した目標自体の意味と、位置付けの再確認」「これからのレベルアップ目標のステップと、そのための次の目標をどう立てるか」である。そして、管理者側は「その目標がチーム全体の中でどんな意味を持っているか」を絶えず確認し、「管理者側、あるいはチームメンバーとしてどんなサポートができるか」も合わせて検討しておく必要がある。

■チーム・グループでのディスカッションを行い、モチベーションを高める

このように日常業務をPDCAとしてとらえていくことで、すべからく“密度”が濃くなり、教育効果としての成果も出てくる。さらに、ビジネススクール化を意識するのならば、個別に対応していくパターンと合わせ、チームごと、グループごとのディスカッションなどを、各プロセスの中に設けていくことが有効である。皆で話し合うことでお互いが刺激を受け、切磋琢磨し、モチベーションも高まっていく。日常業務への取り組みも意図的、積極的になっていくことだろう。この点が、ビジネススクール化のメリットの一つだ。

上司がOJTを円滑に進めるためのポイント

OJTを機能させていくためには、何よりも上司自身が部下の力をアップすることによって、チームとしての力が高まることを、自覚しなくてはならない。最後に、チームの力を維持、向上させていくために、上司が取るべき態度、面接・フィードバックでの留意点、さらにはタブーなど、OJTを円滑に進めるためのポイントを整理してみた。

1.OJTを実施する際の基本的な「態度」

OJTにおける上司の基本スキルは「コミュニケーション能力」である。OJTでは、コミュニケーションは単なる伝達ではない。必要不可欠な条件なのだ。上司は、お互いに何を共有し合うことであることを強く意識し、以下に記したような「要望する」「共感する」「伝達する」の3つの「態度」を心掛ける必要がある。

【指導・育成の基本的な「態度」】

  • 要望する:高い目標を要求したり、厳しく結果をチェックしたり、最後まで諦めず目標達成にチャレンジさせる。そして、絶えざる工夫・努力を求めるなど、チームリーダーとして相手の役割に対する要望を常に行っていく
  • 共感する:失敗やミスも相手の状況やいきさつを考慮し、結果だけでなく努力を評価する。また、仕事を進める上で部下の意見に耳を傾けたりするなど、相手の立場になって考え、一緒になって考えていく
  • 伝達する:部下が自立的に仕事を遂行できるようにする。そのために、会社の方針、自分の方針・ビジョン、それぞれの仕事の位置付けや意味など、部下が何をなすべきかをきちんと伝えていく

2.面接・フィードバックでの「留意点」

1対1の面接、フィードバックはOJTの肝となる「場」である。その際に、上司が留意すべき点についてまとめてみた。

【面接・フィードバックでの「留意点」】

  • 耳を傾けて聞き、相手の話を引き出していく
  • 「具体例」を聞く質問を効果的に用いて、相手の気持ちや本音をうまく聞き出す
  • 自分の考えを押し付けたり、説教になったりしない。あくまで提案や自分の考えとして話す
  • 事実に基づいて話す。脚色したり、無理に強調したりしない
  • 感情的にならない。決して、言葉を荒らげない
  • 確認できたところをフィードバックしつつ、要点を相互で確かめながら話を進める
  • 言うべきことは毅然とした態度で臨み、正しく伝えていく

3.OJTにおける「タブー」

上司が一方的に喋ったり、相手の言うことに口を挟んだり、批判的な反応をしたりすれば、部下は話す気を失う。注意すべきは、それを意識してやっている場合より、現実には無意識にやっていることが多いということ。以下、OJTとしてあってはならない代表的な「タブー」を挙げてみた。

【非難する】
「これは○○君の責任だろう」「君のおかげで部長に叱責されたよ」など、相手を名指しして責任を追及したり、責任転嫁したりする

【攻撃する】
「まったく、君は仕事のできない奴だ」「どうして、そんなに要領が悪いんだ」など、相手をけなしたり、精神的な苦痛を与えたりする

【説教する】
「立場をわきまえて発言すべきだ」「しゃべっている暇があったら、少しでも多く電話をするべきじゃないか」など、自分の持っている価値判断から、相手に物事を説こうとする

【尋問する】
「どうしてそのような考えになるのか、詳しく説明してもらおうか」など、詮索・追及するような質問をする

【指図する、先導する】
「そういう話は聞きたくないな」「経緯についてはいいから、早く結論を聞かせてくれ」など、相手が何について話すかを意図的にコントロールする

【判断する、評価する】
「君はあんなことを言うべきではなかった」「そんなことをしているから、成績が上がらないんだ」など、自分の立場や考え方から相手を評価したり判定したりする

【レッテルを貼る】
「本当に君は神経質だな」「A型人間だな」など、根拠なく素人判断をする

【助言や教示をする】
「私の経験からすると、その仕事はこういうやり方をすべきなんだよ」など、相手のするべきことは自分が一番分かっているという態度で、教えを垂れようとする

【言葉に実がない】
「けっこう大変だね」「そう、心配だね」など、おざなりな言葉で対応する

【時間の圧力をかける】
「時間がないのでできるだけ話は短めに」など、時間が少ないことを伝え、相手の話す条件を物理的に制約する

【注目しているふりをする】
心にない相づちや同意をオーバーにして、相手をしらけさせる

【聞く姿勢にない】
腕組みしたり、足を組み替えたり、貧乏ゆすりをするなど、そもそも態度が人の話を聞く状態になっていない

*                *

「部下や後輩を指導・育成していくことが、組織の力を高めていく」。それが自らの重要な職責であるという考え方を職場全体で共有していくことで、学習する組織となっていく。そして、それはDNAとなって継承されていくことだろう。OJTをきちんと行うことは、このような組織風土を醸成していくことにつながっていくと強く思う次第である。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人事マネジメント解体新書のバックナンバー

もう外部に頼るだけじゃない!「研修内製化」の秘訣とは(後編)
自社課題の解決と専門教育の体系化に取り組む2社の事例
「研修内製化」はコスト削減だけではなく、自社のニーズに合った教育ができるなど、さまざまなメリットが期待できる(前編参照)。「後編」では、自社課題の解決や専門教育...
2018/04/20掲載
もう外部に頼るだけじゃない!「研修内製化」の秘訣とは(前編)
近年、社外の教育ベンダーやコンサルタントに委託していた研修を、自社で内製化しようとする企業が増えている。自社内で研修のプログラムを企画し、社員が講師を務める、「...
2018/04/13掲載
人事マネジメント「解体新書」第110回
部下のやる気を引き出し、自律を促す「メンター制度」(後編)
新入社員を職場全体で育てていく、キーパーソンとしての「メンター」の役割とは?
近年の新卒採用は売り手市場が一段と進み、採用のミスマッチが顕在化したため、入社後のフォローの重要性が今まで以上に増している。しかし、配属先の現場では早期戦力化が...
2017/12/28掲載

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

イクメン企業アワード2019エントリー募集中

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


1日30分、週3日、3ヵ月。<br />
それだけでTOEIC®テストスコア500点突破を目指せるプログラムとは?

1日30分、週3日、3ヵ月。
それだけでTOEIC®テストスコア500点突破を目指せるプログラムとは?

グローバル化が進む現在、多くの企業が社員の英語力向上を課題としています...


多数の店舗・拠点を持つ流通・小売・サービス業の 人事部門が抱える課題とは?

多数の店舗・拠点を持つ流通・小売・サービス業の 人事部門が抱える課題とは?

多数の店舗・拠点を持つ流通・小売・サービス業の 人事部門が抱える課題と...